雨が降れば

詩月結蒼

水無月の雨




 6月のことを昔のこよみだと水無月みなづきというらしい。

 水無月。

 字体と響きがカッコいいなと思っている。


 雨は、あまり好きではない。

 傘を差す手間が増えるし、濡れてしまう。

 だけど、悲しい日には「泣いてもいいよ」と言われている気がして。

 涙を流しても雨が隠してくれる気がして。

 少しだけ好きになったりする。


 雨を好きになる日は、大抵、新しい傘を買った時か、いいことがあった日だ。

 あとは、そうだな。

 野花が喜んでいると思うと、悪い気はしなくなる。

 自分が降らせてるわけじゃないのに。

 不思議だ。


「あめあめふれふれかあさんがー」と懐かしい歌が聞こえた。

 あの時の雨は楽しかった。

「かえるのうた」も好きだった。

 一人ずつ歌う順番をずらすと綺麗にハモるのが好きだった。


 ―――あ。


 いつのまにか雨が止んでいた。

 傘を差しているのは自分だけだった。

 傘をたたんで、歩き出す。


―――雨を少しでも好きになれますように。



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雨が降れば 詩月結蒼 @shidukiyua

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