【書籍化&コミカライズ決定】何の取り柄もない平凡な俺が美人双子姉妹を命懸けで助けた結果、実はヤンデレだった二人をガチ惚れさせてしまった件【リメイク版】
第77話 もしそんな事をしたら例え涼也でも許さない
第77話 もしそんな事をしたら例え涼也でも許さない
そんなモヤモヤした気持ちのままその後の嵐山散策を終え、今日の宿泊先であるホテルに移動をした。言うまでもなく部屋は男女で別れているため玲緒奈や里緒奈と一緒になるはずがない。
現在は夕食を終えて大浴場で湯船に浸かっている。今日は朝から歩きっぱなしだったのでお湯が体に染み渡って気持ち良い。
「なあ、バスケ部の前田が嵐山で剣城姉に告ってフラれたらしいぞ」
「マジか、あいつでもフラれるのかよ」
ゆっくりしているとそんな二人組の会話が洗い場の方から聞こえてきたためこの場に居づらくなる。まだ入ったばかりだというのに勘弁して欲しいんだけど。
「昔から難攻不落だったけど相変わらずだな」
「てか、剣城姉妹とずっと一緒にいるあいつって邪魔じゃね?」
「確かに、いつもあいつと一緒にいるせいで声をかけづらいし」
どうやら周りから見た俺の印象はそんな感じらしい。普段の視線くらいなら慣れたがこういう事を陰で言われると中々堪えてしまう。二人組は俺がここにいる事には全く気づいていないらしく好き放題言ってた。
以前玲緒奈と里緒奈に一緒にいて迷惑はかけてないかと尋ねてそんな事は無いとの回答を貰っていたが、二人がそう感じていたとしても俺の存在そのものが迷惑になっているようにしか思えなくなってくる。
昼間の告白の件も合わさり落ち込んでしまった俺は一人になりたい気分になってしまい気付けばホテルを抜け出してしまっていた。
ホテルからの外出は基本的に許されていないため今の行動はまずいがぼっちの俺が一人いなくなっても多分誰も気付いていないはずだ。点呼の時間までにはこっそり戻ろう。
「てか、ここカップルばっかりじゃん」
今歩いている鴨川の川沿いにはカップル達が等間隔で座っていた。恐らくここはそういうスポットとして人気に違いない。
何も考えずにただひたすら鴨川の川沿いを歩いていた俺だったが疲れたためカップル達と同じように川沿いに座る事にした。
「こういう時って川の音が無性に落ち着くよな」
川の流れをぼんやり見ながらただ座っているだけなのにかなり癒される。人工的な音よりも自然な音の方が体には良いに違いない。しばらくそうしていると突然背後に人の気配がする。
「えっ!?」
後ろを振り返るとそこには玲緒奈と里緒奈の姿があった。誰にも何も言わずにホテルを飛び出したはずなのによくここが分かったな。まるで発信機を付けられているくらいには正確だ。
「涼也君やっと見つけた、探したんだよ」
「涼也がいなくなったから心配してた」
二人から責められるのではないかと思っていたがそんな事はなくむしろかなり心配してくれている様子だった。玲緒奈と里緒奈はそのまま俺を両脇から挟むように座る。
「私達に何も言わずにホテルから抜け出してどうしたの?」
「何か涼也に悩みがあるならお姉ちゃんと一緒に聞く」
「いや、やっぱり二人とは生きる世界が違うなって思ってさ」
通り魔から助けたあの日から四六時中一緒にいる俺達だが本来なら二人とまともに話すことすらなかったはずだ。モブキャラBな俺と人気者な玲緒奈と里緒奈はそのくらいには違う。
「そんな事で悩んでたの? 別に気しなくてもいいのに」
「私達的には些細な事でしかない」
「でも俺のせいで二人のチャンスを色々と奪ってるような気しかしないんだよ」
俺の存在が足枷になっているのなら玲緒奈と里緒奈から離れた方が良いに決まっている。それがぼっちのくせに二人を好きになってしまった俺に出来るせめてもの事だ。
「涼也君と一緒にいて手に入らないようなチャンスなら私も里緒奈もいらないかな」
「そんなものはチャンスとすら思わないから」
二人は何の躊躇いもなくはっきりとそう言い切った。その言葉には間違いなく嘘偽り無いだろう。そう思えるくらい二人の表情は真剣だ。
「だからもし私と里緒奈の幸せを考えるみたいな理由で離れようとか思ってるならそれは絶対に辞めて欲しい」
「もしそんな事をしたら例え涼也でも許さない」
そう口にした玲緒奈と里緒奈の目はまるでブラックホールのような闇をはらんでいた。もしこれが漫画やアニメなら目のハイライトがオフになっている状態に違いない。
「じゃあ涼也君の悩みも解消した事だしホテルに戻ろうか」
「そろそろ戻らないと抜け出してる事がバレる」
「あっ、本当だ。点呼の時間が迫ってるじゃん」
俺達は立ち上がるとホテルに向かって歩き始める。ホテルを飛び出した時よりも気持ちが楽になったため俺って人間は本当に単純だ。
「……そう言えばどうして俺の居場所が分かったんだ?」
「それは乙女の秘密」
「涼也君がまた涼香ちゃんになってくれるなら教えるかもね」
そうはぐらかされたがこれ以上は追求しない方が良い気がしたので気にはなったが聞くのを辞めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます