第48話 涼也に嘘をつかれたショックで傷ついたからだめ

 その後刻印の終わったペアリングを受け取った俺達はひとまずアクセサリーショップを出る。


「玲緒奈と里緒奈はこの後はどうするつもりだ?」


「普段は来ないショッピングモールまで来たわけだしショッピングをしたいな」


「そっか、じゃあ二人で楽しんでくれ」


 そう言って俺が帰ろうとすると二人からがっしりと腕を掴まれてしまう。


「こらこら、涼也君は私達を置いて勝手にどこへ行こうとしているのかな?」


「逃がさない」


「いや、今日一日は俺の自由にさせてくれるって話だったから帰ろうと思って」


 夏休み中は玲緒奈と里緒奈とほぼ毎日一緒だったためたまには一人でゆっくりする時間も欲しかった。


「ああ、涼也君が嘘をついた時点でその話はなしになったよ」


「だから今日も付き合って貰う」


「嘘をついたのはサプライズでプレゼントするためだったんだから流石に許して欲しいんだけど」


「涼也に嘘をつかれたショックで傷ついたからだめ」


「うん、私と里緒奈を満足させるまで家には帰さないからね」


 どうやら二人は俺を逃す気は一切無いらしい。結局今日もいつも通り玲緒奈と里緒奈から振り回される事になりそうだ。そのまま三人でショッピングモール内を回り始める。


「今日は特別に涼也君を私達がコーディネートしてあげる」


「この前水着を選んで貰ったお返し」


「そんな事をして貰わなくても良いぞ」


「えー、別に良いじゃん。せっかくだから選ばせてよ」


「涼也を私とお姉ちゃん好みにしたい」


 面倒そうだったので断る俺だったが二人は完全に乗り気になってしまっていた。今までの経験上こうなった二人を止めるのは難しいため諦めて着せ替え人形になるしか無さそうだ。それからアパレルショップに入った俺はひとまず玲緒奈と里緒奈に勧められた服一式を試着する。


「うん、やっぱり白いサマーニットのトップスと黒いスキニーパンツの組み合わせシンプルながら良いね」


「雰囲気が変わっていつもの涼也よりお洒落に見える」


「……サマーニットとかスキニーなんて着たことなかったから違和感しかないんだけど」


「その辺は心配しなくてもだんだん慣れてくるから」


 お洒落には無頓着なため普段は柄の入ったTシャツとデニムのストレートパンツという組み合わせがほとんどだ。サマーニットは気取った感じがするしスキニーはぴっちりした感覚が苦手なため今まで手を出した事がなかった。


「ちょっとこのジャケットを着て欲しい」


「こんな感じか?」


 里緒奈から手渡された半袖のテラードジャケットを身に付けると玲緒奈が感心したような表情で口を開く。


「へー、中々似合ってるじゃん」


「ジャケットを羽織った涼也は大人っぽい雰囲気になってるから今回のコーディネートに取り入れるのはありだと思う」


「あっ、それなら伊達メガネを掛けさせてもっと知的な感じにするのも良さそうじゃない?」


「メガネ姿の涼也も悪くなさそう」


 その後も俺はしばらく玲緒奈と里緒奈が満足してくれるまで着せ替え人形に付き合った。色々な組み合わせを試したが二人は最初のジャケットとサマーニット、スキニーパンツの組み合わせがお気に入りらしい。


「よし、良さそうなコーディネートも決まった事だし早速買おうよ」


「明日の誕生日パーティーには今日買った服で着て欲しい」


「残念ながら買うのは無理だぞ、さっきペアリングを買って手持ちのお金はほぼ全部使い果たしたからな」


 一万五千円という金額は高校二年生の俺にとってはかなりの大金だったため財布の中がほぼ空っぽであまりにも寂しくなってしまっている。


「ああ、心配しなくても私と里緒奈が出すよ」


「いやいや、それは流石に悪いんだけど。全部買ったら結構するし」


「私とお姉ちゃんが涼也に着せたいから買うだけ、別に気にしなくてもいい」


「結構無茶な誕生日プレゼントを買って貰ったお礼だと思ってくれて良いからさ」


 そこまで言われて流石に嫌とは言えなかったため結局買って貰う事にした。ここ最近はどんどん玲緒奈と里緒奈の色に染められている気がする。そのうち俺の全てに二人が絡んできそうな予感しかしない。

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