第47話 私も里緒奈もそのつもりだけど

「それで本当は何が欲しいんだ? 特にないなら俺の方で考えるけど」


「それなら前々から新しいアクセサリーが欲しいと思ってたからそれにしようかな」


「私もアクセサリーが欲しい」


「なるほど、アクセサリーか」


 澪からのアドバイスの中にアクセサリーもあったが、選ぶセンスが無いと思ったため一番に候補から外していた。だが二人はそんなアクセサリーをご所望のようだ。


「あっ、今回は私と里緒奈で選ぶから」


「涼也は何も言わずに買ってくれるだけで大丈夫」


「オッケー、選ぶのは二人に任せるよ」


 てっきりいつものように俺に選ぶのを手伝わせるのかと思いきや今回は違うらしい。まあ、二人が選んでくれた方が手っ取り早く済むため俺としてはむしろ好都合だが。

 それから俺達はショッピングモール内にあるアクセサリーショップへとやって来た。玲緒奈と里緒奈は一体何を選ぶのかと思っていると二人は陳列されていたペアリングを手に取る。


「おい、まさかそれを買えとは流石に言わないよな?」


「私も里緒奈もそのつもりだけど」


「涼也に買って欲しい」


「いやいや、それは色々不味いだろ」


 確かに指輪もアクセサリーではあるがネックレスやイヤリングをプレゼントするのとは流石に訳が違う。


「……分かった、玲緒奈と里緒奈が付ける用だな」


 二人は普通の姉妹以上に絆が深いためお互いにペアリングを付けていたとしても違和感は全くない。一瞬俺に付けさせる気なのかと考えてしまったが流石にそれは無いだろう。


「何言ってるの、私と里緒奈じゃなくて私達と涼也君が付ける用だよ」


「私とお姉ちゃんはぼっちの涼也を仲間外れにはしない」


「ちょっと待て、ツッコミどころが多過ぎてどこから指摘すれば良いか分からないんだけど!?」


 そもそも二つしかないペアリングをどうやって三人で使うのだろうか。そんな俺の疑問は想定内だったようですぐに答えてくれる。


「ちなみにペアリングは私用と里緒奈用の二セット買うから涼也君には二つ付けてもらう事になるね」


「だから三人でも問題ない」


 なるほど、確かにそれならペアリングを三人で付ける事が出来る。ただし俺がペアリングを二つも付けているとんでもないクズ野郎に周りからは見えるだろうが。


「って訳だからこれを買って欲しいな」


「いや、でも……」


「さっき涼也は何も言わずに買ってくれるか聞いた時にオッケーって言ってた、まさかあの言葉は嘘だった?」


 里緒奈にそこまで言われて何も言えなくなる。言質を取られてしまった以上は抵抗しても無意味だろう。仕方なく俺は二人が選んだペアリングを持って三人でレジに向かう。二セットで一万五千円近くするためそこそこ痛い出費になりそうだ。


「すみません、二セットとも刻印もお願いしたいんですけど」


「ではこちらの用紙に刻印したい文字の記入をお願い致します」


 玲緒奈は俺が会計しようとしたタイミングで店員のお姉さんに話しかけて刻印を依頼した。そして玲緒奈はそのまま受け取った用紙に文字を書き始める。


「これでお願いします」


「えっ!?」


 さっきまでにこやかな笑顔を浮かべていた店員のお姉さんは用紙を見た瞬間驚いたような表情を浮かべてそう声をあげた。

 用紙にはRyoya&ReonaとRyoya&Rionaと書かれていたため驚くのは当然だろう。俺が店員のお姉さんの立場だったとしても二セットともRyoyaという刻印が入るのはおかしいと思うはずだ。

 店員のお姉さんとしても色々と思う事があったに違いないがすぐににこやかな表情に戻り刻印に十五分前後かかる事を俺達に伝えてバックヤードへと引っ込む。


「絶対店員の間で噂される気がするんだけど」


「まあ、普通に考えてされていない方がおかしいだろうね」


「二セットあるペアリングに同じ名前を刻印する人なんてまずいない」


 一応玲緒奈と里緒奈もこれが異常である事は自覚しているらしい。もっとも二人の場合はそれを分かった上でやっているのだろうが。


「プレゼントはどうしようか? 一緒に選んだからサプライズでも何でも無くなったし、別に今日渡しても良いんだけど」


「前祝いは縁起が悪いっていうし明日改めてがいいかな」


「えっ、そうなのか?」


「弔事を連想させるから良くないって言われてる」


「分かった、そうするよ」


 相変わらず物知りな里緒奈の言葉を聞いた俺はそう声を上げた。明日二人の家である誕生日パーティーに呼ばれているためその時に渡す事にしよう。

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