第7章

第46話 じゃあ私は娘が欲しいな

 四週間近くあった夏休みも残り一週間を切り終わりが目前に迫っていた。来年は受験生になるため今年のように遊んでばかりはいられないに違いない。

 果たして俺はちゃんと大学生になれているのだろうか。そんな事を考えながら一人でショッピングモールの中をうろうろしていた。

 俺が珍しく単独行動している事には勿論ちゃんと理由がある。実は明日八月二十一日は玲緒奈と里緒奈の誕生日なのだ。

 そんな二人のプレゼントをこっそりと買って明日渡すために、わざわざ親戚の家に行く約束があると嘘までついて今日は一人にして貰った。だから万が一嘘がバレても困るので二人が絶対来なさそうな遠方のショッピングモールまで足を運んでいる。


「うーん、何をあげるか悩むな……」


 俺はぼっちで友達がいないため妹の澪以外にプレゼントをあげた事が今まで一度もない。だから何をプレゼントするのが正解なのか全く分からなかった。

 一応澪にも事前にアドバイスを貰ってはいたが最終的な判断は俺がしなければならないため中々決まりそうにない。


「……ちょっと休憩しようか」


 朝から二時間ほど探していたが煮詰まってきたためそろそろ頭を休めたい。フードコートにやってきた俺はイヤホンを耳に装着して音楽を聞きながらソシャゲのダンジョン周回をし始める。

 水着ガチャを回すためにはダンジョン攻略で貰えるジェムも必要なためひたすら周回しなければならない。しばらく集中して周回する俺だったが突然後ろから肩を叩かれる。

 顔をあげるとそこには暗い笑みを浮かべた玲緒奈と里緒奈が立っていた。えっ、何でここに二人がいるんだよ。監視でもされていない限り遭遇するとは思えないんだが。


「親戚の家に行ってるはずの涼也君がこんなところで何をしてるのかな?」


「ひ、昼から行く予定で……」


「昨日は午前中に行くって言ってた」


「急遽予定が変わったんだよ」


「本当かな? ちょっと涼也君を信じられないんだけど」


 俺はしどろもどろになりながら誤魔化そうとするが二人は疑いの目を強めるばかりだ。


「もし涼也君が本当の事を言ってくれるなら今だったら許すかもよ」


「でもこのまま嘘を付くなら今までで一番きつい罰を与える」


「ごめん、今日の約束は嘘だ」


 もうこれ以上隠しても良い事なんて何もないと判断した俺は正直に白状する事にした。すると二人は俺の対面の席に着席する。あっ、絶対これから尋問が始まるやつだ。


「じゃあ涼也君が何で私達に嘘を付いたのかこれからゆっくり聞かせてもらおうか」


「虚偽報告は許さない」


「……ほら、明日は玲緒奈と里緒奈の誕生日だろ? だからサプライズプレゼントを買おうと思ったんだよ。まあ、もう今話したせいでサプライズでも何でも無くなったけど」


「なんだ、そういう事だったんだ」


「それなら今回は無罪放免で許す」


 俺の言葉を聞いた二人は一瞬で機嫌が直った。ひとまず許されたようなので安心だ。


「それで涼也君は私達のプレゼントは何を買うつもりだったの?」


「実は結構悩んでてまだ何にするかは決まってなくてさ……」


「確かにプレゼント選びは迷う」


「ちなみに二人は何か欲しいものはあるか? 俺が買えそうなもの限定にはなるけど」


 もはやサプライズの意味も無くなったため俺は欲しいものを直接聞く事にした。本人が欲しいと言っているものであればまず間違いはないだろう。


「じゃあ私は娘が欲しいな」


「お姉ちゃんがそう言うなら私は息子がいい」


「いやいや、どうやって準備すればいいんだよ!?」


 あまりにも予想外過ぎるプレゼントを求められた俺はそう声をあげた。誕生日プレゼントには子供が欲しいと言われるのはいくらなんでも予想外だ。まさか俺に攫ってこいとは言わないよな。


「まあ、流石にそれは冗談だけどね」


「今はまだ早い」


「まあ、玲緒奈と里緒奈は結婚相手なんて選びたい放題だから将来は子供の一人や二人くらいはいると思うぞ」


「うん、楽しみにしてる」


「きっとの子供は可愛いと思う」


 確かに玲緒奈と里緒奈の遺伝子が入ればどんな相手との子供だって美形になるに違いない。どこの誰と結婚するのかは知らないが羨ましい限りだ。

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