第43話 むっつりスケベな涼也なら知ってるはず
借りていた浴衣を返却した後俺達は駅近くにあるラブホテルへとやってきた。
「着いたよ」
「ここが今日の宿泊先」
「……なあ、やっぱり考え直さないか? 流石にラブホテルに泊まるのは色々とまずい気がするしさ」
「残念ながらそれは無理かな」
「勝者の権利は絶対」
今からでも何とかして阻止できないものかと抵抗を試みる俺だったが玲緒奈と里緒奈の態度的にそれは極めて難しいと言わざるを得ない。
「てか、そもそも高校生の俺達でも入れるのか?」
「ああ、そこは大丈夫だよ。入り口のパネルで部屋を選んで入るだけだから」
「年齢確認はされないから何の心配もいらない」
うん、これ以上やっても時間の無駄だ。ラブホテルの前で男女三人が立っている絵面はどう考えても目立つためひとまず建物の中に入る。
それからフロントに設置してあった電子パネルを操作するわけだが三人とも初めてだったため少しだけ手こずってしまった。
その後無事に部屋を選択できた俺達はエレベーターで移動して素早く中に入る。他のカップルと通路などで遭遇したら気まずいと思っていたが幸いエンカウントする事はなかった。
「へー、部屋の中はビジネスホテルとかとそんなに変わらないんだね」
「思ったよりも普通」
呑気に二人がそんな話をしている姿を見ながら俺は荷物を床に降ろし、特に何も考えずにテレビのリモコンの電源ボタンを押す。すると次の瞬間、画面に男女の性行為のシーンが映し出され大音量で喘ぎ声が流れ始める。
「えっ!?」
「り、涼也君何やってるの!?」
「……まさか涼也はわざとやった?」
「いや、マジのガチでこれについては知らなかったから」
アダルトビデオが流れ始める事を初めから知っていれば絶対テレビなんてつけなかった。いくらなんでもこれは初見殺し過ぎるだろ。
「本当かな?」
「ちょっと怪しい」
「と、とにかく俺はお風呂の準備をしてくるから」
俺は逃げるようにして浴室に向かった。完全に逃げるための口実だったが怪しまれないために一応風呂の準備を行う。浴槽は二人で入る想定で作られていたためかなりの大きさがあり湯船にお湯が溜まるまではしばらく時間が掛かりそうだ。
「あっ、おかえり」
「ただいま……っておい、玲緒奈が手に持ってるそれは何だよ!?」
「何って見ての通りだけど」
「むっつりスケベな涼也なら知ってるはず」
玲緒奈が手に持っていた物はいわゆる大人のおもちゃだった。何故そんな物を持っているのか疑問に思う俺だったがそう言えばここラブホテルだわ。そんなボケとツッコミを頭の中で繰り返していると重要な事を忘れていた事に気付く。
「……あっ、そうだ。母さんに帰れなくなった事を連絡しとかないと」
「ああ、それならもう私達から涼也君のお母様に連絡してあるから大丈夫だよ」
「ちゃんと許可を貰っておいたから心配いらない」
「マジで俺の母さんチョロすぎないか……?」
玲緒奈と里緒奈に頼まれたらどんな言う事でもほいほい聞いてしまいそうな気しかしない。まあ、八神家の人間がチョロいのは昔からのため今更だが。
「よし、じゃあそろそろお風呂に入ろうか」
「ずっと体が汗だらけになってて気持ち悪かったし早く入りたい」
「ああ、行ってらっしゃい」
「何言ってるの? 涼也君も一緒に入るんだよ」
「三人一緒以外は認めない」
何となくそんな予感はしていたが予想通りだったようだ。どうせ拒否しても無駄な事は始めから分かり切っていたため大人しく従う事にした。
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