【書籍化&コミカライズ決定】何の取り柄もない平凡な俺が美人双子姉妹を命懸けで助けた結果、実はヤンデレだった二人をガチ惚れさせてしまった件【リメイク版】
第42話 涼也君が一度した約束を破るような人間じゃないって信じてるからね
第42話 涼也君が一度した約束を破るような人間じゃないって信じてるからね
そんな事を考えながら引き続き屋台を三人でしばらく回り続けているうちに時間が過ぎ去りいよいよ花火の打ち上げ時間が近づいてきた。俺達は芝生にシートを敷いてそこに腰掛ける。
事前に有料エリアのチケットを二人が買っていたためよく花火が見えそうだ。開催直前のアナウンスが終わり花火大会の開始時間になった瞬間、一発の花火が夜空に打ち上げられる。それを皮切りに次々と花火が打ち上げられ色とりどりの花が夜空を埋め尽くす。
「やっぱり花火はいい」
「ああ、久々なせいかちょっと感動してる」
「これぞ日本の夏って感じだね」
俺達は花火が色鮮やかな閃光を夜空へ撒き散らして消えていく様をみながら三人でそんな会話をしていた。やはり花火は何歳になってもワクワクするものだ。
「本当に綺麗だな」
「ちなみに涼也君的には花火と私達だったらどっちが綺麗?」
「おい、急に何を聞いてくるんだよ!?」
「涼也の答えを聞きたい」
何気ない呟きをしたところとんでもない質問をされて狼狽える俺だったが玲緒奈と里緒奈から期待するような眼差しを向けられているため答えざるを得ない。
「……玲緒奈と里緒奈かな」
「なるほどね、涼也君にとって私と里緒奈は花火よりも綺麗なんだ」
「その言葉絶対に忘れない」
悩んだ末に出した答えだったが選択肢を間違えてしまった気がしてきた。いや、花火と答えていた場合も不機嫌になっていたはずなのでそっちの選択肢も正解とは思えない。
つまりこの質問はどちらも正解の選択肢なんてなかったと言える。今後はしばらく今のネタで二人から揶揄われそうだ。それから三人で一緒に花火を見続けているうちに気付けば一時間半が経過していた。
「あっという間だった」
「ああ、体感的にはまだ三十分も経ってないくらいだ」
「木更津の花火大会は初めてだったけど本当に楽しかったね」
満足した俺達はそんな会話をしながら芝居に敷いていたシートを畳む。人の大移動が起きていて周囲は非常に混雑しているため移動はもう少し待ってからの方が良いだろう。そう思っていた俺だがスマホを見ていた玲緒奈が声をあげる。
「ちょっと困った事になったんだけど……」
「急にどうしたんだ?」
「これを見て」
玲緒奈に見せられたスマホの画面には俺達が帰宅するために乗る予定である内房線の運行状況が書かれていたのだが人身事故が起きて現在止まっているようだった。運行再開は未定のようでいつ動くか分からない。
「……マジか、結構面倒な事になったな」
「うん、電車が止まった関係でバスもめちゃくちゃ混むだろうし下手したら乗れるかすら分からないよ」
「タクシーで帰ろうとしたら少なくとも二万円以上は掛かる」
「結構高いね、三人で割ったとしても痛い出費になりそう」
ちなみに電車の場合は一人二千円ほどで済むため三人分で考えたとしても軽く見積もって三倍以上は割高な計算だ。
「乗れるか分からないバスにあてにするのはリスクが高いし、大人しくタクシーで帰るしかないか」
「あっ、そうだ。もういっそ今日はどこかに泊まって帰るのは明日にしない?」
「なるほど、それは名案」
「いやいや、普通に考えて駄目だから」
玲緒奈の提案に対して一瞬で賛成を表明する里緒奈だったが当然俺は賛成なんて出来ない。
「えっ、三人で同じ部屋に泊まるなんて言ったかな?」
「もしかして涼也は私達と同じ部屋に泊まるつもり?」
「そ、それは……」
完全に同じ部屋だと思い込んでいたため俺は言葉に詰まってしまう。日頃二人の無茶振りに付き合わされているせいで感覚が完全に麻痺していたが確かに普通付き合っていない男女が同じ部屋には泊まるという発想にはならない。
「まあ、涼也君と一緒以外はあり得ないけど」
「私とお姉ちゃんは優しいから涼也を仲間はずれになんて絶対にしない」
相変わらず玲緒奈と里緒奈は通常運転だった。あんまり童貞の心を弄ばないでくれ。
「てか、そもそも泊まった方がもっと痛い出費にならないか? 安いところなんて空いてるとは思えないし」
「ああ、心配しなくてもラブホテルだからそんなに高くないよ」
「大体五千円くらいで三人宿泊出来る」
「そこは俺達が一番泊まっちゃ駄目なところだろ!?」
なぜそんなとんでもない発想になるのか常人の俺にはさっぱり理解出来ない。ひょっとして……いや、ひょっとしなくても玲緒奈と里緒奈はどこか頭のネジが何本か外れている気がする。
「じゃあさっき一位になった命令をここで使う、今夜は三人でラブホテルに泊まろう」
「涼也君が一度した約束を破るような人間じゃないって信じてるからね」
「……分かったよ」
とても断れるような空気では無かったため諦めてそう答えるしかなかった。まあ、お泊まりは三回目だから多分大丈夫だろう。
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