第31話 心配しなくてもその辺は私がちゃんと考えてるから

 それからそれぞれ入浴を終えた俺達だったが新たな問題が発生していた。なんとおばあちゃんが玲緒奈と里緒奈に俺の子供の頃の写真を見せてしまったのだ。そのせいで俺の恥ずかしい過去が次々に暴かれている。


「あっ、涼也が顔をくしゃくしゃにして泣いてる」


「食べてたソフトクリームを地面に落としたみたいだね、泣き顔も中々可愛いじゃん」


「……恥ずかしすぎて死にそう」


 様々な黒歴史を見られ過ぎて俺のライフは完全にゼロだった。もう一思いに殺して欲しいレベルな俺に対して玲緒奈と里緒奈はどこか楽しげな様子だ。

 二人とも間違いなくドSに違いない。結局玲緒奈と里緒奈はおばあちゃんの家にあったアルバムを一つ残らず完全制覇してしまった。


「私も里緒奈も満足したからそろそろ寝ようか」


「そうだな、明日はテーマパークが控えてるし」


「明日も楽しみ」


 俺達はおばあちゃんが準備してくれた寝床に向かい始める。 俺はだいぶ前に死んでしまったおじいちゃんの部屋で二人はその隣の客間で寝る予定だ。


「分かってるとは思うけど俺の布団には絶対潜り込んでくるなよ、下手したらおばあちゃんがショック死するから」


「えー、私達と涼也君の事はしっかりお婆様にも説明したから別に大丈夫だと思うんだけど」


「いやいや、玲緒奈と里緒奈は思いっきり嘘を吹き込んでただけだろ」


「それならこれから本当にすれば良い」


「全然良くないから」


 玲緒奈と里緒奈は寝る間際までとにかく元気だった。てか、里緒奈は嘘って事は認めるんだな。そんなこんなで一日が終了した。


 一夜が明けておばあちゃんの家を後にした俺達は岡山ミラノ公園の入り口前に来ている。岡山駅東口から歩いて五分ほどの距離だったため本当にすぐだった。


「よし、じゃあ早速中に入ろうか」


「今日は三人でいっぱい遊ぼうね」


「テーマパークは何歳になってもワクワクする」


 玲緒奈と里緒奈はまるで子供のようにテンションが高い。ちなみにインターネットストアでアトラクション乗り放題の入場チケットを既に購入しているためわざわざ窓口には並ぶ必要がなかった。

 俺達はスタッフにスマホの画面を見せて入場ゲートをくぐる。するとすぐに観覧車やジェットコースターなどの大型アトラクションが視界に入ってきた。


「どれから乗ろうかな」

「色々あるから正直迷う」


「個人的なおすすめは色々あるけど二人の好みに合うか分からないし、とりあえずパンフレットを見ながら考えようぜ」


「そうだね、そうしようか」


 俺達は三人でどのアトラクションに乗るかを話し始める。しばらく話した結果記念すべき最初のアトラクションはバイキングに決定した。早速バイキングに向かう俺達だったがアトラクションは結構順番待ちしている様子だ。


「バイキングも人気みたいだね」


「この感じだと結構待ちそうだな」


「やっぱり絶叫系はみんな好き」


「とりあえず並ぼう」


 ここへ来るときに前を通りかかったジェットコースターやウォーターライドも長蛇の列ができていたた事を考えるとやはり絶叫系は人気なようだ。


「そう言えば夏休みが明けたらすぐに学園祭だよね」


「今年も楽しみ」


 玲緒奈と里緒奈の会話を聞いて学園祭が近い事に気付く。ぼっちで友達のいない俺にとって三日間ある学園祭は修学旅行などと並んで辛いイベントの一つだ。

 ちなみに天木高校の学園祭は他の学校でいうところの文化祭と体育祭を合体させたような行事となっていて二日間が文化の部、残り一日が体育の部となっている。


「……放課後の学園祭準備が嫌過ぎるから中止になってくれないかな」


「こらこら、涼也君はそんな捻くれた事言わない」


「今年はきっと楽しい」


「でも今年って確か演劇だろ? どう考えてもぼっちには辛過ぎるんだけど」


 二年生が担当の演劇は衣装や小道具の作成、練習などで一致団結する必要があるため間違いなくあぶれる俺には苦痛な時間になるはずだ。


「心配しなくてもその辺は私がちゃんと考えてるから」


「お姉ちゃんに任せれば大丈夫」


「個人的にはちゃんと考えてるって部分を具体的に教えて欲しいんだけど」


「そこはお楽しみって事で」


 不安になった俺は玲緒奈に尋ねたが教えてくれそうな気配は無かった。とんでもない事をやらかしそうでめちゃくちゃ心配なんだが。

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