第27話 また負けた、いくらなんでも強すぎるだろ

 東京アクアランド遊んだ日から一週間ほどが経過した今日、俺は玲緒奈と里緒奈と一緒に新幹線に乗っていた。岡山市立大学のオープンキャンパスに参加するために移動している最中だ。

 一緒に行こうとする玲緒奈と里緒奈に対して泊まりがけで行くという理由でやんわり拒否をしていたのだが、何と二人は俺の父さんと母さんに許可を貰ってしまった。

 父さんも母さんもめちゃくちゃチョロかったらしい。だから断りきれなくなって結局三人で行く事になったというわけだ。現在は三人でトランプで大富豪をしながら過ごしている。


「あっ、涼也君と里緒奈見て。窓の外に富士山が見えるよ」


「本当だ、って事はもう中部地方に入ったのか」


「お姉ちゃん、興奮し過ぎ」


「だって富士山だよ、逆に興奮しない方が難しいって」


 次の停車駅は名古屋駅と電光掲示板には表示されているため目的地である岡山駅への到着はまだしばらく先になりそうだ。


「ところで玲緒奈と里緒奈は今まで岡山に行った事はあるのか?」


「中国四国地方は広島と高松には行った事があるけど、岡山は無いんだよね」


「だから私もお姉ちゃんも結構楽しみにしてる」


「まあ、中々ピンポイントでは行かないよな」


 ちなみに岡山市立大学のオープンキャンパスが終わった後は倉敷方面へと移動をして美観地区に行って観光する予定になっている。そして翌日テーマパークの岡山ミラノ公園で遊んでから東京に戻る予定だ。そんな事を考えていると里緒奈がジャックを二枚場に出してくる。


「うわっ、マジかよ。パス」


「えっ、このタイミングでイレブンバックするの……私もパス」


 俺と玲緒奈はそう声をあげた。一時的にカードの強さが逆転するイレブンバックをされたせいで行動を封じられてしまったのだ。そこからは里緒奈の一方的なターンであり、俺達は手も足も出なかった。


「これで私の勝ち」


「また負けた、いくらなんでも強すぎるだろ」


「やっぱり里緒奈は相変わらず強いね」


「こういう勝負は私の得意分野」


 新幹線に乗ってから既に何試合かしてきたが、俺と玲緒奈は一回たりとも里緒奈に勝てていないのだ。里緒奈のポーカーフェイスは完璧でありその上地頭も良いため凄まじく強かった。

 その一方で玲緒奈はめちゃくちゃ表情に出やすいタイプだったため正直かなり弱かった事は言うまでも無いだろう。一卵性の双子なはずなのにその辺りは全然違うらしい。


「そろそろ他のゲームをする?」


「……多分何やっても里緒奈が圧勝しそうな未来しか見えないんだけど」


「うん、里緒奈は子供の頃からトランプとかオセロみたいなゲームで負け知らずだったし」


 玲緒奈は勝負をする前から完全に諦めムードだ。多分子供の頃から里緒奈にボコボコにされ続けて来たに違いない。その後はトランプを辞めてしばらく心理テストや観光の話をして盛り上がっているうちに岡山駅へと到着した。


「やっと岡山駅に着いたね、長時間座りっぱなしだったからちょっと疲れたよ」


「やっぱり三時間半は結構長い」


「二人ともお疲れ様」


 玲緒奈と里緒奈は新幹線を降りるとその場で背伸びをしたりストレッチをしていた。それだけキツかったという事なのだろう。


「岡山駅の西口から臨時のシャトルバスが出てるからそれに乗って五分くらいで着くぞ」


「へー、駅近にある大学なんだ」


「めちゃくちゃアクセスが良い」


「だから広島県の東部とか香川県から通学してる人もいるらしいぞ」


 そんな会話をしながら俺達は改札へと向かい始める。新幹線ホームでは大昔放送されていた某銀河鉄道アニメのオープニング曲が発車メロディとして流れておりちょっと懐かしい気分にさせられた。

 まあ、そのアニメが放映されていた時代に俺はまだ生まれてすらいないが。改札を抜けた俺達は西口にあるバスターミナルへと向かい始める。駅の構内には多くの人がいたが地方都市という事で東京ほどの混雑はない。


「そう言えば明日行く予定の岡山ミラノ公園も駅近くって聞いたけどさ、どの辺りにあるの?」


「岡山ミラノ公園は東側だからちょうど反対方向だな、確か東口から徒歩五分くらいだった気がする」


「色々なアトラクションがあるって聞いたから楽しみ」


 それから俺達はシャトルバスに乗って岡山市立大学へと向かい始める。バスの中には俺達と同じようにオープンキャンパスに参加する高校生が乗っていたわけだが男子達は玲緒奈と里緒奈に釘付けだった。

 二人はどこへ行ってもめちゃくちゃモテるらしい。そして案の定隣にいる俺に対しては妬みの視線が向けられていた。まあ、もう慣れたため別に痛くも痒くもないが。


「そう言えば二人はオープンキャンパスってこれが初めて?」


「ううん、去年友達と里緒奈と一緒に行ったよ」


「そうなのか、俺は初めてだから経験者がいて助かる」


 どうやら玲緒奈と里緒奈は既に行った事があるようだ。それなら非常に心強い。

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