第25話 ちなみに涼也君はさっき私の胸見た?
それから俺達は準備体操をしてから片足ずつプールの中に入る。
「やっぱりプールの中は冷たくて気持ちいいな」
「うん、今日みたいな暑い日には最高だよね」
「来て良かった」
三人でそんなやり取りをしながら俺達はプールで遊び始める。プールの中は家族連れやカップルなどで賑わっていた。東京アクアランドにはウォータースライダーはもちろん、ジャグジーやサウナなどもあるため長時間遊べそうだ。
ちなみに夏限定の屋外エリアも一応あるがそこはおまけ程度の広さであり屋内プールが広さの八割を占めているらしい。
「……そう言えばここのプールってウォータースライダーが二種類あるんだな」
「うん、長いスライダーと短いスライダーがあるね」
「せっかくだから両方滑りたい」
ちなみに長いスライダーよりも短いスライダーの方がスピードが出るため、人によって好みが別れるらしい。
「ちょうど今あんまり並んでないみたいだしさ、小さいスライダーに行ってみない?」
「そうだな、ただ泳ぐだけなのも飽きてきてたところだし」
「私も賛成」
玲緒奈の提案に俺も里緒奈も賛成したため一旦プールから上がり三人で短いスライダーへと向かい始める。
「滑る時に寝転ぶと結構スピードが出るらしいよ」
「へー、じゃあ俺は寝転ぼうかな」
「私は普通に滑る、お姉ちゃんは?」
「せっかくだから私は寝転ぶよ」
そんな会話をしているうちにどんどん順番待ちの列は進んでいく。短い方は下までの距離が短い上にスライダーが二つ設置されているため回転率も圧倒的に良かったのだ。
「よし行ってくる」
「いってらっしゃい」
「涼也の姿、上から見てる」
俺は寝転んだまま勢いよくウォータースライダーを滑り始める。玲緒奈なら聞いていた通りスピードも出てかなり早かったためあっという間に着水した。
プールサイドに上がった俺は次に滑ってくる玲緒奈を下で待ち始める。そして予想通り寝転んで勢いよく滑ってくる玲緒奈を見守る俺だったが、着水のタイミングでとんでもないハプニングが起こってしまう。
「おい、マジか!?」
なんと玲緒奈が身につけていた赤いビキニの上半身部分がプールに着水した衝撃で運悪く外れてしまったのだ。自分の状況に気付いた玲緒奈は顔を真っ赤にしながら、かなり慌てた様子で水中に潜り外れたビキニを探し始めた。
俺もすぐさまプールに入って玲緒奈のビキニを一緒に探す。不幸中の幸いですぐ見つかったため俺は玲緒奈を見ないようにしながらビキニを手渡した。
「まさか紐が外れるとは思ってなかったから焦ったよ、更衣室ではしっかり結んでたはずなんだけど」
「油断大敵って事だな、てか玲緒奈があそこまで慌てふためくとか思ってなかったから意外だった」
「私も女の子なんだから普通に考えて慌てるに決まってるでしょ」
「でも俺の前では特に抵抗もなさそうな感じで服とか脱いでたよな?」
以前お泊まり勉強会をした時に玲緒奈と里緒奈は何の躊躇いもなく全裸になっていたためそういう性癖があるのかと思っていたのだが。
「不特定多数から見られるのは無理に決まってるじゃん」
「あっ、なるほど」
今の発言は俺であれば別に見られても問題ないようにも聞こえたが怖かったためそれ以上は突っ込まなかった。
「ちなみに涼也君はさっき私の胸見た?」
「……見てないぞ」
「チラッとも見てないの?」
「ああ、俺も慌ててたから見る暇なんてなかった」
本当はほんの少しだけ見えてしまったが変態というレッテルを貼られかねないため黙っておくつもりだ。その後とくに何事もなく滑ってきた里緒奈とともに三人でジャグジーにやって来た。
「温かくて気持ちいいね」
「だな、ここ最近の疲れが一気に吹き飛びそう」
「涼也おじさんみたいな事を言ってる」
「玲緒奈と里緒奈はもこの歳になれば分かるから」
「いやいや、涼也君って同い年じゃん」
そんな馬鹿な雑談で盛り上がりつつ俺達はまったりしていた。ここ最近はとにかく色々なイベントが立て続けに起きていたためそろそろリラックスして疲れを取らないと倒れてしまう自信がある。
病院には通り魔の一件で十分入院したためもうしばらくは勘弁して欲しい。まあ、そもそも何度も入院しそうな事件に巻き込まれるとは思えないが。ジャグジーを出た後は流れるプールで遊んだり三人でサウナに入ったりして過ごした。
「……プールで遊び始めてから三時間近くも経ってるのか」
「本当にあっという間だった」
「それだけ楽しかったって事だよ」
そんな事を話しながら俺達は長いスライダーの列に並んでいる。先程の教訓を踏まえて玲緒奈と里緒奈はビキニの紐をしっかりと固定しているらしいので恐らく今度は何も起きないだろう。
「今度は私が最初に滑る。万が一またお姉ちゃんのビキニが取れたら今度は私が探すから」
「今度は大丈夫だって何回も言ってるじゃん。私ってそんなに信用ない?」
「お姉ちゃんは昔から同じ失敗を繰り返すところがあるから正直信用できない」
「ちょっとそれは酷くない?」
里緒奈は玲緒奈の言い分をばっさりと一刀両断してしまった。そんな二人のやり取りを見て笑っていると、玲緒奈から睨まれてしまったため俺は慌てて目を逸らす。しばらく雑談をして待っている間に列はどんどん進んでいきようやく俺達の順番が回ってきた。
「先に下で待ってる」
そう言い残した里緒奈は大きいスライダーを滑り始める。里緒奈は先程と同じように寝転ばず普通に座って滑っていた。
「今度は私の番だね」
「今度はビキニが外れないようにな」
「もう、分かってるよ。涼也君の馬鹿」
玲緒奈は先程の事を思い出したのか少し顔が赤い。今回も寝転んで滑る玲緒奈だったが幸いな事に何もアクシデントは起きなかった。
玲緒奈が無事下に到着したのを確認した俺は係員の指示で滑り始める。ちなみに俺も念の為に海パンの紐をしっかりと結び直したため無様な姿を晒すような失態は犯さないはずだ。そう思っていた俺だが予想外のアクシデントが発生する。
「やばっ!?」
なんとウォータースライダーを滑っている最中に俺は右足をつってしまう。そしてさらに運の悪い事にウォータースライダーが着水した瞬間左足もつってしまった俺は完全にパニックになって溺れかける。
「涼也!?」
「涼也君!?」
俺の姿を見た玲緒奈と里緒奈は血相を変えてプールに飛び込んできた。幸いな事にすぐ引き上げられたため大事にはならなかったが二人が人工呼吸をしてこようとしてきたため俺が全力で止めた事は言うまでもない。
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