第17話 ご褒美で当ててるんだよ
その後カフェを後にした俺達は東京インクルージョンスクエアの中をぶらぶらし始める。広大な延べ床面積を誇っているため一周するだけでも凄まじい時間がかかりそうだ。
「そう言えば期末テストが終わったらすぐに夏休みだよね」
「だな、俺の場合は赤点を取らなければの話だけど」
「大丈夫、涼也には私が絶対赤点なんて取らせない」
「うんうん、私もしっかり涼也君をサポートするから」
玲緒奈と里緒奈はやる気満々な表情でそう口にした。二人のおかげで希望は見えてきたし、俺も全力で赤点回避を目指して頑張ろう。
「ちなみに涼也君はこの夏休みは何か予定とかあるの?」
「うーん、今のところ特に何もないかな」
「本当?」
「ああ、マジで予定ないから」
玲緒奈と里緒奈に夏休みの予定を尋ねられた俺は堂々とそう答えた。きっと二人は友達と遊んだりして楽しい夏休みを過ごすに違いないが俺は多分部屋でごろごろしていると思う。
「涼也はずっと暇なんだ」
「ぼっちな涼也君の事だからそんな気はしてたけど」
「二人とも容赦ないな、あんまり虐められたら流石の俺でも泣くぞ」
玲緒奈も里緒奈から毒をはかれた俺はそう声を漏らした。分かってるとは思うけど俺は虐められて喜ぶような性癖は持ってないからな。
「あまりにも涼也君が可哀想だから特別に私と里緒奈が一緒に遊んであげるよ」
「これで涼也にも夏休みの予定が出来た」
「ちなみに遊ぶのはいつにするつもりだ?」
もしかしたら家族との予定が入る可能性もあるのでそこは確認しておく必要がある。もし予定がダブルブッキングしたら面倒な事になりそうだし。
「そんなの夏休み中は毎日に決まってるじゃん」
「……えっ!?」
玲緒奈がさらっとそう言葉を口にしたが姿を見て俺は思わず声をあげた。確か夏休みは四週間くらいあるはずだがそれを毎日というのはいくらなんでも無茶過ぎやしないだろうか。
「もしかして涼也は嫌?」
「い、いや別に嫌って事はないんだけどさ。てか、二人の予定とかはどうするんだよ? 友達とかと遊ぶ予定もあると思うんだけど」
まさか俺について来いとかめちゃくちゃな事は言わないよな。玲緒奈と里緒奈の友達の陽キャ集団の中に放り込まれたら多分死ぬ自信しか無い。
「ああ、それは全部キャンセルするから大丈夫」
「いやいや、そこまでする必要あるか?」
「私もお姉ちゃんも涼也が最優先」
二人の表情は真剣そのものでありとても嘘をついているようには見えなかった。どうやら玲緒奈と里緒奈は本気らしい。
「って訳だから三人で楽しい夏休みを過ごそうね」
「たくさん思い出を作りたい」
「……マジかよ」
こうして俺の夏休みの予定は全て埋まった。美人双子姉妹と夏休みを過ごす事になるなんて過去の自分に言ったとしても絶対信じないだろう。そんな事を考えながら三人でしばらくショッピングを続ける。
「あっ、あそこのゲームセンターに寄ろうよ」
「賛成、ずっとショッピングだけってのもそろそろ飽きてきたし」
「私も涼也とお姉ちゃんに賛成」
俺達は三人でゲームセンターのフロアへと足を踏み入れる。フロアの中は小学生くらいの子供から大人まで幅広い年齢層の人達がいた。手始めに俺達はクレーンゲームで遊び始めるわけだが玲緒奈が動かなくなってしまう。
「……うー、悔しい。もう一回」
「なあ、そろそろ諦めないか? これだけやっても取れないなら正直難しいと思うぞ」
「嫌だよ、絶対に取るから」
もう既に三千円くらい使っているため俺は諦める事を提案したのだが玲緒奈は辞める気がないらしく追加のお金を機械に投入する。
「こうなったお姉ちゃんは昔から梃子でも動かない」
「そっか、玲緒奈は結構諦めが悪いタイプなんだな」
「だからお姉ちゃんの気が済むまで待つしか無い」
一体いつになる事やら。ひとまず玲緒奈を見守っていると近くの台で同じタイプの景品を取ろうとしている親子連れがいる事に気付く。また新たな被害者が増えたなと思っていると五回ほどで景品を取ってしまった。
「……なるほど、そうやって取ればいいのか」
先程の光景を見てこの台の攻略法に気付いた俺は再び台に百円玉を入れようとしていた玲緒奈の隣に移動して口を開く。
「なあ、ちょっと俺にやらせて貰ってもいいか?」
「もしかして取る方法分かったの?」
「絶対取れるかは分からないけど」
そう口にしながら俺は台に百円玉を投入するとさっそくクレーンを操作し始める。玲緒奈は持ち上げて取ろうとしていたが、俺はアームを使って景品を少しずつ二本あるバーの上からずらす。
そして景品がバーの間に半分落ちるような位置まで移動させてアームで上から押さえつける。それを数回繰り返してバーの間に押し込み続け、無事に落下させる事に成功した。
「よし、取れた」
「涼也君、凄いよ」
俺がしゃがんで取り出し口から景品を取り出そうとしていると後ろからハイテンションな玲緒奈が思いっきり抱きついてくる。
「ち、ちょっと胸が当たってるから!?」
「ご褒美で当ててるんだよ」
「それはもっとたちが悪いって」
柔らかい胸の感触で下半身が元気になり始めているためかなりやばい状況だ。このままでは勃起している事が二人にバレてしまうかもしれない。
「お姉ちゃん、涼也が困ってるからそろそろ離してあげたら?」
「そうだね、今回はこのくらいで許してあげる」
「だから何で罰を受けてるみたいになってるんだよ」
「でも嬉しかったでしょ?」
「……それは、まあ」
俺が素直にそう答えると玲緒奈はニコニコしていた。その後俺達はシューティングゲームやエアホッケーなどゲームセンター定番のゲームで遊んだ。
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