第7話 本当現実世界ってぼっちには厳しいよな
「そろそろ教室に戻ろう」
「そうだな、更衣室へ移動して着替える時間を考えたらもういい時間だもんな」
五時間目は体育の授業のため早めに行動する必要がある。ちなみに今日はバレーボールらしくチームプレイが必要な競技のためやる前から憂鬱だ。ぼっちとチームプレイの相性はとにかく最悪なため免除して欲しい。
「涼也、お姉ちゃんまた後で」
「うん、じゃあ行こうか」
「えっ、もしかして一緒に戻る気か?」
「そうだよ」
俺からの問いかけに対して玲緒奈は当然と言いたげな表情でそう答えた。
「いやいや、それはまずいだろ」
「何がまずいの?」
「ほら、周りの目とかあるし……」
「別に私は気にならないから大丈夫だよ」
玲緒奈が大丈夫だったとしても俺が全く大丈夫ではないのだが。それを説明したが私と一緒は嫌と聞かれて咄嗟に嫌ではないと答えてしまったため逃げられなくなった。
玲緒奈と一緒に教室に戻ると案の定めちゃくちゃ目立ってしまい凄まじく胃が痛くなってしまった事は言うまでもない。
そして体操服をリュックサックから取り出した俺はそのまま更衣室へと向かう。そこで体操服に着替えた俺は足早に体育館へ移動した。体育教師は予鈴までに整列していないとうるさく遅刻すると面倒な事になるため要注意だ。
しばらくして授業が始まったため俺は準備体操をしてから余った奴とペアになってバレーのサーブ練習を行う。ちなみに体育館の中は男女合同で使っており、半分を使って女子達がバスケットボールの授業をしていた。
「なあ、お前はクラスの女子の中で誰が一番好み?」
「そんなの剣城さん一択だろ」
「やっぱそうだよな」
一部の男子達はサーブ練習をしながらそんな会話をしておりとにかく玲緒奈は大人気らしい。まあ、あの容姿と性格で人気が出ない方がおかしいだろう。
そうこうしている間に時間はあっという間に半分経過して練習試合が始まった。俺は指定されたチームに入って練習試合に参加する。
と言っても球技全般が苦手な上に日本人の平均身長を下回っている俺は試合中とくに活躍なんてしなかったが。少しして選手交代となり休んでいると女子達がバスケットボールの試合をしている様子が目に入ってきた。
俺と同じように球技が苦手で小柄な女子達は適当に参加していたがガチで試合に集中をしているメンバーもいる様子だ。
「玲緒奈そのままシュートを決めろ」
「うん、任せて」
味方からのパスを受け取った玲緒奈はボールをバスケットゴールに叩き込む。そして他の女子達と嬉しそうにハイタッチしていた。
うん、やっぱり俺と玲緒奈では生きている世界があまりにも違いすぎる。命の恩人とは言えなぜあそこまで絡んでくるようになったのか本当に不思議なレベルだ。
練習試合中ずっと玲緒奈と里緒奈が俺に絡んでくる理由を考えていたが結局結論は出なかった。これ以上考えてもどつぼにはまりそうな気がするし辞めよう。
体育の後は特に何事もなく六時間目と七時間目の授業を受けようやく放課後がやってきた。現在俺は教室で頭を抱えている状況だ。
「授業の内容が全く分からなかったし、これは結構ガチでヤバいな」
事前に予想していた事だが二週間近く休んでいたため授業はかなり進んでおりそのせいで内容がちんぷんかんだった。特に数学や物理などの理系科目が深刻であり、今のままでは間違い無く赤点を取ってしまう未来が待っている。
「赤点取ったらマジで面倒だし困ったな……」
ちなみにうちの高校はテストで赤点を取ってしまうと長期休み期間に補習を受けなければならなくなる。期末テストまでもうあまり日がないため早急に手を打つ必要があるがかなり厳しい状況だ。
こんな時リア充なら頼りになる友達や恋人、先輩から助けて貰ってピンチを乗り越える場面だが悲しい事に俺はぼっちだ。
「本当現実世界ってぼっちには厳しいよな」
もっとぼっちにも優しい世界になって欲しいものだ。とりあえず今のままでは間違いなく赤点不可避なわけだしもう最初から補習に参加するつもりでいた方が良いかもしれない。
「涼也、難しそうな顔してどうしたの?」
「うわっ!?」
完全に自分の世界に入っていた俺だったが突然誰がから話しかけられた事に激しく驚き思わずそう声をあげてしまった。
「……そんなに驚かれたらちょっと傷つく」
「あっ、里緒奈が悲しんでる。いーけないんだいけないんだ」
「ごめん、まさか急に話しかけられるとは思ってなかったからつい……てか、二人ともまだ帰ってなかったんだな」
帰りのホームルームが終わってからもう既に三十分近くが経過していたため、玲緒奈と里緒奈がまだ学校に残っていた事が意外だった。
「涼也君と一緒に帰ろうと思って待ってたんだ」
「でも涼也がいつまで経っても来ないから迎えにきた」
「えっ、俺と一緒に帰る気なのか!?」
「うん、ちなみに明日からもずっとそうするつもりだからよろしくね」
今日は朝から二人と一緒に登校したり昼に手作りのお弁当を貰ったりするなど人生初のイベントのオンパレードだったというのにまだ続くらしい。
「どうせ断っても嫌だって言うんだろ?」
「勿論」
「涼也君もやっと私達の事を理解し始めたみたいだね」
玲緒奈と里緒奈がめちゃくちゃ強引である事はここ数日間で身をもって経験したため何を言っても無駄である事は分かりきっていた。
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