第24話  姉妹対決

 銀の森を出ると、『妖刀ムネヒラ』を抜いて、仁王立ちしているマーク・エロイーズの姿が一番に目に飛び込んできた。


「アルゴット!! 女連れとは良い度胸だ!!」


「違うよ……今から、エラドーラ共和国に行くんだ。いっしょに行ってもらう……」


「アン・ローズだな。父の妾のダナ・エスティナの娘の……」


 マーク・エロイーズは、清楚なエロイーズの時の面影すらない。人を舐め腐った表情で僕らを見ていた。


「エロイーズお義姉様ですね。せっかく、光の聖霊グレシャスが宿った、聖女かもしれないと、やっと、リッヒ家のお役に立てるチャンスでしたのに……わたくしに取られるなんて、とことん、疫病神の方ですこと」


 アン・ローズは、「おほほ」と下品に笑った。

 顔はエロイーズにそっくりなのに、言動や、人を貶める事を言う時の顔は、マーク・エロイーズよりも更に下品だ。


「相変わらず、俺の物を何でも欲しがるんだな。アン」


 エロイーズは、ムネヒラをアン・ローズに突き付けて、僕の方に寄って来た。


「遅かったな。アル。寂しかったぞ」


 トロンとした目で、僕にあつ~~いくちづけをしてくるエロイーズ。

 それは、ねちっこく。舌まで入れてくるんだ。

 あ~~ 僕の理性が~~


「マーク、エラドーラ共和国の大統領を助けてくれ。暗殺事件が起こるんだ」


「あら、わたくしが助けますわ」


 アン・ローズ嬢が、後ろから言ってきた。


「君には、無理だよ。アン・ローズ嬢」


マーク・エロイーズを引っぺがして、やっとそれだけ言えた。


「光の神殿の予見者様は、わたくしに光の聖霊グレシャスが宿っていると言いましたわ。出来る筈です」


「言いにくい事ですが……四人の予見者の意見だけでは完全じゃないんですよ。『グレシャス』に関しては、僕の予知夢は、エロイーズに可能性があると出ています。君は大地の使い手ですね? そして、人の心も読めるんだ……。あなたが契約しているのは、『グリオン』という名の大地の精霊でしょう? 違いますか?」


 エロイーズそっくりの顔が醜く歪んだ。


「……お父様に嫌われてる一族の恥のお義姉様よりも、わたくしの方が劣っているというの?」


「大地の力を光の聖霊グレシャスだと言い張るのは止めて下さい。

 まるで違うものですから。僕にはあなたには大地の使い手にしか見えません」


 マーク・エロイーズは、僕とアン・ローズ嬢の間に『ムネヒラ』を突き出してきて言った。


「うるせいんだよ!! ばばぁ!! 妹だか義妹だか忘れたが、俺のアルにくっつくんじゃねぇ!!」


「まぁ!! お父様が聞いたら嘆くわよ!!」


「フン!! 家なんぞもう帰らないし!! 欲しいなら家も家名も、お前にくれてやる!!」


「お義姉様!!」


 アンローズの表情が急に柔らかくなり、マーク・エロイーズに抱き付いていった。

 エロイーズは、義妹の思いがけない行動にビックリしている。


 早く、エラドーラに出発したいんだけどな~~

 なんか、仲の悪かった姉妹が仲直りしてしまった感があるよな~~






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る