第23話  聖女二人!?

「アン・ローズ・リッヒ……?」


 僕は、彼女の顔をジッと見た。

 確かに、エロイーズとよく似た顔だ。薄い茶色の緩いウエーブのかかった髪だけが違っていた。

 でも、エロイーズの方が気品があって、令嬢という感じだ。

 今のマーク・エロイーズでもそう思うんだから、アン・ローズが如何に庶民的な感じなのが分かる。


「オッド殿!! 光の聖霊グレシャスが宿る娘が、見つかったのですか?」


「アルゴット!! お前は今まで何処に行っておったのだ?」


「もちろん、光の聖霊グレシャスを持っってるかもしれない、銀髪のエロイーズを追って、あちこちと……」


「風の精霊の噂が届いてるぞ。お前たちのいかがわしい関係もな!!」


「それは……でも、僕の夢では、銀髪の聖女が奇跡の力を使っていました」


「そうなのか? こちらは、私を含む三人が『グレシャス』の力を感じ取っている令嬢だ」


「!!」


 僕は、アン・ローズ嬢をジッと見た。

 アン・ローズ嬢はバツの悪そうな顔をしている。


 ――――彼女からは、大地の波動しか感じられない……


「僕へ、エラドーラ共和国大統領夫人からの依頼があったはずですよね?」


「そうだな」


 オッドは、思い出したように僕を見た。


「確か、大統領に暗殺すると言う予告状が 来たとかで、夫人が神殿に予見を求めて来たのだ」


「暗殺は有ります!!」


「おい!! ワシを含めて四人が暗殺は無いと出て、夫人には返事を出してしまったぞ」


「それ!! ヤバいですよ!! 武器は小銃ライフルです。僕は犯人の顔も見ました。では、あの大統領は、古悪党でも助けるべき人間なのですか!?」


「いや!! いや!! 神殿の権威をこれ以上落とさないためにも銀髪だろうと、茶髪だろうと、聖女が見つかってるなら、連れて行って銃撃事件を阻止してくれ」


 あの大統領の件は、聖女の力で助かってるから、他の予見者は、『暗殺はない』と結論づけたようだ。


 僕は、銀の森の外で待っているマーク・エロイーズのところへアン・ローズ嬢を連れて行ってみることにした。


「オッドさん!! すぐにエラドーラ共和国に行きます」


「イチャコラしてるんじゃないぞ!!」


 うぅ……なんで僕が怒られるんだろう……


「あたくしも行きます」


「へっ!!?」


 声を上げたのは、アン・ローズだった。


「アルゴットさん、姉とご一緒なのでしょう? 姉は、何故だか光の神殿を嫌って、森の入り口のところにいるのですね」


「は、はぁ」


「ぜひ、いっしょにお連れください」


 と、笑った顔は、どう見ても清楚なエロイーズではなく、マーク・エロイーズに似ててちょっとゾッとした僕である。

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