第22話 もう一人の聖女?
僕がマーク・エロイーズの中に熱いものを放った後、彼女は失神していた。幸せそうな顔で、あられもない姿で。
僕は半透明の風の精霊、大将を見上げる。
「本当に、外からは見えてないんですよね?」
<見えて困るのは、お前だろう? 将来の三賢人候補なのだろう?>
「どうでも良いです、そんなの。とにかく、エロイーズのことを神殿に報告してきます。こそれから、ここから離れないで下さい。僕の力を持ってすれば、何処へ逃げても簡単に見つけますけど、面倒ですから」
<俺は、契約者に従うだけだが。お前たちがもう、離れられない身体になっているんじゃないのか?>
風の大将が歯を見せて笑っているような気がした。
――そうかも…………
僕は、衣服を整えて風の絨毯から飛び降りた。
久しぶりの銀の森だ。
エロイーズの出奔で、ここを出て以来なんやかんやで、ひと月は経っている。五歳の時に銀の森に来て以来、こんなに長く森の外にいるのは、初めてのことだ。予知夢もあんまり見ていないし。ぐっすり眠れるから、身体も軽くなった感じだ。
光の神殿に戻ると、騒がしかった。
リサルディがいたので、声をかけてみた。
「リサ、何か騒がしいね? 何があったの?」
「アル!? 今までどこに行ってたのよ!! あんたまで神殿から逃亡したって、『追い風の騎士』の出番だって言われてるのよ」
「『追い風の騎士』……逃亡犯を追いかける専門職の!! 僕は何も悪いことはしてないぞ!? エロイーズを捜しに行っただけだ」
「だからって、予見師のあなたがひと月以上も彼女を見つけられないなんてあり得ないでしょう。それに彼女は、もう用済みよ。光の
何だって!!??
それは有り得ない!! 聖女は 、エロイーズのはずだ。
僕の予知夢で出てきた聖女は、銀髪だった。
エロイーズは、銀髪で変な力を連発して、ビールまで自作してる。
そこに、予見師筆頭のオッドが僕たちのいる方にやって来た。
「間違えなく、君には光の
「本当ですか!?」
少女は、ぱあっと光の如く微笑んだ。
僕は、オッドの後ろを歩いてくる女の子を見て驚いた。
顔が、エロイーズにそっくりな女の子なんだ。
髪の色だけが違う。薄い茶色の髪色で少しうねっていた。
「彼女は ?」
僕は、オッドの後ろを歩いていく令嬢のことをリサルディに聞いた。
リサルディは、興味津々の様子で僕の耳に口をくっ付けてきた。
「アン・ローズ・リッヒ。エロイーズ嬢の異母妹ですって」
なんてこった~~!!
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