第17話  エロイーズの出した条件

 僕が、水浴びを終えて、着替えてると後ろから人の気配がした。

 エロイーズだった。


「アルゴッドさん……わたくし、また……」


 顔を赤らめて言うエロイーズは、清楚感が漂う僕の好きな彼女だ。


「アルで良いですよ。みんなそう呼びます」


 僕は、ニッコリと答える。


「汗をかいたので水浴びをしに来たのでしょう?」


 エロイーズは頷いた。


「僕は、もう終わりましたので……お使いください。終わったら、銀の森へ帰りますよ」


 彼女はピクンとした。


「ムネヒラは何処です? あれはわたくしの刀ですわ」


 あれ? 記憶がある……?


「エロイーズ? 君、記憶が残ってるの?」


「はい……かすかながら思い出しています」


 エロイーズは、ニヤリと笑った。この時点で僕は気付かねばいけなかった。

 既に、エロイーズの人格ではないことに。


「これからは、マークって呼べよな」


「!!」


 僕は、穿きかけていたズボンを落としてしまった。


 清楚なエロイーズは、何処に消えたんだ~~!!


 待ってましたとばかりに、僕の下着をずり下げるエロイーズ。


「君、こんなところで!!」


「大丈夫、大丈夫!! 水浴び場を覗かれたら、わたくし恥ずかしくてお嫁に行けませんわって、おまえのじいさんの前で泣き真似しといたから」


「ベッドも良いけど、水の中でやるのも良くねぇか?」


「オアシスの水は、貴重なんだよ。汚すんじゃありません!!」


 僕は、思い切り抵抗した。

 じい様に怒られたばかりだし!!


「ちっ!! そういや……昔オアシスで火事を出して誰かに怒られた記憶が……?」


 エロイーズは、首を傾げながら考え込んでいた。

 しかし、首を振り「分かんねぇな」とぼそりと言った。


「とにかく僕は、銀の森にあなたを連れ戻す義務があって、あなたには、聖女かどうかの分かるまで、そこにいてもらわないと困るんですよ」


エロイーズは、大きく息を付いて僕を見た。


「いくつか条件をつけるぞ」


「何をです?」


「これからは、俺のことをエロイーズと呼ぶな!! なんか、エロい名前で嫌いだ!!」


 君がそれを言う?


「それから、聖女じゃないことが確定したら、自由にさせてもらうぜ」


 銀髪の聖女は、君だと思うよ。


「それから、ムネヒラも返してもらうぜ」


「言っておくけど、今の時代、持って歩いてるだけで罪になるよ?」


「なんでだ?」


「悪い奴しか、そんなものを持たないからさ」


「悪い奴……」


 エロイーズは、そう呟くと水の中へ入っていき、水面に自分の身体を映したのだった。

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