第18話  マークの正体

「この姿はリム……? お前は……」


 エロイーズは、僕の顔をジッと見た。


「たくと……」


「……? 誰です」


エロイーズは、しばらく僕を見つめていたが首を振った。


「いや、あいつは黒髪ののっぺり顔だったはずだ……なんでお前を見て思ったんだか……」


 彼女は、頭上の風の大将を見上げる。


「お前は、立派になったな……俺は……俺が……聖女だなんてあり得ないんじゃないのか?」


<その通り。お前は己の人生を恨んで闇落ちして魔王となった。だが……>


 闇墜ち? 魔王!?


「何を言ってるのですか? あなたは聖女候補のリッヒ家の令嬢ですよ」


<お前の魂の再生に千年もかかったのは、神剣に心臓を貫かれてちりとなったからだ。神はその塵を浄化までしている。お前の魂は、すでに闇に屈することは無い。お前は許されて現世に生まれてきたのだ>


 当時を知る風の大将が、マークであるエロイーズに語りかけた。


「銀のあそこに行けばはまだ神殿そこにいるのか?」


 エロイーズは僕に向かって言った。


「あいつって?」


「銀髪銀目の長髪の変態神だよ。あいつ、リムとエッチしてやがった」


「リムって?」


「この髪が金髪なら、リムに似てると思うぜ。えっと、リムは俺の……? 何だっけ? 女房じゃなくて……娘? でもない」


<一度塵になって、焼かれてるからな。魂の再生にも時間がかかってるから、記憶がバグってるんだろう>


 大将の見解だ。


 マーク・エロイーズは、全体的にぼやけた思い出し方をしていた。


 ただ清楚なエロイーズは、完全になりを潜めてしまった。


 僕はがっかりだ。


「大将、俺をリリエンハイム公国へ連れて行ってくれ」


<承知>


 エロイーズは、ジャンプして風の絨毯に飛び乗る。


「お前も来い!!」


 手を差し出される僕。僕は複雑な気持ちだったけど、マーク・エロイーズも、彼女の一部であることには変わりない。


「行くよ。でも、約束して。銀の森にも行くって。僕には僕の仕事があって、報告の義務があるんだ」


「ふ~~ん」


 そう言って、マーク・エロイーズは鼻をポリポリと掻く。


 ジェダイン・オアシスを出て、南東に向かうと小国リリエンハイム公国がある。大昔、幾度となく魔族に蹂躙されてきた国だ。


「大将、ランス村は何処だ?」


<自分で魔族に襲わせて、全滅させたのに、それも忘れたか……>


 風の大将は、呆れていた。


「俺は確かに勇者だったはずなのに、なんで魔王になったんだ?」


<不死の魔王を討伐したら、自分が不死になってしまったのだ。生きることに絶望したお前は、自暴自棄になったのだ>


 さすがに風の大将は、昔のマークのことを良く知っている。

 勇者の精霊だったというのも頷ける。





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