第11話  我に返るエロイーズ

「「きゃーー!!!!」」


 彼女の叫び声で僕は目を覚ました。

 マークに口移しで強い酒を飲まされて、ひどい頭痛がした。


「なに?」


 起きると、身体を毛布で隠し、こっちを怒りながら睨んでハラハラと泣いているエロイーズの姿があった。


「酷いですわ、アルゴッドさん。こんな所に連れ出して、無体なことをするなんて……」


「え、えっと……無理かもしれないけど落ち着いて僕の話を聞いて!!」


「言い逃れをするのですか!!」


エロイーズは、今まで僕に向けたことのない敵意を剥き出しにして怒っている。

この状況では無理もないが……

僕は、覚悟を決めて言った。


「どう言ったら良いか、分からないのは僕もなんだ……。まず、君の頭上を見ようか」


 エロイーズは、頭を上に向け、そこに見たこともない半透明の存在を知る。

 風の大将は、エロイーズに手を振った。


<あんたが、本物のエロイーズさんね。マークと大違いだ>


 精霊の大将が喋ったことでエロイーズはドキリとした。


「マークとは誰です?」


「前世の君らしいです。曖昧な記憶ですけど冒険者で、魔法使いでもあったみたいです。風の大将は彼の契約精霊なんです。最高位の精霊だった風の奥方が、消滅した今、千年昔以上生きてる精霊は、かなり高位の精霊だと思うんです。

その風の大将が、君の名前を言っただけで契約してくれました。君は、魔法使いとしても才能があるようですね」


 僕の言葉に、取り敢えずエロイーズは黙って耳を傾けてくれた。


「魔法使いの一族ですから……納得できますわ。でもどうして、わたくしがここにいるのでしょうか? そしてあなたとあのような関係になったのです?」


「あなたが銀の森に来た事で、前世の記憶が蘇ってしまったみたいです。大将との契約もその時に……。今回は、マークが銀の森を嫌がって逃亡したのです。後のあれこれは、マークが……」


馬鹿か? 僕。これでは全ての責任をマークというエロイーズが自覚しない人格に全部責任を擦り付けてるだけだぞ!!

エロイーズは信じるんだろうか?


「あっ!! でも、お酒を召し上がった時だけだけです。君はとってもお酒に弱いんですね。酔うと前世の人格のマークが出てくるんですよ。

 マークはあなたと違って、酒好き、色ごと好き半端ありません」


 エロイーズは、僕の表情を読み取ってくれたのか、それ以上僕を責めてくることは無かった。安心したよ。


「ご迷惑をかけていましたのね……すみません……」


 う~~ん僕の好きな俯き加減の仕草だ……可愛い……可愛い……


「これに懲りたら、お酒は飲んだら駄目ですよ」


「そう致しますわ」


 僕たちは、サントスの神殿の魔法陣から、銀の森の光の神殿に帰ることにした。


 ――ところが事件は起こった。

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