第7話 僕の仕事
ああ……いつもの俯瞰した感覚だ。
夢の世界だ。僕は自分の夢の世界で、いつも空中にいた。
そして、意識を集中するんだ。
この時は、秋の長雨による農民の嘆き声が聞こえてきた。
この景色は、リリエンハイム公国の郊外だ。秋に長雨が続いて不作が予想される。雨に強い作物に切り替えてもらおう。
すると、女の人の思い切りいきむ声と、赤ん坊の泣き声が……。
これ溜まっていた仕事にあったね。
大陸の中央部の小国、ロサ王国の王妃の生む子が男のか? 女の子か? って。うん、男だ。ちゃんと確認したよ。
後は、自分の身体に戻って、眠ろう……。ZZZZ……。
久しぶりに僕は、自分のベッドで起きたよ。
こんなに気持ちの良い朝は久しぶりだ。
「おはよ!! アル。良く眠ってたよ。仕事は出来た?」
「うん、リサ。溜まってた三件の内二件はバッチリだよ」
「ロサ王国の件は?」
「賢人様の前で報告するよ」
僕が内緒にしたことで、リサルディは頬を膨らませている。
請け負っている仕事は、光の神殿でも一握りしか知らないことだ。
如何に、リサルディが優秀な巫女でも、ホイホイと僕の予知夢の内容を言う訳にはいかない。
やがて、僕が目覚めたことを皆が知ると、三賢人の部屋に主だった予見者と高位の
そこで僕は、鼻高々と仕事の成果を発表しようと思っていたら、三賢人筆頭のギイラス様に怒鳴られてしまった。
「「馬鹿もーーん!! 聖女様の可能性のあるエロイーズ様と夜中に何をしておった!! エロイーズ様は、破れた寝間着も土まみれになったことも覚えがないとおっしゃって泣いておられるのだぞ!! 三日前にお前たちは何をしておったのだ!!?」」
色白の人だから、怒ってると赤くなってくるんだよ。
それはそれで面白いんだけど、僕だって迷ってしまうな。
あの夜に何があったかなんて……。報告の義務はあるのだろうか?
取り合えず今、僕に課せられた仕事をしよう。
だから、僕も知らないフリをして首を振った。
「それよりも、ギイラス様。久しぶりに眠れたので、予知夢が見れました。ギイラス様。リリエンハイムの北は、この秋、長雨に悩まされるでしょう。ロサ王国の妃の生む子は男の子です」
言いかけたギイラス様も、僕の言葉に他の予見者たちを見た。
ロサ王国の王子誕生を予見していたのは、一人だけだったのだ。
だからこそ、僕の予知夢の確定が求められていた。
水占のカザリーンがホッとした表情を見せていた。
そう、今は光の神殿の予見師だってこんなもの。
昔みたいに、自信を持って100%の予見なんて出来る者はいない。
……僕のようにはね……
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