タイムトリガー

あつかち

第1話

たん・・・たん・・・たん・・・


夜遅くに、ただ一人の足音だけがあたりに小さく聞こえる。


「・・・さて、そろそろやるか」


男は、ポケットから二丁の拳銃を取り出した。しかし、見るからに普通の拳銃ではなかった。どことなく、近未来感のある拳銃だ。


男は右手に持つ拳銃の銃口を、左手に持つ拳銃にあてた。そして・・・


バーン!


右手に持つ拳銃を発砲した。大きな銃声が響き渡った。










カーンコーンキーンコーン


授業終わりの合図を知らせるチャイムが鳴り、それと同時にみんなが席を立った。

正直、みんな学校の授業なんかには興味がない。なんとなく高校に入ったし、別に勉強する気がないのは当たり前と言えば当たり前か。だから、休み時間は生徒にとってはただの自由時間ではないのかもしれない。もちろんそれは、俺も例外ではない。


俺は、タブレットPCの電源を入れた。


「おーい、冠木!」


すると、いきなり後ろから誰かが名前を呼びながら突撃してきた。

少しだけ感じた首の痛みを耐えながら後ろを向いた。


「ああ、なんだ菊池か」


「そろそろボスの降臨時間だぞ。早くアプリ開け!」


「まじ?ちょっと待ってて」


俺は急いでパソコンを閉じ、スマホをポッケから取り出した。


「あれ?二人とも何してんの?」


するとまたもや誰かが声をかけてきた。


「あ、安室に竹中、天野。ちょうどいい。そろそろボスの降臨時間だから一緒にやろうぜ」


すると、三人は首を傾げた。そして、天野が口を開いた。


「ボスって、この前発表された?」


「うん。そうだけど・・・」


「そいつ、降臨明日だよ」


『へ?』


俺は、ゲームアプリの降臨スケジュールを見た。確かに明日降臨だ。


「・・・菊池君?」


「・・・ごめん」


「ま、せっかくだしなんか別のボス倒そうぜ」


「了解。じゃあルーム開いとくね」


「あ、わりちょっと俺お手洗い行ってくる」


「分かった。先始めてるね」


そうして俺は教室を出た。


小、中とそれなりに仲の良い友達はいたが、所詮学校だけの話だった。学校外では会わなかったし、クラスが変わったり卒業したらまったくしゃべらなくなってしまった。だからちゃんとした友情に憧れがあった。

しかし、あいつらとは学校外でもあって一緒に遊んだりする。正直、高校に行ってる理由の大半はこいつらに会うためでもある。


そんなことを考えながら俺はお手洗いの前についたしかし、何やら張り紙がしてある。


「えーとなになに・・・」


点検中により使用禁止 下の階のをご利用ください


「・・・くそが!」


そうして俺は仕方なく下の階に行った。


ガコン、ジャー


「あーすっきりした・・・あ、てかそろそろ次の授業始まんないか?やべぇ急がないと」


俺は急いで教室に戻った。しかし不思議なこともあるもんだな。途中誰とも会わなかった。授業が始まる寸前とは言え廊下に誰かしら人がいるはずだ。しかし、人ひとり見当たらない。俺はおかしいと思い、途中こっそりと他学年の教室をのぞいた。やっぱり誰もいない。


まずい


特にそう思った理由なんてない。ただ直感的にそう思った。


急ごう


俺が走り出そうとした時だった。


「あ、冠木、無事だったのか」


担任の先生が俺を見つけるなりそう言って駆け寄ってきた。


「よかった。冠木だけでも無事でいてくれて…」


「え?ちょっと待ってください。俺だけでもってなんなんですか?ていうかさっきから誰とも会わなかったんですけど何かあったんですか?」


すると、先生は少しの間黙って、こういった。


「今からいうことは、多分冠木にとってはかなりきついことになると思う。覚悟して聞いてくれ」


先生の顔が今までに見たことのないくらい深刻になった。


「はい。なんですか?」


「俺の担当のクラス、2-5のみんなが、冠木を除いて、爆発に巻き込まれた」


・・・え?



詳しいことは、避難した先で先生から聞いた。誰かが学校に入ってきて、2-5にだけ爆弾を投げ入れたらしい。授業が始まる直前だったので全員教室内にいたらしい。爆破を受けたみんなは全滅はしなかったらしいけど、全員気を失ってて、命の危機にあるやつもいる、少なくとも後遺症は残るらしい。


せっかく、みんなと仲良くなれたのに


もうこの学校にはみんなはいない。俺の心を壊すにはそれだけで十分だった。何も考えられない。考えたくない。歩くという行為ですらだるい。呼吸すらやめてしまいたい。


そうして俺は自分のげた箱を開けた。靴を取り出そうと手を入れると、何か入れた覚えのないものが入っていた。

取り出してみるとそれは拳銃だった。しかし、テレビで見るような拳銃とは何かが違う。どことなく近未来感を感じる。拳銃のハンマー、とかいうんだったか。シリンダーを回すためのレバーがない。


拳銃、か。


これで人撃ったら即死だろうな。最強と謳われた格闘選手も、悪魔と言われるような兵士も、そして、俺も。


もう、正直どうでもいい。


世間一般的にはこれを一時的な感情に溺れたとでもいうのかな?まぁ、それでもいいや


俺は銃口を自分のこめかみに当てた。そして、ゆっくりと引き金を引いた


パーン







ジリリリリ…


俺は、いやというほどこれまで聞いてきた目覚まし時計の音で目が覚めた。


俺は急いで今日の日付を見た。間違いない。俺が頭をぶち抜いた日だ。

あの悲劇は夢だったのだろうか?そう思うと少しだけ安心した。それにしても妙にリアルな夢だった。夢の中のはずなのに拳銃で撃ったところが痛い。


「忠臣~。そろそろご飯よ~」


母さんがキッチンから呼んでいる。俺は、急いで母さんのところに向かった。




「ご馳走様でしたー。行ってきまーす」


飯を食い終わるなり、俺は家を出た。


正直もっと早起きすれば余裕出来るんだろうなって思うが、これ以上朝早く起きることが俺にはできない。


ガチャ


俺が家の扉を開け、外に出て数歩歩いた時だった。


「ん?なんだこれ?」


道の端っこに何かが落ちている。拾ってみると、それは拳銃だった。


「マジか日本で拳銃か…警察に届けるか…」


そう思って、近くの交番まで行こうとした時だった。


「なんだろう、見覚えがある」


そりゃ拳銃自体はテレビとかでよく見るから見覚え自体はあるかもしれない。でも、これに関してはテレビで見たとかではない。実物を見たことがある。


その途端、俺は夢のことを思い出した。夢で見た拳銃と同じだ。


あれ、もしかしてい夢じゃなかったのか?


そうすれば頭の痛みも理由が付く。


「これ、タイムリープってやつか」


創作物ではおなじみのアレだ。正直そんな非現実的なことが起きてることには驚いている。けど、何でかわからないが思ったより冷静だ。


これがあればみんなを救える。


俺は、ポケットに銃をしまった。




カーンコーンキーンコーン


授業終了を知らせるチャイムが鳴り響いた。この休み時間で、爆弾ぶち込んだ奴はやってくるはずだ。

俺は急いで校門近くに行き、草むらに隠れた。そもそもあいつがどっからやってくるかなんてわからない。けれど、この学校の塀はそれなりに高いし、有刺鉄線もついている。だとしたら常に空いている校門から入ってくると考えた方がいいだろう。


「それにしても虫多いな。もう夏も終わりかけだっていうのに…」


虫の羽音と蚊に刺されに耐えること数分。


とん、とん、とん・・・


何者かが足音を立てながら入ってきた。顔は帽子を深くかぶっていて見えないが、全身黒色のTHE・やばい奴といった感じだ。


「ここか。探すの大変だったんだぞ」


そんなことを言いながら奴は校舎に入っていった。


「絶対あいつだな…」


そう思いながら俺はポッケから銃を取り出して奴に近づいた。


「ちょっと無理やりだけど、戻れるしいいや」


俺は奴の目の前に出て、帽子をはぎ取った。


「あーなるほどこんな顔か」


「あ?お前なんだ…っ、向こうから来てくれたか」


「あ、やべ」


俺は速攻銃で自分を撃ちぬいた。







ジリリ…



俺は目覚ましの音で目覚めた。


「よし、ちゃんと戻れたな」


俺はまた朝飯を食べて、家を出た。そしていつもの場所に例の銃はあった。


「それにしても、あいつ、なんだろ見覚えあるな…」


元々人とのかかわりはそんなにない。なので知ってる顔と言えば家族とクラスメートぐらいのはずだが、そのどれでもない。けど見覚えのある顔。


「ちょっと調べるか」


俺は学校の方向ではなく、図書館の方向に足を運んだ。


「あー、これ絶対学校遅刻だな。まぁいいや」



そうして俺が調べようとすると…


「あれ?忠臣か?」


なんか聞き覚えのある声が聞こえてきた。振り返ってみると…


親父がいた。最悪だ。どうしよう。


「忠臣、学校はどうしたんだ?」


しょうがない。一か八かだ。


「ボク、タダオミジャナイデス」


「え?本当ですか?」


「ハイ。ボク、アタリッテイイマス」


「そ、そうですか。すいません人違いでした」


そう言って親父はどっかに行った。


「なんで裏声で押し通せるんだよ親父の耳どうなっとんねん」


何はともあれ、なんとか危機は過ぎ去った。


俺は図書館で過去の新聞をあさっていた。正直知り合いじゃなかったらこういうのに出てる人だろうしな。

しかし、いつ見たことがあるのかがわからないから、俺が生まれてから今までの新聞を片っ端から見ないといけない。これ、一日で終わるのかという不安も残るが今はやるしかない。


そうして何分経っただろうか。もう数えるのですら途中でやめた。正直、見覚えは俺の勘違いじゃなかったかと思ったその時だった。


「…あ、あった」


その新聞の記事はこんな感じだった。


2016年7月63日、○○県△△市にて銀行強盗、地元の小学生が捕獲。


ああ、これか。そりゃ見覚えあるわけだ。下手な凶悪犯よりも見覚えある。

だって、この地元の小学生俺なんだもん




八年前



「じゃあお母さん、行ってきまーす!」


「行ってらっしゃい」


そう言って俺は外に出た。


「いやまさか算数の宿題と間違えてウサギの餌持ち帰るとは…うさちゃんお腹すかしちゃってるだろうし僕も宿題しないといけないし学校行かないと…」


俺は急いで学校まで行った。

そして曲がり角を曲がった時だった。


ごーん!



誰かにぶつかった。これが朝の登校中とかならラブストーリーが始まるかもしれないがあいにく放課後。いや、これが仮に朝だとしても現実ではそんな都合よくラブストーリーは始まらない。


「あ、ごめんなさい…」


俺はとっさにあやまった。しかし男はすぐに立ち上がりどっかに行こうとした。そしたら…


つるっ


俺が落としたうさちゃんの餌を踏んで転んだ。そして、頭からウサギの餌をかぶってしまい、見るも無惨な姿になっていた。


「うわ、なんだこのにおい。くさっ」


「あ、たぶんうさちゃんの糞」


「え?」


「本当はうさちゃんの小屋に保管してあるんだけど、うさちゃん運動神経いいから自分で餌とっちゃって、時々袋の中でふんしちゃうときがあるから…」


「ぐうぇ」


男はそれを聞いた途端気を失ってしまった。


「おいまて!」


すると、警察二人が走ってこっちまでやってきた。

そして倒れてるやつを見るなり。


「もしかしてだけど、これ、君がやったの?」


「はい、まぁ、そうです」


「まじか…うわくさっ。先輩、これすげー臭いっすよ」


「本当か?どれどれ…うわ本当にくさい。フンみたいなにおいするな」


「それうさちゃんの糞の匂いだと思います」


「え?」


「なんか、犯人に同情しちゃいますね」


「少しだけわかるぞ」




というわけで不覚にも捕まえた?わけだ。小学生の時の記憶なので、顔ははっきりと覚えてなかったが完全に思い出した。


そういうことか…


「用は自分で蒔いた種ってことか…」


俺は新聞を片付けて、図書館を出た。


前俺が捕まえたとき、近所であったことを考えると最寄駅は一緒かもしれない。

俺は最寄りの駅で奴を待った。


俺が駅で待つこと一時間


「今日であの日の恨みを晴らせる…」


例の奴が駅にやってきた。奴が改札を通ろうとしたとき。


「ああ、ほんとだよ」


そう奴に声をかけた。


「…お前、そっちから来てくれるんならありがたい」


「ここだといろいろと面倒だ。こっち来い」


そう言って俺と奴は近くの人通りの少ない公園にまで来た。


「それで、わざわざやってきたってことは俺の目的はわかってんだな」


「ああ。八年前の逆恨みはらしにきたんだろ?」


「逆恨み?まぁそうとも言うかもな。けど、あんなよくわからん捕まり方をしたのが嫌でな」


「うさぎの糞で気失って逮捕がか?」


「黙れ」


多分逆鱗に触れたんだろう。ナイフ取り出してきやがった。


「そっちから話振ってきたのに逆ギレか?まぁいいや。生憎頭ぶち抜く程度の覚悟はすでにあるんでね」


すでにあるっていうか、すでにぶち抜いてるが


俺は、いつあいつが来てもいいように構えた。


「いくぞ」


そう言って奴は突撃してきた。


「わざわざいくぞって教えてくれる親切なタイプだとわな。少し驚いたよ」


最初こそは互角だった。しかし、結局のところただの高校生だ。成人男性とは力の差が大きい。


「あーあ、やっぱ厳しいか。俺なんかスポーツやってるわけじゃないし」


「残念だったな」


「しょうがない。これ使うか」


そう言って俺はポッケから爆弾を取り出した。


「その爆弾…」


男は自分の鞄の中を漁ってる。


「こっそり鞄の中から盗んでおいた。盆半管理もう少しちゃんとしとくんだったな」


俺は爆弾とともに取っておいたライターで爆弾に火をつけ、そのまま奴に突撃した。


「これで、死ぬのも最後だ」


バーン!





「冠木がいなくなって、もう一か月か…」


放課後電気のついていない、夕日が差し込む教室に、菊池、天野、安室、竹中の四人がお通夜のようなテンションで座っていた。


「もうそんなにたったの?」


「一か月ってあっという間だからな」


もう一か月もたっているというのに、誰も冠木が死んだことを振り切れていない。


「ずっとこんな空気のもあれだし、そろそろ切り替えよ?」


「それもう毎日言ってるよ」


沈黙の時間が定期的に流れる。人が一人いない。ただそれだけでこんなんになるなんて…


「あれ?みんなまだいたんだ」


担任が教室に入ってきた。


「なんか、完全にお通夜みたいだな」


「はい、まぁ…」


「でも、それはこっちも一緒かな」


「先生もですか」


「一応、担任だしな」


すると、誰かが勢い良く扉を開けた。


「おい君たち!最終下校時間だ!さっさと帰りたまえ!」


「あ、猪頭先生」


体育教師の猪頭いつも元気で、水泳の時間に笑いながら溺れて笑いながら救急搬送さて笑いながら入院したことがあるという変人だ。


「おや?君たち、元気がないな!?そんな時はプロテインを飲め!これ飲んでいいぞ!」


「いやいらないです」


「遠慮はいらない!さぁ飲め!」


「いやいらないです帰ります」


そういって俺たちは猪頭先生を押しのけて学校を出た。


「なぁ、今日でちょうど一ヶ月だし、冠木の家行って手合わせない?」


「だな」


「いくか」


そうして三人で行くことになった。


「このへんか。あいつの家」


「ちょっと遠かったな」


「電車で十駅だからな。でもその分、駅から家は近かったな」


そうしてもう家が見えてきた時だった。


「ん?なんだこれ?」


天野が道の端に何かが落ちてるのを見つけ拾った。


「え?銃?」


「よしサツ行くぞ」


「ポリ公待ってろ!」


「カチコミだおりゃぁ!」


なぜか勝手に血の気が上がっている。すると


「あ、お前たち、なんでここに?」


どことなく聞いたことのある声が聞こえてきた。振り返ってみると…


「武藤!」


武藤がいた。


「お前、今日部活じゃなかったか?」


「ああ、あれは嘘だ」


「え?なんでそんなウソを?」


「ちとその銃について色々とあってな」


「お前もサツに殴り込み行くんか?」


「なんで拳銃届けることを殴り込みって言ってんだこいつら」


「で、この銃が何なの?」


「ああ、ちょっとその銃で冠木助けてこようかなと」


『は?』


思わず全員が声出てしまった。


「おい、どういうことだ?」


「その銃は、過去に戻れるんだ」


「おいおい武藤、とうとう頭いかれたか?」


「おい菊池、こいつ元からいかれてんだろ」


「シバくぞお前ら」


『すいません』


「でも、本当にそれで過去に戻れるのか?」


「ああ、正確には、冠木の死んだ日の朝。いや、多分元々は、俺たちが死んだ日の朝だな」


「え?俺たちが?…」


「ああ。俺たちの記憶だと冠木が死んだ日は、元々は冠木とともに遺体が見つかったやつが2-5を殺した日なんだ。けれど冠木は運良く生き延びて、この銃で俺たちの生き残る道、つまりは冠木と奴が共倒れになる道を作り出したというわけだ」


すると、みんなが黙りだした。あいつは一人で無理をしていた。自分たちを守るために。そういう考えが脳内を駆け巡ってた。


「でも、なんで武藤はそのことを知ってんの?」


ふと、竹中が聞いた。


「俺も、冠木と一緒で、運良く生き延びた内の一人、そして、運よく冠木より先にこの銃を見つけたからだ」


「え?まじ?」


「ああ、冠木が死んだ日。いや、正しくはお前らが死んだ日にな」








さかのぼること、2-5全滅時のげた箱にて。


「それんしてもまじか。俺以外のやつのほとんどが爆発に巻き込まれたか…俺は運よく保健室で寝てたから助かったけど、みんな大丈夫かな?…いや、教室の中が跡形もなく吹き飛ぶほどの爆発だ。生き残るなんて無理だろうな」


「お前保健室でサボってただけだろ」


「おい石神。それを言うな」


「というかお前もサボってた側だろ」


「長瀬、お前もな」


俺は友達と校舎を歩いていた。三人そろってサボってたおかげで運よく爆発には巻き込まれなかったが、それでも身近な人が巻き込まれたので、みんないつもよりテンションが低い。

すると


「あ、お前たち」


目の前に竹刀を持った坂本先生がいた。


「げっ、坂本先生」


「やばいまたしごかれる」


「逃げろ」


そうしてみんなちりじりに逃げだした。


「はぁ、さすがの俺でも今日はあいつらを起こる気力すらないな…」



「あぶねぇ逃げ切れた…けどあいつらとはぐれちゃったな。まぁいいや。帰るか」


そうして俺はげた箱まで来た。


「そういえば、冠木も運よく被害を受けなかったとか先生言ってたな。あいつまだいるかな?」


そうして俺がまだ冠木がいるか確認しようと下駄箱を開けたとき。


「ん?なんだこれ?」


俺は下駄箱から例の銃を見つけた。


「あいつなんてもん学校に持ち込んでんだ?てかこれ本物か?」


そうして俺は手のひらに銃をぶち込んだ。






「てなわけで俺もループしたんだ」


「そういえば冠木の死んだ日、お前学校さぼってたな」


「あの日は朝からこっそり冠木について行ってたから」


「てかお前よく初見の銃手にぶち込もうとか思ったな」


「まぁな」


「こいついかれてんだろ」


「で、お前らはどうする?」


「どうするって?」


「俺と一緒に冠木助けに行くか、ここで冠木のいない世界を生きるか。冠木助けに行くんだとしたら結構危険だから強制はしな…」


「あーはいはいもういいよ。そんなもん分かってるわ」


竹中が武藤の話をさえぎっていった。



「これ自分にぶち込めばいいのか?」


「これ、全員過去に戻れるな」


「ああ、多分大丈夫だ」


「じゃあだれからいく?」


「ったく、いかれてるとか人に言えないぞお前ら」


そうして、五人は過去に戻った。










じりじりじり…


目覚まし時計の不快な音で竹中は目覚めた。銃で自分を撃ち抜いた記憶がはっきりとある。

夢じゃない

俺は急いで武藤に電話を掛けた。


「もしもし武藤か?」


「ああ、その焦った感じ。ちゃんと覚えてるみたいだね。さて、詳しい話は全員まとめてしておきたい。急いでさくら駅に来てくれ」


「冠木の最寄り駅か。わかった。他の奴らへの連絡頼めるか?」


「ああいいよ。じゃあ、気を付けて」


俺は電話が切れるなり、朝ごはんも食わずに急いで家を出た。


「おーい、竹中。こっちだ」


俺がさくら駅に着いた時には、全員がそろっていた。


「わるい。俺最後か」


「大丈夫だ。まだ冠木は来ないはずだ」


やっぱりすでに何回か過去に戻ってるからだろうか。武藤だけ落ち着きがある。


「じゃあ、あいついつくらいに来るんだ?」


「大体…九時くらいだっけな?」


え?九時?


「あれ?今何時だっけ?」


「七時」


「俺朝飯ぬいて急いできた意味よ」


「朝飯食ってないの?乙~w」


「お前俺の朝飯に調理してやろうか?」


「ま、まぁ、さっきパン買ってきたから食べていいよ」


「あー、ありがとう天野様~」






そして待つこと二時間


「そろそろ時間かな?」


「だな」


すると、遠くから冠木の姿が見えた。しかし、いつもの冠木とは違う。目に生気を感じられない。


「なんか、怖いなあいつ」


「あいつ何回も自分の頭撃ち抜いてるんだから壊れたんだろ」


「とりあえず行くぞ」


そうして俺たちは冠木の方に行った。


「おい、冠木」


武藤が後ろから冠木の肩をつかみながら言った。


「お前ら、なんでここに?」


冠木は驚いたような顔をしていった。


「過去からやってきた」


「方法はお前も分かるだろ」


「ああなるほど。お前らもぶち抜いたか。まじかよ」


「お前がやってることと同じだ」


「で?それで、大抵こういう時の流れってお前を止めに来たとかいうのがお決まりだが、お前らもそのタチか?」


「分かってるんなら話は早い」


「けどここはどこぞの厨二病の学生が作るようなありきたりな物語の世界線じゃないんだ。あきらめてくれ」


冠木は、そう言って先に進もうとした。


「まぁ、そりゃそうだろ。現実だし」


冠木が進もうとしてるところを菊池がふさいだ。


「マジレスは求めてないんよ」


「けどなお前、一人で何ができんだよ」


「最終的に相打ちで死ぬぞ?」


そういうと、冠木の動きが止まった。しかし


「相打ちならまだましか」


そう言って先に進もうとした。


「死ぬのは覚悟のうちか」


「そうじゃなきゃ何回も頭ぶち抜かないよ」


「まぁ、ごもっともだな」


「けど、覚悟の決める方向間違えてるだろ」


「あ?」


「お前が決める覚悟は相打ちになる覚悟ではなく、誰かに頼る覚悟だろ」


「ちょっとは人に頼ることを覚えろ」


「お前消えて悲しむやつここにいるんだから」


「尚武藤を除く」


「おい天野てめぇそれを言うな」


すると、冠木は少し微笑んだ。


「ったく、死んでも知らんぞ」


「元死人に言われたくないわ」


「よし、じゃあみんなで行くぞ」


そうしてみんなで奴を待つことにした。




「今日であの日の恨みを晴らせる…」


例のやつが駅にやってきた。奴が改札を通ろうとしたとき。


「ああ、ほんとだよ」


そう奴に声をかけた。


「…お前、そっちから来てくれるんならありがたい」


「ここだといろいろと面倒だしこっち来い」


そう言って俺と奴は近くの人通りの少ない公園にまで来た。


「よし、ズラかれ~」


公園についてすぐ、冠木はそう言いながら走って逃げて行った。


「は?あいつちょっと待て!」


「分かった向こうで待ってる」


「いやそうじゃなくて」


奴は冠木を追いかけた。


「お、冠木来たか」


「ああ、そろそろあいつも来る。ところで武藤、お前どうすんだ?」


「これであいつに痛い目見せてやる」


そう言って武藤は水鉄砲を取り出した。


「お前一回頭ぶち抜いただけでそこまでいかれたか?それ水鉄砲だぞ?」


「まぁ見てろって。後俺がぶち抜いたのは手首だ」


すると


「まてー!」


奴がやってきた。そして武藤が奴の顔面に


ぴゅっ


水鉄砲を飛ばした。水鉄砲ごときじゃどうもなんないと思った時だった。


「ぐっ、なんだこれ目に沁みる…」


奴が悲鳴を上げながらどっか行った。


「武藤、お前水鉄砲に何入れた?」


「デスソース水に溶かしたの」


「えぐいこと考えるな」





「ちょ、誰か水、水をくれ」


奴が情けない声を上げながら走ってる。いや、慌てながらうろうろしてるの方が正しいか。目が見えないからなのか、並行感覚がまるでない。


「はい水」


天野がそういってやかんを渡した。


「あ、ありがとう」


そう言って奴がやかんの中の水を被った。


やかんの中が水ではなく熱湯だと知らずに。


「ぎゃー熱いー!」


そう言いながら奴はまた走り出した。


「せっかく水水いうから用意してあげたのに…ブオッw」


天野は最後笑いにこらえきれなかったようだ。





「あー目が痛い熱い目が痛い熱い」


奴はさっきよりもくらくらしてる。


「なぁ竹中」


「どうした菊池」


「あいつまだ元気だよな」


「ああ、まだいけるな」


二人は顔を見合わせて少し笑った。


バサッ


二人は奴に何かをかけた。


「お、おい何だこれ?」


「ウサギの餌だ」


「お前、これトラウマもんだろ」


すると、奴はとうとう声も出なくなり、息を荒げて四つん這いに逃げて行った。


「冠木に聞いておいてよかった」


「てかお前よくウサギの餌見つけたな」


「ホームセンターとかに売ってるし場所によってはスーパーにもあるぞ」


「まじか」






「はぁ、はぁ、もう無理…」


奴はそのまま気を失って倒れてしまった。


「よし!次は俺のターン。さーて何してやろうかな…」


安室がウキウキで近づいた。しかし


「あれ?気絶中?なんだ俺だけ何もできないのかよ~」


「あれ?俺たちやりすぎちゃったか?」


「そうみたいだな」


「安室、わり」


「手足動けないように縛るのはやらせてよ」


「ああ、いいよ」


そう言いながら天野は縄を投げ渡した。


「それにしても少し楽しかったな」


「ああ、なんか少し馬鹿っぽかったけどな」


「ねぇ、みんな」


冠木が突然口を開いた。


「ん?どうした?」


「本当に、ありがとう」


「あーはいはい。そういう感動シーン的なのはいいから」


「え?」


「俺達もやってて楽しかったし」


「言ってしまえばただ自己防衛しただけだしな」


「でもまぁ、お前が生きててよかったよ」


「…そうか」


「あ、冠木。ちょっとポリ公呼んでくれない?」


「安室その言い方やめといたほうがいいぞ」


「あと警察はもうとっくに呼んどいた」


すると、パトカーのサイレンの音が近づいてきた。


「冠木、お前仕事できるタイプだな」


「まぁ、今回実は俺も安室と一緒で何もしてないし、それはちょっと申し訳ないし」


「そうかお前走って終わりか」


「あと申し訳ない発言は私に刺さるからやめてくれ」


そんなことを話してると


「通報したのは君たちかな?」


警察がこっちにやってきた。


「あ、はいそうです」


「そうか。おーい、こいつ運んどいてくれ」


「了解」


そう言って警察が二人で奴を運んでいった。


「なぁこいつ気失ってるけど何があったんだ?」


「さぁな。けどなんか臭くねぇかこいつ」


「そうだな。なんだろう?」




「で、君たち。詳しいこと聞かせてもらってもいいかな?」


「あ、はい」


その時


「ん?もしかしてキミ、冠木君?」


「え?あ!あの時の警官!」


「冠木、知り合いなのか?」


「先輩、誰ですかこいつ」


この警官の後輩とみんなが一斉に騒ぎ出した。


「俺が奴を小学生の時の捕まえた時にお世話になった警官だよ」


あの時の明らか新人の警官だ。今は出世したのか、それとも年を重ねて貫禄が出たのか、立派になっている。


「俺が初めて警官として仕事した時にお世話になった人だ」


警官も後輩に俺のことを説明してる。


「へぇ、こんな奇跡あるんですね…」


「それんしても大きくなったな」


「いえいえ。それほどでもないですよ」


「あの時小さかったのに、今ではこんなに大きくなって、いい友達もできて」


「はい。いい友達ですよ」


「そうか。じゃあ、今回のことのついでに、いろいろと聞かせてもらおうか」


「はい。お願いします」









「さてと、これで転送完了かな?」


その男は、さっきまで二丁銃を持っていた。しかし、撃ちぬいたほうの銃はなくなっている。


「どうだね。うまく行ったか?」


どこからか、白衣を着た人がやってきた。


「はい。これで大丈夫なはずです所長」


「そうか。ならよかった。これで過去の自分を救えたな。”冠木君”」


「はい。おかげさまで」


「それんしても最初は驚いたぞ。いきなりうちの研究所で働かせてくれというからなんだと思えば過去の自分を救いたいとかもう大混乱だったよ」


俺はあの後、時間についての専門的な授業をしている大学に進学し、卒業後は知り合いから紹介された研究所で働いている。


「その節はご迷惑をおかけしました」


「まぁ、でもよかったな」


「はい」


「そういえば冠木君。その銃、君が発明したから命名権は君にある。なんて何するんだ?」


「名前ですか。そうですね…」


すると冠木は少し考えたのち、紙に何かを書いた。


「これにします」


冠木はそう言いながら所長に紙を見せた。


「ほう、いい名前だ」


「はい。俺の友達を、そして俺自身を時間を超えて助けてくれた銃。その名も…」



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