第17話 イヌスケ追記

 イヌスケと遊ぶようになって気づいた事がある。

 イヌスケ以外にも透けている犬は複数いる。

 千華子さんの家に常在している透けた犬は基本一匹なのだが、偶に山から他の犬が遊びに来ているようだ。庭でイヌスケとは違う鳴き声を聞いたり、イヌスケの餌の減り非常に早いことがある。また、イヌスケと山に登って遊んでいたら、透明な何かがガサガサと駆け寄ってきたこともあった。近くの植物の揺れ方や、ふきゅんふきゅんと鼻を鳴らす音からしてそれも透明な犬なのだろう。

 しかし千華子さんの家では、いつも家にいるイヌスケと他の透けた犬を区別するつもりはないそうだ。

「透けた犬は皆イヌスケ。いつもより多くいるなと思ったらご飯を多めに盛ったりはするけれど、そんな程度よ。厳格に『これがイヌスケ』って決めるのも色々面倒だから。そもそも透明だから見た目で判別出来ないしね。」

 確かにそうだし、別に異論はない。でもね、千華子さん。偶に遊びに来るやつの中に「コーーン」って鳴くのがいるけど、そいつもイヌスケって呼ぶのはさすがに苦しいものはないかな。

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