第15話 カモシカ追記

 うわあああああああ千華子さんのうそつきいいいいいいいいいい!何が「カモシカは妖怪の類じゃないわ。ただのカモシカよ。」だよおおおおおお!

 おかしいとは思ってたんだよ!

 だってどんどん増えてくし!

 今朝なんか五頭もいたし!

 顔しか出してないし!

 ぴくりとも動かないし!

 目も虚ろだし!

 並ぶ間隔は異常に狭いし!

 カモシカ達は『縦方向に』垂直に並んでいるし!

  

 首しかなかった。

 

 首だけが、虚ろに落ち窪んだ目をした首が、茂みから生えて僕を見ていた。

 それに気付いて絶句した僕の目の前で、カモシカの首は茂みからボトボトと音を立てて窓を隔てた僕の目の前に落ちてきた。

 頼み込んで頼み込んで、今後は違う部屋に泊めて貰うようにした。狭い、窓も障子もない物置部屋で悪いんだけど、と千華子さんのおばあさんは申し訳なさそうにしていたけれど、全く構わない。

 当分カモシカの出た茂みに近寄ることも、見ることさえも出来なかったけれど、それ以来僕がカモシカの首を見ることはなかった。

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