第12話 カエルさん

 千華子さんの家には小さな池がある。そこで千華子さんのおじいさんが長靴を洗ったり、お母さんがガーデニングの為の水を汲んだりする。山からの水を溜めているその池には、カエル、ザリガニ、フナ、アメンボ等々小さな生き物達の生態系が出来上がっている。

 ある日、そこの池にアカガエルがいるのを見つけた。茶色の体と全体的に尖った印象のある体つき、アマガエルの二倍はある大きさ、間違いなくアカガエルだった。そしてそのアカガエルは、池の縁でも池の表層に顔出して浮かんでいるのでもない。池の底にいる。

 体を大の字に広げ、両足を底につけて二本足で立っていた。少し前方に傾いてはいるが、その姿勢は完璧に仁王立ちだった。

 千華子さんに池に来て貰い、あの蛙もカエル様のように特別な蛙なのかと訊いてみた。

「違うわよ、あれは普通の蛙。」

「水の中なんだから、浮力でああいう体勢になれるわよ。」

 千華子さんの家での出来事は、何が怪奇現象で何がそうでないのか、たまに区別が付かないときがある。

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