独の選択

『普通の子じゃないよね』よく言われる言葉だった。自分の中の価値観は思ったより他人とかけはなれているらしい。友達と一緒にいて感じる小さなずれや物事の考え方の違い。自分にはそれが酷く苦痛に感じた。

気づいたら自分は他人に自分という個性をさらけ出すことが出来なくなってしまっていた。何をするにも周りの目が気になり、落ち着ける場所と言えば一人きりの自分の部屋だけだった。自分はやはり『普通』から外れているのだ。周囲から感じる視線に耐えられるほど強い人間でもないのだ。と無意識的に心を閉ざしていた。

でも、そんな自分にも話しかけてくれる人がいた。他の人みたいに共感を無理強いすることも無く、一緒にいて何となく気持ちがいい。安心感があった。

この人になら秘密を打ち明けてもいいかも。直感的に思ったが、なかなか勇気は出ない。放課後、今日も言えなかったと後悔している時に

『言いたいことがあるなら言いなよ。我慢ばっかしてちゃいつか爆発しちゃうんだからさ。』

ふと声が聞こえた。あの子だった。何故か涙目になりながら必死に伝えてくれているような気がした。

そうか。他人に左右されないことは決して簡単な事じゃない。たとえ何も気にしない性格だったとしても。

自分が自分らしく居たいのなら、それなりの対価は必要なのだ。それなら正々堂々と臨もうではないか。




これは或る小説コンテストの原作として書いたものです。一応記録として載せておきます。

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