第三章 陽射しは眩しく天高く

第一話 弥生始動します

弥生始動します Vol1

 ふっふふんっふんふ~ん♪

 ふ~ふんっふんふ~ん♪


 アナタ ヘンナ ウタ ウタワナイ デ クレル カシラ。


 良いじゃない別にぃ。愉しいのだからあたしの勝手でしょ。


 アナタ ガ タノシクテモ アタシニワ メイワク ヨッ!


 我慢して頂戴ね。これがあたしなのだし解ってる事でしょ?


 アー トニカク ウカレスギテ アタシ ノ オシゴト ヲ フヤサナイデヨッ!


 はぁ~いっ。


 さっきからあたしが何をしてるか知りたいでしょ?

 知りたいわよねっ。でしょ? でしょっ?


 《ウッザイワァ コノ オンナ》


 あのね。あのねっ。聴いてくれるわよねっ?

 いまあたしは荷造り中なの。

 えっ? お引っ越し? 違うわよぉ。

 お引越しはもうちょっと先のお話しなんだからっ。

 この荷造りは明日の朝一番で師匠のお宅へ伺うからお着替えやお土産なんかをバックに詰めてるの。

 つまりそう云う事なのよ。


 ドーユー コト ナノヨ。

 ソコマデ イッタナラ サイゴ マデ オハナシナサイナ。


 だ・か・らっ。

 明日は三週間ぶりに紫音ちゃんと綾音ちゃんに逢えるのよ。

 待ちに待ったその日が来たのっ。

 良いでしょ? 羨ましいでしょ? ふふふ。


 チガウデショッ。

  ムコー デ コンゴ ノ コト ヲ オハナシスルノ!


 さっきからあたしはそう云ってるじゃない。


 イッテナイワヨッ! ヒトコト モ イッテナイ。


 あらっ、そうだったかしら? おかしいわねぇ。

 まぁ、良いじゃない。クーデレさんが説明してくれたのだから。

 細かい事は気にしたら負けよっ。


 《〇〇 ノ イウ トオリ ダワ。キニシタラ マケ ネ》


 彩華さんにご予定を確認する為に璃央さんとお話しした翌日、お昼休みを待ってコールしたら二つ返事で承諾して貰えたわ。

 なんと!『愉しみにしてるわね』って云って貰えて嬉しかったのよ。

 直接、師匠にもお話ししようと想ったのだけどお仕事中でお邪魔出来ないから、彩華さんが伝言して置いてくれるって仰るのでお願いしちゃったわ。

 なんせ師匠のスマホは『残念な不携帯』ですものねっ。

 アプリにメッセしても『既読スルーの伝言』だし。

 ほんとに師匠らしいわね。ふふふ。

 こんな感じであたしの予定はトントン拍子に決まって現在いまに至るの。


 さっきのクーデレさんに指摘された通りに、ちょっと浮かれてるけど嬉しいのだから仕方ないでしょ?

 在りがちな例えで云えば遠足の前日みたいな感じなのかな。

 あっ! そうだわ。遠足と云えばおやつのお菓子よね。

 買って来るのを忘れちゃったわ。どうしましょ……

 なぁ~んて事は云わないわよっ。ふふ。


 明日は新幹線を使って行くのだからきっとあっと云う間に着いてしまうわ。

 それでも新幹線の車内では待ち遠しくて永く感じてしまうと予想してるのだけど。

 ターミナル駅まで迎えに来て戴くのも申し訳ないから、新幹線からローカル線に乗り換えて最寄り駅まで行く予定。

 でもこれは伝えてなくて内緒にしてるわ。

 だって云ってしまったら水臭いって叱られてしまいそうだもの。


 あたしは『午前中には着きます』とだけお伝えして、向かう途中でおおよその到着時間をお知らせしますって云ったわ。

 彩華さんはあたしがこの前の帰る時と同様に、特急列車で行くものだと想ってるらしくてあたしにとっては嬉しい誤算かな?

 ターミナル駅から最寄り駅までの所要時間を直接確認して、それから連絡すればタイミング的に丁度良くなると思うわ。

 ローカル線だからターミナル駅の他にもう一度乗り換えが必要だけど一時間弱と云った所ね。

 祭日のダイヤだから乗り継ぎが巧く行くと良いのだけど……

 心配なのはそこだけだわ。


 明日は新幹線に乗る前に冷凍みかんも買おうかしらね。

 いくら新幹線の短い乗車時間でもそのくらい食べる時間なら在る筈。

 本当は駅弁で朝ご飯って考えたのだけど、お弁当を広げる時間は流石に無さそうだから断腸の思いで諦めたの。


 ソレモ ガットフィーリング カシラ?


 クーデレさんっ。それを蒸し返しちゃらめぇぇぇええっ!


 ナンデ? イゼン ワ アナタ ガ イイダシタコト ヨ。


 もしかしなくて『断腸の思い』が刺さったの?

 これは振りじゃないからぁぁ……

 それでまた小腸とかリアルな事を云い出すつもりなんでしょ?

 でも確か小腸には色々な用途が在って、ソーセージにも使うし古くは飛行船の材料にもなったそうよ。

 そんな経緯でドイツではソーセージが不足したとかしないとか?


 ソレ チガウ ワヨ。


 なにが違うのよ?


 ヒコーセン ノ ザイリョウ ワ ゴールドビータースキン。

 ツマリ ダイチョウ ノ ホーナノ。


 クーデレさん。ちょ~っと聞いても良いかな?


 アラ。ナァーニ?


 なんでそんな事を知ってるのよ。あたしだって知らない事なのに。


 ソンナノ ワ キマッテル ジャナイ。 ナイショヨ。

 ミステリアス デ イイショ? フフフ。


 ミステリアスを通り越して普通に怖いわよっ。

 もう本当に恐ろしくなって夜中にトイレにも行けなくなるから止めて頂戴よね。


 ソレナラ アタシ ガ ツキソッテ アゲテモ イイワヨ。


 付き添うもなにもあたしの中に居るのだからいつも一緒でしょ!


 ウイット ナ ジョーク ヨ。


 ごめんなさい。もうあたしの負けでいいです。


 アキラメタラ ソコデ シューリョーヨ?


 ――――あたしにどうしろと?

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