閑話 クーデレちゃんの内緒なお話し

クーデレちゃんの内緒なお話し

『先ずはご挨拶からね。厳密には違うけど、初めまして。で良いかしら?』


『そうだね。初めましてで良いと思うよ。そしてママを支えてくれてありがとう』


『あらっ。そこまで解ってるのね。確りしてるわ。貴男が〇〇なのは知ってるけど発音が出来ないからどうしましょ?』


『なんでも良いよ。呼び易いので構わないから』


『それじゃぁ貴男で良いわね? それで最初に聴きたいのだけど貴男のステージは?』


『ママより全然上だよ。これでもずっと研鑽を重ねて来たんだ。凄いでしょ? だからご褒美を貰えてやっとママに逢いに行って良いって云われたんだよ。へへへぇ』


『そう。おめでとうと云わせて貰うわ。それとあのを選んでくれてありがとう。でもアタシよりも上って事なのよね? どうしましょ――敬語にした方が良いのかしら?』


『いまのままの方が僕も気楽だからこのままが良いかな。それにママが脚を引っ張ってなければ僕と一緒のステージなんだから気にしないで良いと思うよ』


『やっぱりそうだったのね! 全く仕方のない娘ね。もうっ! あっ、ごめんなさい。口調の件は了解よ。それで貴男はあの娘とアタシがツインソウルなのも知ってるのよね?』


『勿論。でも解らない事がひとつ在るんだ。聞いて良いかな?』

 

『当然じゃない。何が聴きたいのかしら』


『うん。ツインソウルって本当は離れてる筈でしょ? それなのに何で一緒に居るの?』


『あぁ。そこまでは知らないのね。例外的にアタシ達が一緒なのはアタシがバニシングだからなの。でもこれを知ってるのは誰も居ないから内緒よ。特に貴男のママには絶対内緒なの』


『本当にバニシング・ツインって居るんだね! わぁ。知識として知ってるけどあまりにも少なくて、想像上の存在なのかもって思ってたから僕も初めて逢ったよ。内緒なら誰にも云わないけど、その代わりもうひとつ教えて貰いたいな』


『良いわよ。どうぞ』


『バニシングでも普通は一緒にならないよね? ツインズって何処かパスみたいなので繋がってるけどツインソウルとは違うでしょ? だから不思議なんだ』


『それはね、アタシ達が気の遠くなるくらい昔に引き裂かれたのが原因で、それ以来ずっと産まれる時代が違ってしまい巡り逢う事が無かったのよ。でも今生で一緒になれるチャンスが巡って来たの。でも運命の悪戯なのかしらね。アタシはバニシングになってしまった。未練なのかも知れないけどアタシがあの娘の内に留まる事を望んで例外的に認めて貰えたの。だから一緒に居られるけどその為には制約も在るわ』


『そうだったんだね。解かったよ。これで不思議な事は無くなったから僕は味方になるね。それと改めてお礼を云いたいんだ。ありがとう』


『それは何に対してのお礼なの? さっきのとは違うように想うのだけど』


『だって本当なら消えるのはママの方だったでしょ?』


『っ! ――――ほんとうに……本当に何でも知ってるのね。それがあの娘に内緒にしなければならない最大で唯一の理由よ』


『ここに来る前に視たソウルレコードではそうなってるから知ってるだけなんだ。それを知った時に僕は凄いなって想ったけどバニシングに半信半疑だったから話してみたかったんだよ』


『貴男が懐疑的だったのは尤もな事よ。でもアタシはあの娘の姉なのだものそんなの当然じゃない。やっとの想いで遇えた妹の為ならアタシの全てでも何でも差し出すわよ』


『やっぱり凄いね。僕とクーデレちゃんは仲良くなれると想うんだけど友達なれるかな?』


『アタシの方こそお友達になりたいわ。でも貴男いまサラァ~ってクーデレちゃんって云ったわね。アタシはデレた事なんて無いのだからそこは間違わないで欲しいわ』


『そこは突っ込むところじゃないよぉ。それと細かい事を気にしたら負けだよ? 特にママにはね。それよりこれをクーデレちゃんにあげるよ。これは僕達ふたりにしか通じない内緒のパスなんだ。だからママには知られちゃダメなお話しも出来て便利だし持っていて欲しいな』


『念話みたいな物かしら? それは便利だけどそんな貴重なものをアタシが貰っても良いのかしら?』


『最初からあげようって想って持ってたんだ。でも僕が宿ってからじゃないとお話しは出来ないからね。それとまた回復するけど一時的に精神力を削る事になるから頻繁には使わない方が良いかな。本当に必要な時にお話し出来ないと困るでしょ。だからたまにって感じになっちゃうよ』


『了解したわ。今夜の事は当然あの娘には内緒でしょ? なんで来れたのか不思議だけど云えない事なら云わなくて良いわ』


『勿論ママは知らないよ。今夜来れたのはラッキーが重なった感じかな? 簡単に云うとパパとママが同調してそう願ったからなんだ』


『そう云う事はやっぱりパパってそうなの?』


『うん。だけどママには内緒だよ。気が付いてるのは知ってるけど一応ね』


『一応ね。ふふふ。アタシも貴男が産まれて来てくれるのが愉しみよ』


『それじゃぁ、僕は行くよ。クーデレちゃん、またねっ!』


『はい。遠くない未来に。またね』



 ステージはアタシ達よりも上だから当然なのだけど確りした子だったわね。

 テレパシーでお話しなんて素敵だけど、産まれて来る時にきっと全部忘れちゃうから、あの子がアタシに気が付くまでお話し出来ないかも知れないのは残念ねぇ。

 それでもワクワクする愉しみが増えたから大切に持ってないといけないわ。

 アタシはあの娘を通して視る事は出来るから少し不公平かしらね。ふふ。


 全くこの娘ったら幸せそうに眠っちゃってもう。

 顔に落書きでもしちゃおうかしらね。

 な~んて。そんな事は出来ないのだけれどっ。

 アタシもそろそろ眠ろうかしら。

 おやすみなさ~い。ふぁ~ぁ。

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