五話 ワン スモール ステップ フロム ゼロ
ワン スモール ステップ フロム ゼロ Vol1
『この辺りに何軒かお薦めのお店あるけど、リクエストが在れば聞くわよ』
『どこでも良いけど今日は湿度の所為で蒸し暑かったわね。外回りだったから嫌な汗の掻き方しちゃったし喉も乾いたわ』
『あたしも午後から少しトラブって走り回ったから同じよぉ。このままお店で乾杯も良いけど近くにスパ在るから、サッパリしてビールって云うのも悪くないんじゃない?』
『良いわねぇ。それ最高のプランよ! 早速行きましょうか』
お店に向かって歩きながらお喋りしてるとこんなお話しになって、意気投合した云うか同じ状況だったと云うか、早速あたし達はスパに来ている。
高校生時代から連れ立って色々な事して来た親友なのも在って、センスと云ったら大袈裟だけど感覚や好みも似てるのよね。
スパを銭湯の代わりみたいに利用してスッキリサッパリしたら、リフレッシュ出来てビールもより美味しくなるわ。
「愛ってほんと、昔からスタイル良いわよねぇ」
「そう云うあんたこそ少し育ってるじゃないの」
「育つって何がよぉ? もしかして少し太った?」
「下手に惚けて誤魔化さなくて良いけど、そんなの決まってるじゃない。出るところが出て来たって云ってるのよ」
「変わってないと思うけど」
「恋してると女は綺麗になっていくものなのよ」
「そんな事で変わらないわよ」
「そうね。弥生のは恋じゃなくて『愛』の方だったわね。言葉を間違えちゃったわ」
「強引にそっちにお話しを持って行ったわねぇ……」
「いいじゃない。こんな所で仕事の話題や愚痴なんて無粋も極まるわよ」
「それもそうね。せっかくのスパなんだしリラックスできる話題が良いわ」
「それでぇ? あれから何か進展は在ったの?」
「まぁ。それなりに? なのかなぁ」
「随分歯切れの悪い言い方するじゃないの。喧嘩でもでしたの?」
「璃央さんとは特になにも無いって云うか、あっちからの連絡待ちって感じだから変わってないわ」
「あんたさぁ何やってんのよ。『連絡待ちだから何も在りません』なんてどこまで受けに徹するつもりなの。話題なんて何でも良いから、自分からアプローチするって
「あたしのバイクを作業してくれてるのだろうから、お邪魔したくないじゃない」
「この前あんたの実家で私が云ったこと忘れてないでしょうね。またお説教されたい?」
「忘れる訳ないじゃない。あたしからしたらとても大切なことだもの」
「それなら良いけど。邪魔になるかもなんて仮定はすっ飛ばして、自分からアプローチしないと立ち止まってるのと一緒よ」
「愛の云ってくれてる事はとても有難いし理解してるけど、あたしだって出来る事からしてるのよ」
「そうなの? それなら良いけど。まだ中途半端で話せる段階にないのなら待つから、話せるようになったらちゃんと云うのよ? 相談でも何でも乗るから」
「うん。ありがとう。少し長くなるから、お店で呑みながらって考えてたお話しが在るの。ここでしたらきっと逆上せちゃうから」
「そうなのね。それは楽しみだわ。確かに恋に逆上せた弥生がお風呂でも逆上せたら、笑い話になっちゃうもの」
「愛ぃ。そんな上手いこと云わなくて良いからっ」
施設に由って違うけど、ここのスパは温泉みたいになってるお風呂も在ってリラックスできて良いわね。
露天風呂のようだけどビルのワンフロアに在るから、景色はスクリーンに投影されたホログラムなの。
ときどきガラッと景色が変わってその瞬間はびっくりするけど、違ったお風呂に入った気分にもなれるから悪い気はしないわ。
温泉と違うところは水着の着用が必須でフロントでレンタルしたけど、前提がお風呂やエステそれにマッサージだから、隠せるところが最小限の小さめの布地で慣れないあたしはちょっと落ち着かないかも。
隠せる所が少な過ぎるなら、いっそ裸の方が恥ずかしくないって想ってしまうのは何故だろう?
仮に海やプールで着る為にこのデザインをチョイスするとなると、相当スタイルに自信がないと無理ね。
因みにあたしはこんなにセクシーなデザインは持ってないわ。
愛ちゃんはどうかなぁ――普通に持ってる可能性は在るわねぇ。
だってセクシーな水着に着られてないと云うか、似合っていてカッコイイって素直に想うもの。
これだけスタイルも良くてお仕事もバリバリ熟す出来る女なんだから、神は二物どころか三物くらい与えてしまったのじゃない?
それって大盤振る舞いにも程が在るってものよ。
あたしにも気前良く少しくらい与えてくれたって、罰は当たらないんじゃない?
本当にもう、神様ってケチなのね。
「私さぁ、少し心配な事があるのよ」
「どうしたの急に。心配事が在るなら聞くし相談だって乗れると思うわよ」
「心配事じゃないのよ。私の心配はもっと単純で弥生の事でちょっとね」
「あっあたしの事? 何ぃ――さっきのお話しに戻るってこと?」
「違うわよ。そんな事じゃなくて私の心配は、弥生が真っ裸でここのお風呂に入りたいって云い出さないかって事よ」
「そんなの云うはずないでしょっ。いくらあたしだって羞恥心くらいは持ってるわよ!」
「それなら良いけど――あんたってたまに飛んでもないこと云いだすから。覚えてる? 高校の時に背中を虫に刺されたから薬を塗ってくれって、その場で制服を脱ぎ出そうとしたじゃない。男子も居る教室であれは無いわぁ」
「まだ覚えてたのか……あたしの黒歴史は早く忘れてっ」
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