後の祭りなんかにしてあげない Vol2
お天気は雨降りだけど気分は晴れやかにっ。
上げて行きましょうって。
朝のニュースの天気予報かエンディングみたいだけど構わないわよね?
あたしのお話しは後廻しにしたら状況が悪くなるかも知れないとの考えから、出社早々に課長の予定を聞いて時間を取って貰えるようにお願いするの。
これが本日のメインイベントになるわ。
タイムカードを打刻してデスクにバックを置いたら課長の様子を伺う。
いまはデスクに座って書類に眼を落としてるけど話し掛けても大丈夫そうだわ。
それじゃぁ先手必勝って事で当たって砕けてみましょうかね。
「課長。おはよう御座います。少し宜しいですか?」
「おはよう。構わんけど、いったいどうした?」
「実は課長にお話しが在りましてお時間を作って戴きたいのですが、その予定をお聞きしたくて参りました」
「ん――そうだなぁ。業務に関してなら今でも良いが、それ以外なら神駆絽の話しの内容も解からんし今日の昼飯の時に聞こうか」
「早速お時間を貰えて有難う御座います。業務のご相談では無いのでそれで結構です。それまでに簡潔にお話し出来るように考えを纏めて置きます」
「了解。今日は取り敢えずって事で、時間が足らないようならまた時間を作って話しを聞くと云う感じで良いか?」
「はい。それでお願いします。それではお仕事の準備しますので失礼します」
ふぅ。ちょっと緊張したわねぇ。
まずは第一歩はクリアと云った所で本題はお昼休みに持ち越しね。
早くても今日の勤務時間後かなと思ってたけど繰り上がってお昼休みなんて、あたしも午前のお仕事をしながら考えを纏めておくとしましょうかね。
流石に出社してすぐにお話しするとは考えてないし、お仕事前に片付くお話しでもないからそこは安心してたのだけどねっ。
どう切り出すかはもう考えてプランは在るけど、少しでも練って簡潔にお話しするのが礼儀ってものよね。
お話しを切り出すパターンは二つに大別出来て、どっちにするかでその後の展開が変わって来ると思うわ。
安易に考えると取り返しの付かない状況に発展する事も在って、お話しの切り出しって意外に重要なのよね。
ひとつは最初に核心から入って後から考えや理由を説明をして行くプラン。
これってインパクトが強くて途中のアプローチを間違うと険悪に為り兼ねないけど、お話しを最初から最後まで組み立てられる場合は有効だわ。
もうひとつは関連する事から入って、徐々に外堀を埋めて核心に迫って行くプランね。
お話しが廻り
課長の性格や予想出来る受け応えなんかを加味して考えると、後者の方が効果的な気がするのだけど……
面倒見の良い課長って、相談には親身になってくれてアドバイスもいっぱいくれるけど、結論を出してしまい事後承諾のようになると結果的にイエスかノーの受け応えになってしまうと思うのよ。
今回のお話しの場合はあたしはもう決断してしまってるから、前者で切り出すと五分くらいでお話しが終わってしまい、最悪の場合を想定すると険悪になって決裂する恐れも充分に在るわ。
少し遠回しになるけど、やっぱり後者でお話しするのが良さそうね。
そうすると、どの辺りの切り口から入るのが良いかしら?
う~ん……次のプロジェクトから外して貰うってお話しからかな?
それ以外だと遠回りし過ぎて、いつまで経っても核心には行き着かない気がするわね。
きっと勘の良い課長なら、あたしの退職と関連付けてお話ししてくれる筈だわ。
遠回しに仄めかす事で認識が一致するのって大事なことよね。
お互いの認識が違うと誤解を生むことになるし、齟齬が大きくなると互い違うお話しをしてたなんて事にもなってしまうから。
最初の切っ掛けだけ掴めてしまえば、軌道修正しながら進めていけるから今回はこれで行こうって思う。
細かい事はいま考えても杞憂になってしまう気がするし、そこに縛られて険悪なお話しになってしまうのは本末転倒で誰の得にもならないでしょ?
フレキシブルにお話し出来る下地は整えて置かないとね。
謂わば緩衝地帯って感じよ。
これは課長からの請け売りでクライアントさんと交渉する際に、譲歩出来るスペースを確保するって事の応用だわ。
あたしを鍛えてくれたのは課長だから、その成果を部下の成長として視せる事で課長も喜んでくれると良いけど。
でもこれはプラスアルファの期待ね。
重要なのはあたしがポジティブなスタイルでお話しする事に尽きるわ。
一抹の不安は残るけど
あとはお昼休みを待って砕け散らないように当たって砕けるだけよっ。
あれ? 何かがおかしくない?
まぁ。良いじゃない。こう云う事は勢いも大切なのよ。
フィーリングがものを云うってよく云うじゃない。
《ソンナコト イウ ヒト ワ イナイワヨ。 ハァ……セイカン シマショ。》
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