鮮明な記憶は翼を広げ Vol4
先ずは券売機でオーダーの食券を発行してから、彩華さんと手分けしてカウンターを周って順番に受け取り揃えて行く。
ソフトクリームは一番最後に受け取るから後回しね。
だって溶けちゃったら悲しくなるでしょ?
師匠と璃央さんはコーヒーだけどホットとアイスでお好みが分かれてるわね。
お好みで思い出したけどお砂糖とミルクって使うのかしら?
また貰いに来ても良いけど、気を遣わせてしまったり遠慮されたりするのも失礼だから、念の為に一緒に持って行くことにした。
それにしても彩華さんのオーダーが『クリームあんみつ』だったのはちょっと意外だったわ。
でも考えてみたらクリームあんみつってあまり食べる機会は少ないわね。
有名で何処にでも在るメニューだけど、お家ではまず作らないしあたしも甘味処でしか食べた事ないわ。
こう考えると不思議な食べ物とも云えるのではないかしら。
だってミルクと餡子と寒天よ。
この組み合わせってメニューとして確立されてるから違和感もないけど、本当に劇的で神秘的な出逢いを果たしたのではなくて?
少し大袈裟かも知れないけどそんな気がしてくるわ。
オオゲサ デス。 ダレモ ソンナコト ヲ カンガエタリ シ・マ・セ・ン。
クーデレさんってあたしにだけ容赦なさ過ぎよっ。ちょっと手加減してよぉ。
――――…………
スルーですか……
もぉ良いわよっ。それでは気を取り直して。
「そうなのよ。リオにぃ は いつも そ……!――」
「はぁい。お待たせしましたぁ。コーヒーのお好みを聞き忘れちゃったので、念の為にフレッシュとお砂糖も貰って来ました。足らなかったらまた行って来ますので遠慮しないで下さいね」
「「――――」」
「あたしも璃央もブラックだから大丈夫だよ。それよりこの娘達を何とかしてやりな。もう釘付けじゃないか。全くしょうがない娘だねぇ」
「あっ……ゴメンね。先にソフトクリームだったわ。はぁい。どうぞぉ。スプーンを使ってちょっとずつ食べようね」
「「うんっ」」
「わたしチョコ」
「いいわ。いちごしゃん から たべりゅのよ」
彩華さんと一緒に皆が待ってる席に戻ると、紫音ちゃんも綾音ちゃんもスタンドに鎮座してるソフトクリームに釘付けになっちゃって黙ってしまったわ。
璃央さんとのお話しもそっちのけでジィーってソフトクリームを凝視してるのよ。
普段からスキスキ光線を出しまくってるのに、スイーツには璃央さんも呆気なく敗北するみたいね。
もう瞬殺だったわ。いい気味よ。ふふふ。
きっと僅差なのだろうけど、紫音ちゃんはチョコを。綾音ちゃんはストロベリーがお好みみたいなの。
結果的には両方を食べるのだけど、一口目は好きな方から食べたくなるじゃない?
それなのに喧嘩にならないのって、仲良しさんなのは当然だけど微妙な好みの違いが在るのかも。
観察してるだけでも発見が在って面白いわね。
二人共まるで華が咲くような笑顔で、美味しそうに一口一口味わって食べてるわ。
視てるだけであたしまで嬉しくってニマニマしちゃうじゃない。
気味悪がられたりして無いかしら。
そう思って皆の方へ視線を向けると、それぞれに幸せそうな紫音ちゃんと綾音ちゃんを眺めて愛しむような優しい顔をしてたわ。
あたしだけじゃ無くてホッとしたけど、それ以上に素敵な感覚に包まれて舞い上がる様な気分になったわ。
「どぉ? アイスは美味しい?」
「うん。おいしいよぉ」
「ねぇね。おひとちゅ いかがかしゅりゃ」
「わぁ、ありがと。それじゃ遠慮なく一口貰っちゃおうかしらね……ん~。冷たくて甘くて美味しいわね」
「おねぇちゃん、こっちも いいよぉ」
「紫音ちゃん、ありがと。一口貰うわ」
「ねぇねと しおねぇと わたし いっしょなのよ」
「そうねぇ。一緒だね。あたしも仲良しさんだわ。ふふ」
「おねぇちゃんも おにぃちゃんも みんな なかよしだよ」
「「ねぇぇ」」
「ふふふ。そう云えば、なんでアイスをミックスにしなかったの?」
「みっくす? なぁに? ねぇねの たまに わかんにゃいのよ」
「ミックスが解らなかったのね。あのね。ミックスって云うのはチョコとバニラの二つのお味のアイスの事よ」
「ねぇね……いちごしゃんはちがうの? なかよししゃん じゃないの?」
「ごめんね。苺さんも一緒よ。苺さんとバニラのお味もミックスよ」
「あのね。みっきゅしゅだとね。バニラさん おおいの。イチゴしゃんとチョコすくないの」
「凄いのねぇ。ミックス二つだと一つ分がバニラになっちゃうから、半分コすると苺さんとチョコが少なくなっちゃうものね」
「そうなの。みんな いっちょの ぶん たべれるの」
感心しちゃうわね。
紫音ちゃんと綾音ちゃんは可愛らしいだけじゃなくてお利口さんなのよ。
分数の計算なんてまだ知らないのに、感覚的にちゃんと解ってて選択基準に比率まで加味してるなんてね。
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