転がり出した思惑 Vol2

 うーん……愛ちゃんの考えてるビジネスラインって、地味とは云ってるけど堅実よね。

 確実な足場を固めて、それ以上は採算ベースを鑑みて無理のない範囲でって事だから自由度も高い筈。

 お仕事が軌道に乗ったら急成長しそうだし、女実業家として有名になったら『あたしの親友よっ』って鼻も高いわっ。

 さっき何となくヒントみたいな物を感じたのだけど、あの正体は一体何だったのかなぁ?

 漠然と閃いたと云うか何かのヒントなんだけど、肝心な何かが解らないのよねぇ。


 少し整理して考えてみようかしら。

 えぇっとぉ……適切に運用されてないウェブページを有効活用する事で、クライアントさんのコストを低く抑えるのが目的よね。

 それでいて集客を見込めるようにするのだから、売り上げも上がって多少のコストアップは相殺されるどころか利益が上回ると思う。

 ウェブページがマストアイテムになってる現代社会なんだし、市場的にも大きいから伸び代は無限大と云っても良いくらいだわ。

 重要な点はクライアントさんの友達や知人の紹介を執り付けられるのが強味になるから、飛び込み営業よりお仕事に繋がる可能性も高くなって効率も良いってことね。

 独立して起業するにあたって採算ベースのお仕事を受注する事は大前提だし、継続への第一歩の敷居は低いほど良いわ。


 整理してみたけどヒントってなんだろ?

 ヒントねぇ……あたしに充て嵌めて考えるなんて出来るのかしら?

 先ずは有効利用されてないものって何か在る?

 趣味も兼ねて集めた食器とか……調理器具なんかも使ってないのは在るわね。

 そのくらいかなぁ……お料理っ!?

 在ったじゃない。もっと大きいのが!


 サロンよっ。厨房設備は殆んど揃ってるけど、璃央さんはお料理しないから使われて無くて勿体ないわ。

 詳細までは解らないけど、バイクのパーツがダンボールで数箱程度は置いて在ったくらいよね。

 と云うことは倉庫としても有効活用されてないスペースだわ。

 サロンでお料理屋さんって出来ないかしら?

 璃央さんも師匠からあの場所を借りてお店をしてるのだから、絵空事じゃなくて交渉次第で可能性は低くない。


 次に売り上げの事ね。

 立地的にお店って周りに無かったわね。

 彩華さんもお食事が出来るお店は皆無だって云ってたから、競合は無いって前提で考えてみましょ。

 あの場所と環境でお食事出来るお店の需要が在るかって事が一番の問題だわ。

 サロンでお店をするなら璃央さんは固定のお客さんになると思うけど、お客さんがたった一人じゃお家賃だって払っていけないわよね。

 

 う~ん。お客様ねぇ……

 畑仕事されてるご近所さんが鍵になりそうだわ。

 当然、お腹も空くし休憩に飲み物も欲しくなるわよね。

 お外でお弁当を食べるのも気持ち好いけど毎日だと新鮮味がなくなっちゃうし、お天気だっていつも晴れてる訳じゃない。

 当り前だけど雨だって降るし風の強い日だって在るわ。

 お家でお昼ご飯を摂るにしても畑仕事もしていて忙しいから、近くにお店が在れば食べに来てくれるのじゃないかしらね。

 そうなると定食屋さんみたいなお店なら、採算ベースに乗るような気がするわ。


 あっ! そうだわっ。

 集客って事で考えれば、璃央さんのお店の敷地内って草叢になってた所も在ったから、そこを刈り取ってキャンプ場みたいにテントで宿泊できるように整地すれば、バイクツーリングで来てくれるお客さんも居るかも知れないわね。

 宿泊する場所だけ在っても片手落ちだから、お食事の出来るお店が必要でしょ。

 それにバイクのメンテナンスも出来て安心じゃない。

 なにかイケそうな気になって来たわ。

 これは本格的に考えてみようかしらね。

 まずは身近な所からリサーチしてみようかな。



「愛。ちょっと聞いて良い?」


「なに踊ってるのって思ったら何が聞きたいの。遠慮なんかする間柄じゃないでしょ」


「踊ってないわよっ。考え事してただけで今から云うの。それで愛が独立してやろうとしてる事に関係が在るのだけど、ウェブページを創る為の初期費用を概算で良いから知りたいのよ」


「あぁ。そんな事? そうねぇ、五ページ位の簡単のなら片手くらいからいける。グラフィックに凝ったりしちゃったらどんどん高くなるけどね。でもそれって創るだけのコストで、さっきの通りそれだけじゃ意味は無いのよ」


「さっき云ってた更新の事でしょ?」


「それもなんだけど、公開するにはドメインを取得しなきゃいけないし、更新するのに必要なアプリやら色々在るのよ。フリーソフトで賄う事も出来るけど、それだと更新するだけでも大変な作業になっちゃうわ。数か月で更新が滞るのは眼に視えてるから止めときなさい」


「そう云うものなの? うちの父さんがブログやってるけど素人よ。そんなに難しいの?」


「ブログと商業用のホームページを一緒にされると困るんだけど。簡単に説明するとね、ブログはプロバイダーとかIT企業がフォーマットを構築していて、その中で運用するの。だから出来る事も相当制限されるわ。それに対して商業用のホームページは遣りたい事は殆んど自由に出来ちゃう。だから汎用のソフトで更新しようとすると色々使わないと出来ないのよ。大手の企業はフォーマットとそれに対応したアプリを事前に開発して、セットのサービスとして販売してるって云えば解り易いかな?」


「何となく解った気がするけど、こう云う事かな? 愛のいまの会社では受注して創ったページとツールをセットで完成品として販売してる。その対極としてさっき云ってた創るだけのウェブページは組み立てキットのような感じなの?」


「少し違うけどそんな感じのイメージで問題無いわ。でも話しが繋がらないわね。初期費用を聞いた理由は何?」


「あたしが向こうに住んでお料理屋さんを始めるとするでしょ。それと璃央さんのバイク屋さんも絡んでお仕事にならないかなぁって考えてるの。それにはウェブページが必須のアイテムなのよ」


「そう云う事ね。そんなの全部私がやってあげるわよ。水臭いこと云ってるんじゃないわよ。全くぅ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る