内緒話は時間も忘れ夜も更けて Vol6
アナタ ホントニ キヅイテ ナカッタノ?
うん。だって出逢って間もないのよ。
そんな男性を愛してるなんて想わないじゃない。
イチド ウマニ ケラレテ キナサイナ。
ソーシタラ ワカル ノ ジャナイ カシラ?
なんて事を云うの。
クーデレさんだって怪我するかも知れなくて、他人事じゃないんだから。
ケガ スル ノ ワ アナタ ダケ ダカラ シンパイ ナイワ。
そっ、そうよね。あたしだけだわ。
でも馬に蹴られて来るなんて、競馬場に行けば良いのかしら? それか乗馬クラブにも居るわね。
あっ! ファミリー牧場って線も在るじゃないっ。
チガァァァア! ロンテン ソコジャナイ!
「弥生? どうしたの。急に黙り込んだりして」
「あぁ。ごめんごめん。少し考えてたのよ。頭を整理してたって感じかな?」
「そう。それで整理は出来たの? 認める気になった?」
「そうね。馬に蹴られて来ようかなって。やっぱり馬が居る場所って身近な所だと競馬場か動物園よね?」
「あんたねぇ。それが冗談じゃないなら、心療内科に今すぐ連れて行くけど良い?」
「やめてよぉ。冗談に決まってるでしょ。もうっ」
「そんなの解かってるわよ。弥生の冗談に付き合っただけじゃない。それでぇ? 頭の整理がついてやっと往生する気になったの?」
「いまね。さっき云ってたあたしの中のもう一人のアタシとお話ししたの。それでね」
「それが急に黙り込んだ理由なのね。聴いてあげるから云ってみなさいよ」
「うん。結果から云うけど、愛と同じ事を云われたわ。気付いて無かったの? とか馬に蹴られて来い。とか」
「ふふん。弥生よりよっぽど解ってるじゃない。私とも気が合いそうだわ。何て呼べば良いのかしらね。弥生じゃ紛らわしいでしょ?」
「愛とは直接お話し出来ないと思うけど、あたしはもう一人の事をクーデレさんって呼んでるわ」
「クーデレさんねぇ。それっ笑っちゃうわ。だって言い得て妙だもの。それにしても冷静なもう一人の弥生かぁ。ふふふ」
「最初はね、そう呼ぶと『誰がいつデレたってぇ?』って反論して来たのだけど、もう諦めたみたいよ」
「良いじゃない。それじゃぁ、クーデレさん。弥生をちゃんとナビしてあげてね。あぁそうそう、忘れてたわ。私は弥生と高校時代からの親友で
「だからぁ。愛ちゃんとは直接お話し出来ないわよぉ」
「だったら弥生が伝えてよ。私は『私の親友を宜しくね』って挨拶したいだけなんだから」
アイチャン。ズットマエ カラ シッテルワ。コチラコソ ヨロシクネ。
「愛っ! クーデレさんからの伝言よ。云うわね。『愛ちゃん。ずっと前から知ってるわ。こちらこそ宜しくね』だって」
「そう。伝えてくれたのね。私が視てない時のサポートは任せたわよ」
「違うのよ。伝えてないの。あたしと愛のお話しを聴いてたみたいよ。何か伝えようとする前からクーデレさんがそう云ったの」
「なるほどねぇ。だからずっと前から知ってたのね。面白いからクーデレさんも一緒に三人でお話ししましょうよ」
「そんなの無理だってぇ。クーデレさんがあたしの意識を乗っ取る事は出来ないんだから」
「お話しくらい出来るわよ。私が云った事は聴こえてるのだから、弥生が代弁すれば良いだけじゃない。あっ。でもね、私以外にはこの事を話したら駄目よ。気持ち悪がられるか心療内科に連れて行かれちゃうから」
愛ちゃんとクーデレさんは折角ご挨拶したのだからって、暫くクーデレさんの代弁者としてあたしを通してお話ししたの。
時々あたし自身も混じったから三人でお話ししてるみたいだけど、あたしだけ二人羽織りな気分だったわ。
最初からその傾向は在ったけど、暗黙の了解でクーデレさんは『アイチャン』って呼んで区別が付くようにしてくれたの。
愛ちゃんもそれが解ったらしく、何の混乱も無くまるで十年来の親友が集まってワイワイ賑やかにお話しをしてる感じだったわ。
「愛のお話しを聴いて解った事が在るのよ」
「何が分かったの? 恋も愛の時間じゃ無いって事?」
「う~ん。それもだけど違う事よ。あたしね、向こうに住もうと思ってるのよ」
「ん~。良いんじゃない。いつ結婚するのよ。結婚式には呼びなさいよね」
「飛躍し過ぎだってぇ。まだそんな段階じゃないのよぉ」
「だって弥生は璃央さんを愛してるんでしょ? とっても自然なことなんだから取り繕うような事じゃないわよ」
愛ちゃんも母さん達と同じ反応だわ。
これって正常で常識的な事なのかしら?
あたしは『何かズレてる』って思うけどね。
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