やりたい事と出来る事 Vol2
母さんはお酒を飲まないから父さんの晩酌はいつも一人なんだけど、あたしが泊って行く時はお付き合いしてあげるの。
まだ少し時間は早いからのんびりと晩ご飯の支度を始めたわ。
家の唐揚げはお醤油をベースに、お酒と味醂に生姜の風味をつけて片栗粉と小麦粉を半々にした衣で揚げるの。
一般的には片栗粉だけの衣だと竜田揚げって云う事も在るわね。
サクサクした食感で美味しいけどお肉の旨みも少し抜けちゃうから、小麦粉を混ぜて良いトコ取りするのが母さん流の唐揚げなの。
お肉は下拵えを済ませて漬け込み冷蔵庫で寝かせて在るから、あとは衣を塗して揚げるだけであたしは出番は無さそうね。
お野菜は唐揚げの付け合せを兼ねたキャベツの千切りしか考えて無かったみたいで、あたしは温野菜のサラダを作る事にしたわ。
在り合わせの常備野菜でサッと作れるのも良いわね。
人参とジャガイモと云った定番の根野菜に加え、ブロッコリーとパプリカが在ったから彩りも良い感じ。
ボイルするブロッコリーとパプリカは歯応え良く仕上げて、人参とジャガイモは蒸す事にしたわ。
根野菜は蒸した方がボイルするより素材本来の甘みが引き立って、驚くほど美味しくなるもの。
軽くお塩をパラパラってするだけで、より甘みが強調されて飽きないわよね。
ブロッコリーも蒸すとビタミンなんかの栄養素がお湯に溶け出さないから栄養面でも良いのだけど、根野菜と一緒だと仕上がり時間の違いから柔らかくなり過ぎて、食感も悪くなるし栄養素も壊れてしまうからお薦め出来ないわ。
別々に蒸せば良いのだけど手間も掛かるし、前提としてこの家には蒸し器が一つしか無いから今回は次善策って感じね。
中華料理で使う
実家のキッチンはごく普通でストーブテーブルも一般家庭によく在るものだし、調理器具だってお店の厨房のようには揃って無いの。
師匠のお家には業務用ストーブテーブルも在る事だし、蒸籠も普通に在りそうな気がするけどあのキッチンは一般家庭としては異質だと思うわね。
おつまみにしらす干しをのっけ盛り冷奴だけじゃちょっと物足らないかなぁ。
唐揚げをおつまみにしても良いのだけど、今日のメインのお料理だからそれもちょっとねぇ……
取り敢えず冷蔵庫を覗いてみましょ。
どれどれ~
お刺身用のマグロが柵で在ってぇ――薄切りのお肉が牛肉と豚肉がワンパックずつでぇ――卵はそれなりに……
あとはスライスチーズとプロセスチーズ……ハムも在るわね。
今晩は唐揚げだからお肉は除外するとして、卵にチーズにマグロかぁ……どうしましょ。
あっ! 良いもの発見したわっ。
アボガドが在るじゃないっ。
これってマグロにビネガーで風味付けしてオニオンスライスも添えれば簡単マリネだし、赤身だから軽く漬けにしちゃって和えれば『トロの味』って云われてるハワイアンなポキサラダになるわ。
でも赤身にアボガド乗せてもトロの味では無いわよね。
お味そのものより少し濃厚な風味が何となく似てるかも? ってだけなんだけど、その先入観を抜きにして別物と考えれば美味しいからあたしもちょいちょい作るけど。
「ねぇ、母さん。このお刺身用のマグロも使って良いかな?」
「ん~? お父さんの晩酌用に買ったのだから良いけどぉ」
「サンキュー。これでポキを作るわ」
「ポキって確かぁぁぁ、あぁそうそう。ハワイアンのお料理だったわよね」
「そう、それよ。マグロを切り分けたら漬けにしてアボガドと和えるだけなんだけど、ご飯に盛ってポキ丼にしても美味しいのよ」
「そうでしょうね。アボガドを使ってる以外は殆んど和食と遜色ないから、鉄火丼やマグロの漬け丼のバリエーションみたいなものだし」
「おつまみとして作るけど、母さんも摘まんでみてよ」
ポキってお料理する人の個人差でレシピには微妙な違いが在って、バリエーションも多いからこれが正解みたいなレシピは無いのよね。
あたしも胡麻油を使ったり
今日はどうしようかしらぁ。
唐揚げも在るけど、お酒との相性を重視して風味付けに胡麻油をちょっとだけ使おうかしらね。
それでは早速作りましょ。
先ずは少量だから直ぐ冷めるけどお酒と味醂を煮切って冷まさなきゃね。
でもお刺身醤油が在れば同じような感じになるから代用しても良いわ。
柵だし薄めのお刺身に切ってみようかな?
だいたい厚さはお寿司のネタくらいね。
ボウルで漬けダレを作ってお好みで山葵を溶かしたら、切り分けたお刺身をザックリ混ぜて冷蔵庫で寝かせると殆んど終わりみたいなもの。
十五分くらいでもちゃんと漬けになるから、その間にアボガドをダイスに切って胡麻油を加えて和えれば完成。
今日は彩りにオクラとミョウガを天盛りしてみようかしらね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます