淡く感じる日常で Vol5

 先程のミーティングの結果を鑑み、課長から今後の進め方や発注業者等のブリーフィングを受けて本日のお仕事は終了したわ。

 事前に確りした資料を作成していたから在庫や納期の問い合わせをする必要は無く、期日限定で仮押さえして置いた在庫を発注に切り替えるメールを何通か送信するだけだったの。


 備えあれば憂いなしよね。

 これも師匠の受け売りなんだけど、正にその通りだわ。

 面倒がらずにコツコツと準備して置くと必ず生きて来るもの。

 デザインが違う数種類を仮押さえするなんて、一見無駄なようでもそんな事は無いのよね。

 発注と納品がスムーズになるだけでクライアントさんの利益になるし、何より安心感を持って貰えるのはプライスレスな信用を得られるのだから。

 やっぱりお仕事をする上で信頼関係は大事なファクターよね。

 満足して貰えればご紹介して戴く事にも繋がるし。


 残務を終わらせると終業の定時を少し過ぎてたけど、残業って程じゃ無いわね。

 『お疲れ様でした』や『お先に失礼します』って同僚に声を掛けると、明るくお返事してくれる人や恨めしそうにあたしを視ながらご挨拶を返してくれる人も居て、担当してるお仕事の進捗状況が一目瞭然だわ。

 あたしも忙しくなったら残業の毎日になるから気持ちは解かるけど、早く終われる時はスパッとお仕事を切り上げろって云うのが、課長の方針だから遠慮なく帰らせて戴くとするわ。

 公私の切り替えは重要で『休むのも仕事だ』って云ってる課長が、一番のワーカホリックと云う事実はナイショ。


 ほんとは誰かに視られたら注意されちゃうけど、急く気持ちは抑えきれないあたしは社内を小走りしてタイムカードを押す。

 晴れて社畜の『神駆絽』から『弥生』に戻れたあたしは、ヘアアクセを探す為に行きつけのお店を目指す。

 

 残念な事にお目当てのお店は、勤務してる会社からだと電車を乗り換えて自宅へは遠回りになるんだけど、これも紫音ちゃんと綾音ちゃんに喜んで貰う為だもの自然と足取りは軽くなるわ。

 目指すお店はヘアアクセ専門店ではなく、他にもファンシーグッズやちょっとした雑貨や小物も並んでるから、もしかしたら素敵なタンブラーにも出逢えるかもね。


 あたしが会社を出てから二十分くらいでお店に到着したわ。

 ざっくり店内を眺めながらひと周りしたのだけど、眼を惹くようなタンブラーは見付けられ無かったの。

 そもそも樹脂製のタンブラーって種類が少ないのかしらね。

 これまで特に気を掛けて探して無かったからか、食器が主力のお店でも見掛けた記憶はない気がするわ。

 ガラスのタンブラーなら素敵なのはいっぱい在るけど、今回は目的と用途が違ってるのよね。

 これはもう少しウェブサイト等でリサーチしてからの方が良いのかも知れないわ。

 消去法で探しても素敵なのに出逢える気はしないから。

 せっかくプレゼントするんだから喜んで貰いたいし、焦って探して変な妥協するのは問題外だし何より嫌だから、今日の所はヘアアクセだけで我慢しましょ。


 綾音ちゃんはシュシュの事をフワフワって呼ぶから、軽い感じのするデザインで透明感の在るのが好いかしら?

 何もひとつだけなんて限定しなくて、色んなデザインの物を幾つもプレゼントするってアリよね。


 そう都合よく考えたあたしは、気になったデザインのシュシュを紫音ちゃんと綾音ちゃんが好きなお彩の各系統で、ポンポンと店内用のカゴに放り込んで行く。


 アナタ チョット マチナサイ。イクツ カウ ツモリ ナノヨ。


 えっ? 幾つって、それはいっぱいに決まってるでしょ。


 イイ。オチツイテ カゴ ノ ナカ ヲ ミテ ミナサイナ。


 うわぁ! いつの間にこんないっぱいカゴに入れたのかしら……

 クーデレさん知ってる?


 ゼンブ アナタ ガ イレタ ノヨ。

 ダカラ トメタ ノ ジャナイ。


 そ、そうよね……確かにこれでは多過ぎるから厳選しなきゃ。


 あたしはクーデレさんの静止と忠告を受け入れ、改めてカゴの中のシュシュの山を吟味したわ。

 やっとの想いで五種類お彩違いの計十個までにはなったけど……

 これでもまだ多いわ……せめて三種類で六個までにしないとね。


 さらに悩みに悩んでギリギリの三種類まで絞り込んだら、もうこれ以上選んで減らしたくないって諦めたわよ。

 だってどれも双子ちゃん達に似合いそうだし可愛らしいんだもの。

 お次はカチューシャを探そうかな。

 またクーデレさんに注意されないように、二つずつで四つまでって決めて探し始めてたわ。


 カチューシャは同一デザインのお彩違いじゃ無くて、好きなお彩の系統を一つずつ、あとの二つは共用で使って貰えるようにデザイン重視で選ぶことにしたの。

 やっぱりこれも頭を抱えるくらい悩んだわ。

 あたしが自身で使うならここまで悩んだりしないけど、双子ちゃんのプレゼントだから仕方ないわよね。

 お陰でシュシュとカチューシャを選ぶだけで二時間はたっぷり掛かっちゃった。

 その結果イメージに合う素敵なデザインとお彩に出逢えたから良いのだけど。


 閉店時間が近付いてるけど仕上げとして、ファンシーコーナーで厚めで確りした表面にコーティングが施されてるチェック柄のペーパーバックと、マステやリボン等のラッピング素材も一緒に買う事にしたわ。

 お店にお願いしてプレゼントラッピングって方法も良いけど、イメージ通りになると限らないから、あたしのセンスでラッピングしたものをプレゼントしたいわ。

 これで第一弾は全部揃ってお家でラッピングするのが愉しみね。

 第二弾でも在る、探すのに難航しそうな樹脂製のタンブラーを残すのみよっ。

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