淡く感じる日常で Vol4
クーデレさんとは、あの夜以来少しずつ歩み寄りが出来てる気がするわ。
ちょっと違うかな? 歩み寄ったのでは無くて互いが互いの存在を理解して折り合いが着いて来たと云うのが正確なのかもね。
結果的にだけど、擦れ違うのは必然で在って必要不可欠な事だったのだわ。
あの時は唐突過ぎて、あたしは混乱のあまり喧嘩腰になってしまったけど、それは理解しようとして無かっただけ。
解らない
でもまだ謎な事もいっぱい在るのだけど。
その筆頭は、変なノイズ混じりのイメージの事。
あたしだってクーデレさんの仕業じゃ無いのは解ってる。
そう明言してるし、何よりあたしの心の奥底を覗けば一目瞭然で、その方法も教えてくれたわ。
それだけに謎が深まってしまうのよね。
神の御業で片付けてしまうのが手っ取り早いのだけど、それじゃ逃げてるみたいだし、信心深くないあたしがそんなに都合よく持ち出すのも納得いかない。
第一そんなの気分も悪いわ。
こっちに戻って来てからは一度だって視てないし、そんな気配すら無いのよね。
それこそ、あたしがバイクに乗って異世界に転移したのだと云われた方が、ファンタジーだけど納得出来るかも知れないわ。
まぁ、そんなお伽噺なんて在る筈もないけどね。
全てが空想で夢なのだとしたら説明の着かない事実が在るの。
こっち戻ってからも彩華さんとアプリで繋がってるし、ウェブサイトで師匠の名前を検索したら画像や作品もたくさん在ったわ。
でもあたしが見つけたその画像ったら笑っちゃうのよ。
バツが悪そうにしかめっ面で睨むようなんだもの。
師匠の失言が原因で、彩華さんとあわや一触即発の臨戦態勢になった時に視た顔そのままだったのよ。
ぶっきら棒だけど照れ屋さんの師匠らしくて、にまにましちゃったのは内緒。
「
「大丈夫です。あたしがケータリングを忘れる訳ないじゃないですかぁ。資料は忘れてもコーヒーは忘れるな。それが座右の銘なんですから」
「お前なぁ。暫く現場で材料担ぎして来るか? それでお前の性根を叩き直せるなら俺は構わんぞ」
「課長、それはあたしが構いますからねっ」
「大事なミーティング前にそれだけ冗談を云えるなら心配ないな。フォローはしてやるからプレゼンしてみろ」
「はい。その心算でした。フォローは随時お願いしますね」
クライアントさんとのミーティング三十分前に、課長はあたしが緊張してないか確認するように声を掛けて来た。
あたしがメインでプレゼンするのは二回目だから心配だったのかもね。
因みに初めてだった前回は見事にケータリングの手配を忘れて、急いでテイクアウトのコーヒーショップへ走ったと云うやらかしの前科が在るから仕方のない事なんだけど。
こうして準備を万端に整えクライアントさんをお待ちしてると、時間通りに来訪して戴けミーティングが始まった。
「――これで仮契約は完了しました。本日の打ち合わせでご意向を伺いましたので、お見積書にインテリア等の画像を添付してメール致します。ご不明な点が在りましたら遠慮なく私、神駆絽までお問い合わせ下さい」
「宜しくお願いします。工期もこっちの希望通りでホッとしましたよ。やはりこう云う事はプロにお任せするのが一番ですね」
「ありがとう御座います。私共としましてもご希望に添えた事が喜ばしい限りです。今後とも、この神駆絽に何なりとお申し付け下さい。出来るだけご希望に沿うよう対応させて戴きます」
「こちらこそ良しなに。それではこれで失礼して上司に報告します」
「そうですか。玄関ロビーまでお見送りさせて戴きます。本日はご多忙にも拘わらず、ご足労戴きありがとう御座いました」
ミーティングは少しだけ予定時間をオーバーしたものの、成功裏に終了して仮契約に漕ぎ着けた。
懸念していた工期も余裕を持ってクリア出来るだろうから、お仕事としてスムーズに進むと思うわね。
これからのあたしのお仕事は、今日のミーティング内容を加味して最終的なお見積書の作成かな。
そしてクライアントさんのオーケーが出れば、本契約を交わし着工と云う流れなので、久し振りに定時に退社出来そうよ。
このまま部署内でトラブルが無ければ、今朝の計画通り紫音ちゃんと綾音ちゃんのお土産を探しに行けるわね。
それが嬉しくてニコニコしてるあたしだけど、きっと課長の眼にはお仕事が成功したからだって映ってると思うわ。
それはとても好都合なのだけどっ。
あたしにとっては、このお買い物こそが本当のメインイベントだもの。
タンブラーも探したいけどリサーチは充分と云えないから、今日はお店に見当が付いてるヘアアクセを優先しようかしら。
会社帰りだとお店の営業時間的な問題で何件もお店を廻れないし、折角のプレゼントなんだから妥協したく無いじゃない。
それに可愛らしくラッピングする資材も置いて在るお店だから、リボンとかマステとか色々と選んであげたいもの。
シュシュとカチューシャをセットにしてお彩違いにしても良いわね。
紫音ちゃんはシュシュをバングル代わりにすれば、お彩だけ違う仲良しさんの出来上がりよっ。ふふふ。
想像しただけで楽しくなって来るわね。
アナタ オシゴトチュウ デショ?
ミスル ト ザンギョウ デ イケナクナル ワヨ。
そーですよねー……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます