Day23 ストロー
翌日、空はからりと晴れて、絶好の調査日和だった。
コテージの扉を開けると、潮の匂いが鼻腔をくすぐる。二人は軽装に着替えて、旅荷物を背負い袋にまとめて外に出た。
「うーん、いい天気!」
リヒトはいつもの黒ローブをコテージに置いてきた。暑い気候に合わせて、涼しげな水色の半袖シャツに、紺色の半ズボンをサスペンダーで留めている。頭にはつばの広い麦わら帽子。降り注ぐ日差しにも負けず、うきうきとはしゃぐ彼。それを見て、ヴェルデは(眩しいな)と思った。
「ヴェルさん、早く出発しよう! 僕、待ちきれないよ」
「ええ、そういたしましょう」
ヴェルデの方もまた、白の開襟シャツに薄手のワイドパンツと、夏らしい出立ちだ。リヒトが見繕った洋服は、彼によく馴染んでいた。首元には翡翠をあしらったチョーカーを身につけている。日光を反射し、深緑の石がきらりと光った。
彼らの調査旅行は、いたって順調に進んだ。
まずは漁港に行き、めぼしいものはないか聞き込んで回る。地元の漁師から、薬として使われる海産物について教えてもらった。
滋養強壮に解毒作用、その他色々の効用を、リヒトはふむふむと相槌を打ちながら手帳に書き取っていく。
調査協力のみならず、気の良い漁師たちは新鮮な海の幸を振る舞ってくれた。
刺身に天ぷらの豪華な一皿に、七輪焼きの熱々の貝まで。二人は丁寧に礼を述べながら、美味なる海鮮に舌鼓を打った。
午後は潮だまりで生物採集。紫の煙を吐くアメフラシや、色とりどりのウミウシ達。毒のあるイソギンチャクも上手く使えば薬になる。海水を満たしたバケツに次々と放り込んだ。
リヒトは星型のヒトデをつまみ上げると、嬉々としてヴェルデへと見せに行った。日は天高く、空は快晴である。
麦わら帽子が不意の海風に飛ばされそうになる。慌ててつばを片手で押さえながら、彼は笑っていた。
潮は緩やかに満ちていき、水に浸かった足元は磯の香りに包まれていた。
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