Day17 半年

 朝の食卓で、リヒトはブルーベリージャムの瓶を手に取る。ラベルを見ると、作った日付は去年の冬。庭で育てたベリーの余りを、ジャムに加工して冷凍保存したものだ。青紫色のジャムを白パンに塗りながら、リヒトは独り言をつぶやいた。

「もう、半年も経ったんだね」


 今年のはじまり、二人で見た初日の出。雪降る窓辺で飲んだホットミルク。霜柱を踏みながら見つけた新芽。春風にはためく毛布。新緑に染まる森。雨音を聞いたベッドの中。


 そうして夏がやってきた。彼は感慨深げにため息をつくと、ジャムを塗ったパンを頬張った。

「うん、おいしい」

 季節は巡る。生活は続く。辛い時もあったけれど、今はひとりじゃない。だから、大丈夫。

「幸せだなぁ」

 朝の陽光が窓から降り注ぎ、リヒトは眩しげに目を細める。

 すると、玄関扉が開く音がした。庭仕事をしていたヴェルデが戻ってきたのだ。

 リヒトは席を立つ。そして彼を食卓へと温かく迎え入れるのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る