男女の友情は成立するのか

「男女間の友情は成立するか?」


 この問いには「成立する」と答える人が多いだろう。

 以前、雑誌でみたアンケートでも7〜8割の人がアリだと答えていた気がする。

 けれど、どこまでが友人としてアリで、どこからが恋人との行動に当たるかの基準は、人によって相当差があるではないだろうか。


 私の場合は、2人きりの食事やお出掛けも友達の範囲内で成立する。

 なんなら「夜に一人暮らしの相手の家に行って遅くまでお喋りする」だってアリだし、実践済みだったりする。

 なので、男女が一緒にいると、直ぐに恋愛に結びつけようとする人がいると、別にそうとは限らない場合だって結構あると思うけどなぁ……という派だ。

 


 さてここで、当時の私を「モテ」という観点から少しばかり分析してみよう。 

 モテ……この話では「異性からの好かれ具合」として考える。

 自己分析によると、私は微モテ。全くモテない訳ではないが、モテたい人にはモテない……だ。

 自分の外見、体型を客観的に眺めると、小柄で丸顔で……何というか「ロリっぽいのが好きな人にウケそう……」という感じだったりする。

 これは思い込みかも知れないけれど、私に異性として興味関心を持ってくれる男性の好きな芸能人やタイプを聞くにつけ……あれ? 本当はロリ好きだが、犯罪になりかねないので私で妥協しているんじゃないかな? という疑惑が付き纏った。


 つまり、一般モテはあまりしないが、マニアには一定の需要がありそうな物件……それが私だ。

 しかも、人見知りのため最初は大人しく見えてしまい「穏やかな妹キャラ」という勘違いを生む事も少なくない。

 しかし実際は長女だし、思った事はハッキリ伝える方だし、どう考えても大人しいとはいい難い……それどころか親しい友人には「性格ゾウ」と称される程、ずんずん我が道を行くタイプである。

 ゆえに、実際のところ、妹キャラを期待されても、需要と供給が全く折り合わないという残念な事になる。


 ちなみに、T君の好きなタイプは、ナチュラル綺麗なお姉さん系だった。

 だから尚更、外見ロリ、中身ゾウの私は友達としては良いかも知れないけれど、恋人としては守備範囲外だろうな。そう思えてならなかった。



 さて、話を戻そう。

 そんな時にN君の登場である。

 彼は、殆ど好意を隠さなくて、結構グイグイ来る。


「付き合っている人はいるの?」

「じゃあ、いま好きな人は?」


 しかも、困った事にT君がいる場でそれを聞いてきた。

 その場に彼がいなければ「気になる人はいる」と答えただろう。

 しかし私は、T君を前にして「いる」と言う勇気が無かった。


「葉ちゃんって、好きな人がいたんだ。へぇ」と思われるのも悲しいし、「まさか、俺じゃないよな。げげっ」と勘付かれるのも気まずい。


 だから「どちらもいない」と答えた。

 そして、その答えは案の定、N君への「脈アリ」のメッセージになってしまった。


「じゃあ、今度一緒に出かけようよ。今週末なんて空いてる?」


「えっと用事があった……かな」


「じゃあ、来週末は?」


「うーん、決まって無くてまだ分からない」


 咄嗟の嘘は苦手な私は、正直に答えた。

 淡白な私の返事から、乗り気でない事を察して! そう願った。

 が、残念ながら、そんなごく弱い「NO」は、N君には伝わらなかった。


「じゃあ、来週の土曜日、空いていたらご飯でも食べにいこうよ」


「あ……空いてたらね」


 そして私は曖昧な返事でその場は誤魔化した。

 


***



 本当に誘いがきたらどうしよう……と警戒していたけれど、土曜日の昼になっても連絡はなかった。

 よっしゃ、自然消滅に成功した! と油断した時、スマホにN君からのメッセージが入った。

 

—— 今、何してる? 良かったら一緒にご飯でもどう?


 ええ〜、だんだん夕方、このタイミングで誘ってくる?

 困ったな、用事は無いけれど、有る事にして断るしかないか……。

 私は溜め息を吐きながらスマホの画面に向かった。


 はぁ、その気がない相手からの誘いってみんなどう対処しているんだろう……告白された訳でもないから「異性として興味がない」って伝えるのも自意識過剰で変だし……。


 はぁ、用事はなんてしようかな……。


 はぁ、T君に会いたいな……。

 

 その時、性格ゾウの一部が目覚めた。

 嘘じゃなくて用事を作ろう。会いたければ誘おう。

 そう思ったのだ。


 私はT君に電話をかけた。



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