各論

編集者になろうとする人ってどんな人?

 だいたい学生時代は小難しい本を読んで「僕は~」みたいなことをいう人ですね。ちょっと珍しいですね。高学歴系変人が多いです。今時「マスコミ」(「旧4マス」と言いますよね)なんて落ち目なのにそれでも高学歴を取りたがる変な業界です。こんな業界に憧れるの、今時日本だけです。やっぱり高学歴(ここで言う高学歴とは高偏差値学校の事で修士や博士の事ではない)は会社を滅ぼすんですよ。だって「会社に寄りかかろうとする」奴らばっかりだもん。


 で、無事就職します。何千倍という応募倍率をクリアしました。すると学生時代の希望や夢は打ち砕かれます。営利主義って事がばれるし自分がやりたい編集部に移動できるわけじゃないって事がばれるわけです。なんだったら応募の時点で文学オタクは排除するようにします。会社人に向かない奴は排除するんですね。


 これはゲーム会社がゲームオタクを排除したり鉄道会社が鉄道オタクを排除する構造と一緒です。ゆえに「コミュ障」を必死で隠します。「偽りのペルソナで自分を被り続けると精神の病になる」って心理学の授業で聞いてなかったのかな? したがってすでに就活の時点で病んでます。


 よって就活の時は「擬態」して「ガクチカ」を必死にアピールするわけです。陽キャ演技もします。アリバイも作ります。日本の就活はアホの極みです。それどころか少数精鋭で激務で苦しみかつこの業界が構造不況業種であることに目を瞑って来た自分を悔やみます。自業自得ですけどね。


 ちなみに出版社が「超・リベラルな社風で奇人変人オールOKで高収入」だったのはバブル期までの伝説です。バブル崩壊以後はどんどん思想も右に傾き業績も右肩下がりの「W右」ですよ。普通の会社になり下がったって事です。というかライターマシン工場になり下がるのです。


 で、だいたい出版社の編集者の人って就職から約3年後に「これ、典型的な虚業やん」って気が付いちゃうんです。学術系とか専門書の出版社でもない限り。銀行、製造業、建設、不動産、小売、保険、商社、卸売、運輸、医療福祉……そういった業界と違って自分や自分の会社が消えても「世の中まったく困らない」って事に気が付くんです。エンターテインメント業界って別に世の中に無くても困らないんですよ。残念なことに。報道系部署に居る人はともかく。報道は「第四権力」ですからね。


 あとはもうじりじり減っていく出版市場の中で自分だけ生き残ろうと必死になるわけです。深夜残業もざらです。そんな状態なのに結婚しちゃったりして。そして身も心もボロボロになって転職もほぼ不可能で子供は小学生あたりになった40代にこんなものを突き付けられます。構造不況業種あるあるです。なんで日本は書店が次々潰れて行ってるのか。そんな簡単な事実に目を瞑ってきた結果……。


 ――早期退職勧告


 そして自分は編集職という特殊な業種に居た事に後悔します。しかも自分は若さと学歴を使い捨てにさせられたと後悔します。そう、編集職はつぶしが利かないのです。だから編集者という職業は他社の編集者ともコネを持ちたがるのです。もっとも他社の編集職へ転職成功出来るのは数割程度ですが。そうやってひっそりと1人、また1人と社内から消えていきます。これは日本のかつての映画業界でもそうです。日本の映画業界は単なるエンタメではなく本編上映前は映画ニュースを流す情報インフラ産業だったのです。ですがテレビ受信機に駆逐されたんですよね。それでも不動産やテレビ局の株式を持ってるから生き延びた会社もありますけど。同じことです。インターネットに駆逐されてるのが今の旧4マス業界です。


 今や大手出版社とかテレビ局とか新聞社なんて大半が不動産収入だったりするんです。よっぽどの世界的アニメがヒットでもしない限り。本人達は「社名をもう『~不動産』に変えろよ」って思っているぐらいです。そう、不動産は実業だから消えないんですね。なんだったら私は大手新聞社やキー局や準キー局のようにハウジングプラザでも作っておけばよかったのにと本気で思います。本気で社員に宅建免許でも取らせてあげたらよかったのにねって思います。はい。なんだったら出版事業は趣味にして本業を不動産業に業態転換して「宅建免許所持者優遇」って新卒の求人票に書けばいいんですよ。ええ。そしたら出版社に大学新卒は変な幻想を抱きませんよ。「ああ、ここは実質不動産業かぁ」となって応募倍率も減りますって。


 こんな業界ですから作家の事を考える人の方が少ない。自分の身を守ることで精いっぱいなんですよ。例えば自社でライトノベル図書館を世界中に作ってラノベというコンテンツを世界で普及させようとする気概がないわけですね。だからラノベ公募作家を受賞させては打ち切りにして廃業作家を右から左に流すだけなんです。これ負けるギャンブラーの典型ですね。いつか勝つはず……。数打ちゃ確率論的にいつか自分が担当しているラノベが大当たりするはず……。


 いやいやいや、そんなことないから。構造不況業種がそう簡単に覆ることはねえよ。だから「本業:出版業」であることを諦めて介護なり予備校なりと別業種に進出する元・出版社も多いわけですね。そもそも出版社かつ上場企業は有価証券報告書でばれてますからね。もはやあなたの会社の本業は他事業収入や不動産である事に。「それ、本当に出版社ですか?」って突っ込みたいですね。


 つまり真の破滅フラグが立ってるのはほかならぬ「出版社」だったのです。


 私的には「本を読むのは趣味だけにした方がいいよ」って言う奴がたぶん真の編集者だと思いますね。これほどまでに業界の闇と苦境を知っていたら。なのでこういう質問をするんですよ。


 「あなたは自分の息子さんが編集職を目指すと言ったら賛成しますか?」


 この時、嘘を答えるのかもしれませんが信頼を築いた仲だったら答えてくれるはず。それが、真の答えだ。

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