第4話
「単刀直入に聞きますが神田さん。あなたの頭はどこにあると思いますか?」
牛久先輩はすかさず本題に入った。
「頭ねえ。気づいた時にはなかったからなあ。どこにあるんだろう」
神田先輩はほおを掻くように首筋をぽりぽりと掻いた。
「むむむ。心当たりだけでもありませんか?思い出の場所とか、逆に嫌いな場所とかは」
「思い出の場所かあ」
牛久先輩は矢継ぎ早に質問する。僕も聞いたことがないような話を神田先輩に聞くのをなんだかもやもやした気持ちで眺めていた。
「そういえば一条川の河川敷で遊んでたような気がする?」
神田先輩はうんうんと唸った後にそう言った。一条川とは高校近くに流れる川でそこの河川敷はしばしばやんちゃな生徒の溜まり場になっている。
「これは貴重な情報ですねそうと決まれば早速行きましょう!」
両手を振り回さん勢いで牛久先輩がいう。僕たちは連れ立って一条川に行くことになった。
「なにか思い出しますか?神田先輩」
「うーん。うっすらとした記憶だからなあ」
僕と神田先輩は川を眺めながらぼーっと立っていた。牛久先輩はというとちょこまか動いてところどころを観察している。しばらくそうしていると牛久先輩が戻ってきて言った。
「特に手がかりはないですねえ夢の中で探さないとダメなんでしょうか。神田さん、他に思い出すことはありませんか?」
「うーん」
神田先輩はまたうんうん唸っている。僕は手持ち無沙汰になって石を拾って川に投げた。ぽちゃん。跳ねることなく水中に落ちていった。もう一つ投げる。ぽちゃん。石の落ちたところから水紋が広がっていく。
「アイス」
ぽつりと聞こえた。
「アイスを食べてたんだ。近くの……なんとか商店で買った」
「近くの商店といえば五十嵐商店ですね!いってみましょう!」
牛久先輩はなんだか楽しそうだ。
「おばちゃーん、アイスくださーい」
「はーい。二つで三百円ね」
「ありがとうございます」
着くなり牛久先輩はアイスを買っていた。自分が食べたかっただけじゃないのかと思ったけど奢ってもらったので何も言わなかった。
「神田さんはなにをよく食べていたんですか?」
ソーダ味のアイスを齧りながら牛久先輩が尋ねる。
「あずきバー」
「渋いですねえ」
なんとなく意外な答えで笑ってしまった。ただただ楽しいやり取りなのに、僕の心中はなんだかもやもやとしていた。その気持ちにもっと向き合っていればよかった。
「今日の調査はこれにて終了ですね」
牛久先輩がいう。
「わたしの方でも対処法は調べておきます坂本くんも夢の方で進展があったら言うように!」
そう言うわけでその日は解散した。
「頭を探してください」
またこの夢だ。
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