第四話 昼食の時間ー前編ー
朝色々あったせいか、ろくに授業に集中できていなかったくせにどっと疲れている。
「お疲れのご様子ですねぇ」
誰のせいだと思ってるんだ……。
朝色々あったのに加え、お昼に約束をしているという事実が謎の緊張感を生んだのが主な原因だろう。
「で、どこで食べるんです?」
まさか教室だとは言わないだろう。
さすがに他の男子からの視線がきつすぎる。
そもそも美少女とモブAが一緒にお昼食べること自体あっちゃいけない事な気がするし……。
「え? 教室以外あります?」
あたかも自分は普通のことを言ってます、と言わんばかりの顔と口調で言ってくる。
「さすがに色々きついので中庭とか行きません?」
「えー、めんどくさい……。てかきついって何がですか?」
まじで言ってるのか。めんどくさいのはまぁ分かるからいいとして、自分と俺が釣り合っていないこと気付いていないのか……?
他の男子からの視線も。
「色々です。まぁとにかくどこか行きません?」
「んー、あ、じゃあ」
行こう、とジェスチャーをされ、席を立つ。
うしろからひしひしと伝わる痛い視線に気づかないふりをして、二人で教室を出る。
◇◇◇
「ここです」
そう案内されたのは、第二音楽室だった。
校舎の隅の隅にあり、人を寄せ付けないような近寄りがたい雰囲気を出している。
音楽の先生と仲が良いらしく、あっさり鍵を貸してもらっていたのには少し驚いた。
どんだけ人脈広いん……。
「こんなところがあったんですね。初めて知りま……けほっ」
「ちょっとほこりっぽかったかな、ごめんなさい。ハウスダストアレルギーだったりします?」
「いえ、大丈夫です」
正直ほこりっぽいのは苦手だけれどアレルギーではないし、それより女子と密室にいるなんて状況の方が……。
「次また来たとき一緒に掃除しない?」
「え?」
「あ、ごめんめんどくさいよね。やっぱなし」
いやそこじゃないんですけど。
次もまた一緒にご飯食べたいってことなのかな。それともどこかの時間に一緒に掃除してって話?
どっちもいいな。
「いや、全然いいですよ。やりましょう」
「え!!ほんとですか!?」
花が咲いたような笑顔はとても眩しくて、まだ電気を付けていないこの薄暗い部屋も、明るく色づいて見えるようだった。
本当に笑顔が素敵な人だな。
でも掃除かぁ、ほこりっぽいのが苦手な俺にとっては苦痛な作業だし、そもそも掃除道具はどこに……?
「ちなみに掃除道具はこちらに。掃除場所に指定されてないので、新品状態ですねぇ」
疑問を見透かしたかのように掃除道具の場所を教えてくれた。
「分かりました。ありがとうございます。とりあえずお昼食べ始めちゃいましょう」
「はい」
俺の言葉に返答しながら、電気を付けてくれた。華奢で細い腕は少し力を入れたら折れてしまいそうで、妙に怖い。
ガラガラガラッ
「「え?」」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます