第四話 昼食の時間ー後編ー
紛れもなく、ドアが開いた音だった。
「あれ、何してんの?」
ブレザーに着いた紋章の色が緑だから、三年生なのが分かった。
でもなんでこんなとこに……。てかこっちのセリフだし。
「昼食をとりに来ました。先生に許可は頂いています。」
「ふーん、ここが電気ついてるなんて初めて見たからびっくりして見に来ちゃったわ。てか一年生の
「そうですけど……」
「やっぱそうだと思った! めっちゃかわいーって噂されてるよ。良かったらさ、近くで食ってるから来ない?」
チャラい……。苦手なタイプの人種だ。
これ着いて行っちゃったりするかな。俺なんかよりイケメンでコミュ力高い先輩とお昼食べれた方がいいもんなぁ。
「お誘いいただいたのに申し訳ないですがあいにく今日は先客が居ますので」
「えー、一緒に来ればいいじゃん」
誘いを断ってくれた嬉しさと先輩の鬱陶しさで気持ちが複雑だ。
「お引き取り願います」
そう言いながら、先輩を押し出してドアを閉めていた。
なのに。
「じゃあ明日! 明日一緒に食べよ!」
廊下からそんな声が聞こえてきた。
「はぁ、まったく……」
心底鬱陶しいと言わんばかりの表情で、ため息をついた。
なぜだかそれが嬉しかった。
「嵐のようでしたね」
沈黙を裂くようにして話しかけてみる。
「そうですね。あの、ずっと言いたいことがあったんですけど……」
俺は息を呑んだ。何を話されるのだろうか……。
「敬語辞めませんか?同じ学年ですし、同じクラスですし、隣の席ですし……?」
「へっ?」
朝一緒に登校しようと思った理由を話されると思ったら、全く予想してなかった方向の話が来た。おかげで間抜けな声が出てしまった……。
てか隣の席は別にそんな関係ないだろ。自分でも不思議がってるじゃんか。
「全然いいですよ」
とかさらっといいながら内心バックバクだ。敬語をやめることで一気に距離が縮まった気がして、すごく緊張する。
緊張からご飯を食べる手が思いの外早く進んでしまい、早くに食べ終わってしまった。
「やったぁ! 敬語苦手だったから助かる~」
本当に笑顔が可愛すぎる。眼鏡美女というクールそうな見た目からは想像がつかないほど可憐で明るい笑顔に思わず見惚れてしまう。
ていうか例の話はいつになったらしてくれるんだ。
「えっと、理由の話は……?」
「え? あ、朝一緒に行った話ね! えっと、どこから話そうかなぁ。えっと……」
キーンコーンカーンコーン
話を遮るようにして昼休憩の終了を告げるチャイムが部屋に鳴り響く。
「ふぅ……」
安堵のため息が聞こえた気がしたが。
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