第三話 夢のような朝ー中編ー

気まずい。ただひたすら気まずい。

沈黙とはこんなにも辛いのか……。


「あの」


「は、はいっ」


急に話しかけられて動揺し、思わず声が裏返ってしまった。

情けなさ過ぎて恥ずかしい。


「どうして急に、とか思ってます?」


「え、あぁ、まぁ、はい、近しい感じのことは……」


「実は家この辺じゃないんです」


「まぁだろうな」


あ、普通につっこみ入れちゃった。変に思われてたりしないかな、誰目線だよとか思われてないかな……。


「ふふっ」


笑うんだ……。

細く柔らかそうな髪が風に靡き、笑顔の美しさを加速させている。

手で口元を隠す仕草はとても上品で、思わず見惚みとれてしまった。


「あ、ごめんね」


恥ずかしそうに顔を少し背ける。

その仕草もとても可愛らしかった。


「大丈夫です」


それしか言うことは出来なかった。これ以上何かを話そうとすると、またぼろが出てしまいそうで。


「どうして家の場所が分かったのかってお話と、どうして一緒に登校しようと思ったのか、どっちから聞きたい?」


なんだその究極の選択。まぁ普通に順番的には……


「どうして家の場所分かったか聞きたいです」


「むかしむかしあるところに……」


なんだその入り……。

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