第18話 弱点の意味
悠は話を続ける。
「えっと、それから最後に
悠のその言葉に、耐えきれない
まだまだ悠は、鴻巣の死を受け入れられてはいない。
だが、
「その場所なら、私も牙を突き立てて1頭倒したよ」
悠の嗚咽が止まった。驚きが、悲しみに勝ったのだ。
瑠奈の人の死を看取った数の桁は、悠とは3つも違う。こういう場合の、なぐさめよりも有効な方法がわかっていた。
「なんでそこが弱点だとわかったんですか?」
それでも割れた声での悠の質問に、瑠奈はさも当然といった口調で答える。
「動物の身体は、柔軟に動かなきゃならない。だから、どれほど固い生き物でも、いや、固い生き物だからこそ身体を動かすための継ぎ目がある。大抵はうろこ状だけど、そうでなきゃダンゴムシやエビみたいな感じね。
なのに、蒼貂熊の首の装甲は一枚板みたいだった。となれば、装甲の周りはより柔軟にできていなきゃ動かなくなっちゃうでしょ?」
「……なるほど」
悠は、そう口の中でつぶやく。
言われてみれば当然のことで、悠自身も考えないではなかった答えだ。
ただ、あの蒼貂熊との戦いの中では思いつけなかった。圧倒的フィジカルを前に、そんな弱点があるかもという想定すらできなかったのだ。
瑠奈と鴻巣は、戦いの中でも冷静に観察と考察ができていたということになる。悠はそこに、忸怩たる思いを抱いた。
「具体的には、どうやって戦ったんですか?」
「上から抑え込まれそうになったから、真下から飛び抜けて、道路の擁壁を使っての三角飛びよ」
「……跳躍で蒼貂熊を上から襲うって、人間には到底できない攻撃ですね」
「ええ、途中で諦めたわ」
瑠奈の説明に、鴻巣が生命を失ったのはやはり仕方がなかったのだと思わされた。鴻巣が変身できたなら、などという仮定は考えるだけ無駄だ。
「なんでそこが弱点なんでしょうか?」
悠は再び聞く。
実は簡単なことだ。脊椎があるからに他ならない。ただ、蒼貂熊の腕はヘビのような触手だし、骨格は地球上のいかなる生物にも似ていない。だから、正確には脊椎と言っていいのかすらわからない。だが、そのような器官が、なぜ皮膚直下に存在するのか、という問題は変わらない。
「そりゃあ、人造生物だとしたら、そういう風に作られたから、って答えでしょうけど、進化論ででも説明はできるでしょ。蒼貂熊より大きな生物がいないから、頭上からの攻撃をされたことがないので淘汰圧がかからなかった、とかね。
それに人間だって、首周りとか、関節の内側とか、構造的な弱点はたくさんあるし、だからって、首筋の頸動脈が内側に入るようにはならなかったよね」
瑠奈の答えに、悠はすぐに問い返した。
「それはわかります。
ですが、逆に、人造生物だとしたらなんでそんなふうに作ったんでしょうか?
そこになにか意味があるんじゃないでしょうか?
それを僕は聞きたいんです」
その言葉に、この場の誰もが考え込んだ。
あとがき
第19話 魔素と生気(プネウマ)
に続きます。
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