第30話 パーティーといえば......



「第1回!餃子パーティー!ぱちぱち〜!」


 そんな早乙女さんの宣言で開始された餃子パーティ。......いや何それ。

 土曜日の夕方に呼ばれて東雲家にお邪魔してみれば東雲さんと早乙女さんがいて、テーブルの上には餃子の皮と大きなボウルが3つ並んでいた。


「餃子パーティですか。いきなりですね」


 苦笑するしかない。それに、第1回ということは2回目とかもあるのだろうか。


「ホントはさ〜、タコパが良かったんだけどたこ焼き器なんて持ってないからさ〜。餃子ならホットプレートで焼きながら食べれるじゃん?」

「友梨と食材は買ってきたからあとは包んで焼くだけなの」

「さ、誰が早く綺麗に包めるか勝負だよ〜!あたしこのエビ担当ね!」


 言うが早いか、エビの入ったボウルを抱える早乙女さん。たしかにエビなら簡単に包めそうだしな。


「じゃあ、私こっちのやるから西成さんはこのツナマヨお願いしていい?」

「了解」


 東雲さんのはおそらく普通の餃子のタネだろう。挽き肉や白菜のようなものも入っているのが確認できる。

 しかし餃子にツナマヨか。餃子を手作りするのも初めてだがこういった変わりダネも初めてだ。

 市販のものは大体が生姜とかカレーとか味が変わるだけで具材自体はそこまで変わりないものがほとんどだしな。


 やり方が分からないので隣の東雲さんが作るところを見させてもらう。

 スプーンで皮の上にタネを乗せて器用に包んでしまう。うん、分かってはいたけど器用だしすごいな。

 真似して包んでみるが具が多すぎて上手く包めなかった。欲張りすぎたか。量を減らしてリトライするも上手くいかない。


「端をつまんで、もう片方の手で折りたたんでいくんだよ」


 俺の失敗を見ていた東雲さんが今度はゆっくりと作りながら解説してくれる。なるほど。

 いくつか作っていると慣れてきて形も良くなっていく。


「出来たー!」


 そしてそれぞれの餃子が作り終わった。食べるだけじゃなくて、作ってみるのもなかなか楽しいな。

 というか東雲さんは言わずもがなだけど、デコレーションされた爪で普通に作ってるあたり早乙女さんも器用なのかな。


 さすがに一気に焼くと冷めてしまうので、まずは各味を3分の1ずつホットプレートに並べて焼いていく。

 焼く係は早乙女さんに任せて、俺と東雲さんはご飯や付け合せなどを運ぶ。

 数分もすればいい匂いが漂い、タイマーが鳴るや否や早乙女さんが蓋を開ける。




「「「いただきます」」」



 まずは1番手前にあるツナマヨだ。

 え、うま。ツナマヨというとおにぎりに入ってるイメージしかないから、温めたら美味しくないんじゃ?と疑っていたがとんでもない。

 これはついつい箸が進んでしまうな。


「西成さ〜ん、ほらほらあたしが作ったエビも食べてみてよ〜」


 早乙女さんが俺の取り皿に乗せてくる。いや、当然食べるつもりだけど順番にね?

 1口食べてみると……、


「……これはエビとチーズ?」

「そ!いい組み合わせっしょ!」

「へぇ、美味しいですね」


 プリっとしたエビとトロリとしたチーズが合わさって面白い。


「……西成さん、私も食べて?」


 顔をあげれば東雲さんが箸で餃子を摘んだまま俺に差し出していた。

 うん、日本語はちゃんと使おうね?『私のも』もしくは『私の餃子も』だよね。

 いや、違う意味に聞こえてしまうのは心が汚れている証拠だ。女神様よ、我が心を清めたまへ......。


 とりあえず受け取ろうとお皿を持つけど東雲さんは置こうとしない。……ん?


「落ちちゃうから早く食べて?」


 視界の端では早乙女さんがすっごいニヤニヤしてる。

 ......そういうことか。仕方ない、と覚悟を決めてそのまま口に入れる。


「……どう?」

「…………すごく、美味しい。大葉が入ってると食べやすいね」


 待ちきれないとばかりに聞いてくるので懸命に咀嚼して飲み込んでから答える。

 正直、味はあまり分からなかった。


「ふふ、良かった」


 顔を赤らめている東雲さん。恥ずかしいならあまりやらないでいただきたい。俺の顔も確実に赤くなっているだろう。

 唯一、早乙女さんだけは呆れたような顔をしていた。


「あ〜、なんだかおなかいっぱいだな〜。胸焼けしそうだわ」

「え、まだ全然食べてないのに困るよ!西成さんと二人じゃ食べきれないし……」

「はぁ、ブラックコーヒー買って来といて良かったわ」


 餃子にコーヒーって合うのだろうか。




 焼いては食べ焼いては食べを繰り返す。

 タネは定番の肉餃子、エビ、ツナマヨの3種類だが、大葉やチーズを入れるだけでまた違った食感や味わいになって面白い。

 更には焼く際に餃子の周りにチーズを置いておけば、チーズの羽根を生やした餃子が出来上がる。パリッパリッで美味しかった。

 こういった飽きないアレンジを思いつくのも東雲さんのすごいところである。




 いつもは料理が出来上がってからお邪魔してたけど、教えてもらいながら一緒に料理をするというのもいいかもしれない。

 今度、東雲さんの許可が下りたら早めにお邪魔して見学してみようかな。


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