第11話



 サー・フェイス。


 彼は、この勇者パーティーのただ一人の犠牲者だ──。



 ╋╋╋╋╋



「最初の四天王討伐おめでとうー!」


 ボーが高らかに声を上げる。


「あはは。ありがとう、ボー。」


 ここは四天王の城。

 王都から最も近かったから来たが、なかなかに大変な戦いだった。


 自分の、力不足をひしひしと感じた。

 今後の、糧になる。


「じゃあ、今日はここで一泊してから冒険を再開します。各自自由に今日は遊べ!」


 ヤミも珍しく浮かれていた。

 フェイスは顔をくしゃくしゃにして、大きく笑った。


「まだまだ旅は続くけど、いい戦いだった!」


「ちょっと、また早いよ。サー。」


 ボーがフェイスにツッコミを入れる。この旅はまだまだ始まったばかりだ。


 魔王を倒すためにこれからも頑張らなくてはならない。


 束の間の休息は、夜遅くまで続いた。



 ╋╋╋╋╋



 朝。


 壁の崩れる音で飛び起きる。


「うぅ。何だこれは…?」


 一晩経っただけで、拠点にした場所は溶けていた。


 地面にヒビが入り、表面が風化していた。

 これは…?


 遠くから、悲鳴が聞こえる。


「うぅ… あぁ…」


「ヤミ!」


 気がつくと、他のテントで寝ていたメンバーは全員散らばっていた。


 目先にいたヤミを助ける。


 みんなはどこに行った。

 早く助けて、この城から抜け出さないと。





 ───この城の崩壊で、唯一フェイスは行方不明にだった。


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