第10話


 ここは、魔王城。

 魔王が中央の椅子に座っている。


 その前に、俺はゆっくりと運ばれた。

 顔を上げる。


「久々だな、勇者。」


 魔王は、ゆっくりと言葉を発する。


「ああ… その通りだな。魔王。」


 見知った顔の少女が、そこには立っていた。


「こんなところにいたのか。ボー。」


「あはは。そんなに早く見破られたら困るよ?」


 なんて言って、笑っている。

 垣間見える日常。もう、戻ることのない平穏だ。


 本来は。

 そう、本来ならば。


「勇者は魔王相手に即死して、世界が魔王に支配される」


 それが、この世界の運命だった。


 これを変えたのは、ボーだ。

 彼女は未来を見た。その上であの時。命をかけて魔法を行使する。魔王の魂と自身の魂を入れ替え、自らの全てをリセットした。


 自分自身の全てを捨てて相手を殺す魔法。リベンジ。かつて、復讐のために開発された魔法だ。


 そのように、魔王は説明した。


「じゃあ、どうすればいいと?」


 この旅の終わりは無くなった。


「はは。本当にバカだなぁ。」


 魔王は、小さく嘲笑った。


「私を殺せばいいんだよ?」




 勇者は、戦慄した───。


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