第9話


「シー。見張りの交代だ。」


「ううっ・・・ あ、ヤミか。交代だな?わかった。」


 あの夢は、きっと夢だ。

 なんてことない。大丈夫。


「じゃあ。俺は休むから。」


「分かった。」


 見張りを・・・ しないと・・・


 うっ。


「ふう。やっとか。」


 これは、ヤミの声か?


「まさか、ここまで毒が効きにくいとは思わなかったよ。シー。」


「はっはっはっ! まさか勇者も内部から裏切られているとは思うまい!」


 なんだと・・・?


「おまえにはうんざりしてたんだよ。シー。いい加減くたばれって思ってたさ。」


 ヤミ・・・?


「じゃあな、シー。このまま死にやがれ。」


 そこまで聞いて、俺は力尽きた。



 ╋╋╋╋╋



 ガラガラ。


 ・・・これは、鎖の音?


「おっ! お目覚めですかい? 勇者さんよお。」


「おまえは・・・?」


 目の前には、屈強な体を持つ歪な人型の生物がいた。猫と犬を混ぜたような見た目だ。


「初めましてですねえ! 俺ぁ魔王さまの左腕だ!」


「魔王の左腕?」


「ああ! そしてここは魔王城の地下牢。 あんたは魔王に負けたんだよ!」


 不意打ちか。くそ。


「ん? ヤミは?」


「あぁ? あいつか? おまえを裏切って魔王さまの元に面会中だよ。」


「・・・そうか。」


 そういえば、そうだったか。


「じゃあ、おまえを今から魔王の元に連れて行く。」


「・・・ああ、わかった。」


 こんな時のために、秘策は用意してきた。

 大丈夫だ。まだ、希望はある。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る