別世界の使徒編

第41話新たなる転生者

僕の名はコクウ。この世界【ツェアシュテールング】に転生して約九年目になる中堅の融合型転生者で、今はとある山奥でホブゴブリンの群れに遭遇してしまい、息を殺して草むらの中に隠れている所だ。


どうしてこんな状況になったのかと言えば話は少し長くなる。僕はこの世界の人間の男の子に転生して今年で十七歳になる。


前世の世界【デストリュクシオン】では不慮の事故によって死んでしまったんだけど、前世の世界の管理者と名乗る、創造者様なる存在によって前世の記憶を引き継いだまま、この異世界に転生させられたんだ。


再び生を得れる替わりにこの世界の厄災、【破壊神】とやらを見つけ出し討伐するという使命を与えられた。

創造者様はなんともお優しく、破壊神を倒せるようにと自身の力を分け与える祝福、【寵愛】を与えてくれると、そこから、僕、固有の能力が目覚めたんだ。


それは性能強化らしく、似たような系列で言えば付与魔術なんかがそれに該当するが、この世界に存在する既存の付与魔術なんて比べ物にならないくらい、この能力は高性能で規格外。


僕の魔力は創造者様から頂いた能力によって強化素材なるモノに物質化できるんだけど、その見た目が手のひらに収まるくらいの大きさの黄色くまん丸の団子みたいな光の玉。


それはまるで僕の前世の世界の食べ物、モチモチとした食感が特徴のきび団子と言う食糧に似ているのでスキル名は【きび団子】と命名したんだけど、それは日に最大20個まで作成することが出来るんだ。


ちなみに作成したきび団子は出したり収納したりは自由自在で、それを武器、防具、要は物質にならなんにでも付与することが可能だ。


しかも、一度作成してしまえばどんなに使用しても消耗することがない。

すなわち、作れば作るだけストックが増えていく。


そんなきび団子を例えば剣に与えたとしよう。するときび団子を与えた分だけ切れ味が強化される仕組みのようだ。

ちなみに武器の耐久率などは上がらない。


どんな物でもきび団子を100個程付与すれば性能は激的に上昇する。例えばなまくら刀が名刀の切れ味になるくらい。ちなみにそこから1000個程付与で妖刀クラス。次に5000個程で魔剣クラスみたいな感じかな?


まぁ、この力があれば破壊神なんて余裕かとも思ったんだけど前世は平和な世界だったし、なにより僕自身、今世でも運動神経はあまり良くないし、戦闘経験もないので、

凄腕冒険者のパーティーでも見つけて、その人達にきび団子を付与する替わりに破壊神を撃破して貰おうと考えたって訳さ。


僕って頭がいいだろう?


今後のプランも決まったし、手始めに冒険者事情をよくよく調べてみたら、


この世界ではCクラス冒険者が実質最大戦力の冒険者らしく、BクラスやAクラス、ましてやSクラスの冒険者なんて滅多にお目に掛かることなど出来ないらしい。


なので、先ずはCクラス冒険者の皆さんに片っ端から声を掛けてみたのだが全く相手にされず、しょうがなくDクラス冒険者の皆さんにも声を掛けてみたところ、


チーム『黒狼の牙』の皆さんだけが僕の話に興味を持ってくれて、心よくパーティに向い入れてくれたんだ。


因みに黒狼の構成は男3女2の五人組パーティで僕はサポーター、即ち荷物持ち兼雑用係として加わり計六人組のパーティーとなった訳だ。


そして、彼等と共に破壊神を倒す為、彼等の武器や防具にありったけのきび団子を毎日付与しながら世界中を駆け巡り、旅の資金稼ぎの為、その土地どちのギルドで依頼をこなしながら旅を続けていた。


そして、そんな日々を続けていたら、いつの間にか『黒狼の牙』の名は、今や最も勢いのある冒険者パーティーの一角として名が上がる程の存在となっていんだ。


本来なら、それはとても喜ばしい出来事なんだろうけど…僕は逆に皆んなの名が売れていく度に焦りを感じていた。


なにせ本来の目的である破壊神を探して全国を駆け巡ったはいいが、破壊神どころかそれに関連するであろう情報すら見当たらないからだ。


それでいて、今ではAクラスの冒険者認定までされた『黒狼の牙』の皆さんは、いつしか傲慢となり態度もデカく調子に乗り始め…


それもそのはず、Aクラス冒険者パーティなんてこの世界に数えられる程しか存在しない。


どこへ行けども周辺の冒険者達には羨望の眼差しを向けられ、民衆からはチヤホヤされ、

あろうことか寄る国々で彼等を召し抱えようと王族や貴族の遣い達から高待遇での勧誘話もひきて数多。なのに…


僕との契約もあり、その全てを断ざるを得なく…


そんな日々が続けば、誰しもが自身を特別な存在だと勘違いしてしまうことだろう…

それは彼等とて例外ではない。

いや、むしろ、その兆候はかなり早い段階から表れていた。


そして、当然のことながら、そんな彼等にとって今や最も邪魔な存在。それは…僕。


なにせ破壊神を探し、世界中を旅しながらなんの情報も得られなかったのだから、当然ながらその存在も作り話ではないかと疑われ始め、荷物持ち、雑用のみで戦闘も出来ない僕は、日に日に彼等の反感を買う羽目になっていく。


僕は内心焦っていた。確かに皆んなを無駄に連れ回し、国々をいたずらに歩きまわっているだけ…


高待遇で国や貴族に召し抱えられたい彼等にとって、僕は最早、消えるべき存在でしかない。


だからか、とうとう来るべき日は来るべくしてやって来た。


「コクウ、お前は黒狼の牙にはもういらない。追放だ‼︎」


このパーティーのリーダーでもある男にそう言われると他の連中達も連なるようにして、僕のことを役に立たないだの、守らなきゃいけなくて戦闘の邪魔だの、お前がいなくても俺達はもう十分強くなっただの、荷物持ちのお前が一番のお荷物だ。

などと散々なことを言われた。


こんなコトを言ってはなんなんだが、「僕の能力のお陰で強くなれただけで君達の素の実力は何一つ変わっていない。」っと正論を諭したのだが、


彼等は話を聞かないどころか、よりにもよって僕に暴力を振い袋叩きにした後、パンツ以外の全ての物を奪い去り、僕は魔物蔓延る山奥に一人置き去りにされ…


そのままパーティーを追放されてしまった。

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