第40話地球の創造者

地球の創造者はワンルーム程の小さく四角い部屋の中にいた。

その部屋は全方面の壁がまるで宇宙のようであり、それでいて中央には地球のような球体が宙に浮かんでいる。


この部屋の名称は真理の部屋であり、白面世界がチルドレン達との謁見の間だとすれば、

真理の部屋とは創造者達の本来の居場所であり、彼等の世界そのものである。


その場にて地球の創造者はエリーの様子を見守っていた。


まだまだ未熟ではあるがメルロやソシエに出会い、人間的にも能力の扱い方もそれなりに成長し、


目に見えた成果に概ね満足していた。


「うん。うん。なかなか順調だね。渚。

大切な者達との出会いと別れは人を大きく成長させてくれる。

メルロとソシエ。二人は本当にいい働きをしてくれたね。わざわざ苦労して出会わせた甲斐があったよ。


渚の能力の把握から始まり、勉学やこの世界の常識、歌の訓練まで…

特に師であり、渚の中で彼女は祖母という人物像に当てはまり、まるで本当の家族のように慕っていた人物との死別は、

彼女の魂をそれはまた格段に美しく磨いてくれることだろう。

まさに身をもってして命の尊さまでを教育してくれるなんて、メルロは師の鏡と言っても過言じゃないね。


僕のチルドレンにここまで色々と教えを施ししてくれて、本当に彼女には感謝の気持ちしかないよ。グスッ。」


創造者は涙ぐむ素振りをするとその場に立っていることをやめ、何もない空間に座ろうと腰を下ろした瞬間、

彼の動作に合わせるように、突如、玉座らしきモノが現れ、彼はその上へと座る。


そして、下瞼に溜まった涙を拭うとなにかを閃いたかのように独り言を続けた。


「その点を踏まえたら、渚にとって姉のような存在でもあるソシエにも…


死んでもらった方が良かったのかな?」


創造者は自身の軽はずみな発言を考え直すように頭を左右に振り、


「いやいや…それは…ないない。

そもそもどーゆう感動あるシチュエーションで死んでもらうのさ?

それに相次ぐ親しい人物の死と言うのも短期間に重なりすぎると悲しみも半減しちゃうからね…

余りそうゆうのに馴れさせるのも良くないかな。


まぁ、それに今の渚にはそんなに多くの親しみある人物の死には耐えられないかもしれないし。

功を急いで壊れられたら困るし、これで良かったのかな?

まぁ、ソシエはこの世界では貴重な奇跡を扱える人物でもあるようだし、なによりまだ若い。

まだ駒として生かしておいた方が絶対にいいよね!」


そう言い終え、彼が微笑むと歯並びの良い白い歯が煌びやかに輝いた。


「いいかい、渚。その固有能力はキミの心の成長と共に成長する。

即ち、キミの魂が磨かれる程、ジャパニーズアイドルの力も上がる訳だから、キミにはそのきっかけとなる試練を沢山与えないとね。」


彼はコレからのプランを考えながら、その光り輝く表情は何処か満足気だ。

なにせ物事は万事順調に進んでいる。


「大丈夫。大丈夫。だからといってそんなに酷いことはしないよ。キミに壊れられたら困っちゃうし、なにせ僕とキミは運命共同体。だから大切に扱わないとね。


そして、ゆくゆくはこの世界の悲しみにでも触れてもらえればいいのかな。」


彼には目的がある。


それは他にも数多く存在する創造者達と同じであり、その目的はこの世界、ツェアシュテールングに存在するであろうとある怪物の消滅にある。


彼も他の世界の創造者達と同じく、この世界に駒となる使徒を送り込む為、自身のチルドレン達を物色し、時間をかけ検討し、最終選考の結果…


彼が地球の代表者として選び抜いたのは当時まだ13歳だったアイドル志望の一人の女の子、扶翼渚だった。


ただ彼には他の世界の創造者達と唯一違った点がある。

他の世界の創造者達は既になにかしらの事情で亡くなった自身のチルドレン達から、


もしくは、生きているチルドレンを転移させることでツェアシュテールングに送り込んでいたのだが、彼はそれらの方法とは違った。


まだ存命していた渚をわざわざ殺め、それによって転移ではなく、亡くなったことにより転生することを可能とさせ、この世界に送り込んだのである。


この世界には転移させるよりも転生させることに多大なメリットがある。

彼はその為にわざわざ自身のチルドレンを殺し、子殺しの親になることを選んだのだ。


彼は目的の為なら手段を選ばない。


「まだあの怪物にぶつけるには時期早々。

今はまだ平穏な日々を過ごしながら、大切な人達と交流し親睦を深め、心安ぐ日々を堪能しておくれ。

そして、まだ未発達な自身の能力と向き合いながら共に成長するといいよ。

なにせキミの力がなければ、あの怪物は誰にも倒せないからね。

それが例え勇者であっても…ね。」


彼に選ばれたてしまった彼女が幸か不幸かは物語が進んでみないことにはわからない。


「その時が来たら、また僕がキミを導きに行くからね、待っててね。渚。


くれぐれも風邪とかひかないよう体調には気をつけるんだよ。」


第一部完。








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