第33話発見
ソフィは自身の両手両足が縛られた状態なのに私を心配してくれた。
「エリー大丈夫ですか!奴等に乱暴なことはされてないですか‼︎」
「うん。心配してくれてありがとう!
誘拐犯達は撃退したからもう大丈夫だよ。」
「えっ?撃退したんですか?」
私はソフィにコトの成り行きを手短に話しながら彼女を拘束する縄を切り、
ダンが助けに来てくれたコト、騙されて背後から斬られて死にかけていることを伝えると彼女はダンのもとまで近づき、
「危険な状態ですね。今すぐ治療します。」
そう言うとソフィはダンに両手を近づけ奇跡を与える。
「恵みの源なる光の女神ディアの名において、全て造りし主の慈愛により、かの者に再び立ち上がり、宿命を成し遂げる好機を与えん。『ヒーリング』」
ダンの体が眩いくらいの光に包まれると、背中の傷だけではなく頭部にできていた擦り傷など体中の傷が見る見るうちに治癒されていく。
「うっ…んッ。」
ヒーリングによって傷口が塞がると意識も取り戻したのか、
「…あれ?エリー…」
ダンはソフィと共に目の前にいた私の名を呼び、私もダンの安否を確認できて安堵し、
救えたんだと思ったら嬉しさの余り、私は彼を抱きしめていた。
「えっ!えっ⁉︎エリー‼︎だ!だ!だ!だめ…だよ…
こっ…こうゆうコトは…ちゃんと…おっ…ぉッ…ぉっきぁぃ…してか…ら……」
直後、なぜかダンの体が硬直すると彼の声は段々と小さくなり上手く聞き取れない。
私は嫌な予感がして密着していた体を離し、
彼の着けている仮面を恐る恐る取るとまたしても彼は意識を失っている。
なぜ…?目に見えていた傷は全て癒えたはずなのに…
もしかしたら刀に猛毒が塗られてたのかも…別の可能性としては血を流しすぎて出血多量で昏睡状態に入ったのかもしれない…
傷口は治療できても、失った血は取り戻せないのかも…
そんな…助けれたと思ったのに…救えなかったの…?
そう思うと悔しくて悲しくて、私は居ても立っても居られず、ダンの肩を揺さぶっていた。
「ダン、…ダン…嘘…なんでよ…?
奇跡で治してもらったばっかりなのに…
ねぇ、起きて…私、嫌だよ、こんな所で死なないで…
ソフィ…ダンの様子がおかしいの…お願い…
もう一度、奇跡を…」
「エリーのそうやって誰にでも抱きつく所、私は良くないと思います。」
ソフィは口を膨らませそっぽを向いていた。
すると森の奥くから無数の松明の灯りらしきモノがコチラに向かって来るのが見え、
その中でも一つの灯りが勢いよくコチラに向かって来ると、
「エリー!エリー!!」
私の名を呼ぶ声が聞こえて来た瞬間、私は立ち上がり、無意識にその呼び声のする方向へと向かって走っていた。
「ママ‼︎」
「エリー!」
叫び声の主でもある母、エセルに抱きつくと彼女も私を抱きしめてくれて、
その最中、傷はないかと全身を確かめてくれて、怖い思いはしなかったかと心配もしてくれて、これ程安堵した気持ちはない。
エセルの話によるとどうやら森を捜索中、私の先程の悲鳴が聞こえたようで捜索隊の皆んなで声の聞こえた方向に慌てて向かって来てくれたらしい。
すると、少し遅れて先生とソシエが私達のもとに来てくれて、
「エリー、ソフィア。随分と心配しましたよ。二人とも無事でよかった。」
そして、ソフィがみんなに今回の件を謝罪するとソシエが、
「いいえ…あなただけの責任じゃありませんよ。私達にも貴方達から目を離してしまった責任があります。
だから次からはお互い気をつけましょう。」
そして、皆んなに今回起こった事件の真相を話した。誘拐犯に攫われかけたこと、
そこにダンが駆けつけてくれて誘拐犯達を撃退してくれたと少し事実を変えて伝え、
彼が倒した誘拐犯の一人がまだ気絶したままだったので、そのまま捜索隊の皆んなによって拘束し、
残りの連中は森の更に奥深くに逃げたことを伝えた。
するとこの件に関しては、このまま皆んなで追跡して二度とこんなことが起こらないように誘拐犯達を捕まえるとのこと。
そして、あと一人。
今回の事件の元凶リスティヒのことを先生達に話すと、彼女はまだ私達が救出されたことを知らぬであろうから、
後日捕まえることとし、逃げられないようにと今から教会や村の皆んなで監視するらしい。
そして、私達が救出されたと言うことはまだリスティヒには内密にと、この場に居る全員にかんこう令が敷かれる。
これからの行動が決められると、先ずは残りの残党を捕まえる為に彼等が逃げていった方角へ追跡を開始しようとした時、
進もうとした先から一つの大柄な人影がコチラに向かって歩いて来ると、この場にいる皆が警戒をあらわにした。
そして、その人影は皆んなの持つ松明の灯りの中に平然と入って来ると上半身裸の全身が筋肉の塊。
ブロック・ストロングが皆んなの前に現れ、
「おや?皆さん、こんな所に総出でどうかなされましたか?」
彼は大型の愛剣、バスターソードを肩に担ぎ上げながら左手には…
「きゃあ!」
私が小さな悲鳴をあげるとエセルはソレが見えないようにと庇うように抱きしめてくれた。
すると、ブロックは私を怖がらせてしまったことに気付き、
「おぉっと!コレはわたくしとしたことが大変失礼しました。お嬢さん。」
「…失礼ですがストロング様。その首はどなたの者で?」
「これはこれは、エリザベス・メルロ様ではございませんか。まさか私などをご存知とは…
おっと、これは失礼しました。質問の答えになっておりませんな…
まず、この者達は先程、依頼の帰りがてらにたまたま遭遇いたしましてね。
この男、キドナップ・イグノーブルは過去、新人冒険者狩りをしていた元冒険者であり、300万マドカの賞金首だったので取り敢えず討伐しておきました。
他にも此奴の部下が二人ほどいましたが、そ奴等も斬り伏せましてな…
とりあえず死体は頭を潰しておいたのでアンデット化は防げることでしょう。」
「…そういうことでしたか。ひとまず、ご苦労様でした。」
「いえいえ、滅相もない。…ところで皆さん、コレは一体なんの集まりですかな?」
この日、私は初めて人の死を垣間見た。
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